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恋のライバル
小さな背中
しおりを挟むそしてギャーギャーとわめく千鶴を放置し、やっと霜だらけのドアを開ける。
―ガチャッ!
すると心臓がグラリと大きく揺れた。
葵くんが隣のドアの前で、小さくうずくまっていたからだ。
そっか‥‥そういえば家の鍵、失くしたんだっけ‥‥。
みっともないくらい動揺しながらそう思うと、私は上ずった声で葵くんの背中に声をかけた。
「ねぇ、あの‥‥さ。
さっきはホントにゴメンね?
何ていうかその‥‥あの人は‥‥え~っと‥‥。」
あー何を言い訳してるんだろ。
ていうか‥‥そんなことより。
千鶴のこと、何て説明したらいいの!?
私は今更ながらに千鶴と自分との関係が分からなくなり、小さく丸まっている葵くんの頭を見ながらそのことについて必死に考えていた。
「え~と、だからあの‥‥とりあえず、葵くんの言う通りの馬鹿なのよ!その‥‥だから、気にしないで!」
うわぁ‥‥恥ずかしい~。
玄関前で何叫んでるんだろう。
ああ、もう何もかも滅茶苦茶だ。
それもこれも全部、ぜ~んぶ!
あの変態せいだ。
にわかに顔まで血が昇る。
しかし、それは瞬く間に治まることになった。
支離滅裂な言葉で謝っている、しどろもどろな私に冷たい声が投げられたからだ。
「‥‥いいよ。」
ボソボソとこもったような声。
「え?」
「いいってば!」
「は、はぁ。」
葵くんは腕に埋めていた頭部を少しだけ浮かせると、目を反らしながら投げやりにそう言った。
「あの‥‥またそんな所にいたら、風邪引くよ?」
それに対し、私は再度余計なお節介を焼く。
「‥‥うるさいな。関係無いだろ。」
あーあ。やっと打ち解けたと思ったのに、また振り出しに戻っちゃったよ‥‥。
ほんの数10分前と似たような状況に再び戻ってしまったのだと確信すれば胃が痛くなり、フゥーッという長い溜め息を不意に漏らした。
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