68 / 399
恋のライバル
小さな背中
しおりを挟むそしてギャーギャーとわめく千鶴を放置し、やっと霜だらけのドアを開ける。
―ガチャッ!
すると心臓がグラリと大きく揺れた。
葵くんが隣のドアの前で、小さくうずくまっていたからだ。
そっか‥‥そういえば家の鍵、失くしたんだっけ‥‥。
みっともないくらい動揺しながらそう思うと、私は上ずった声で葵くんの背中に声をかけた。
「ねぇ、あの‥‥さ。
さっきはホントにゴメンね?
何ていうかその‥‥あの人は‥‥え~っと‥‥。」
あー何を言い訳してるんだろ。
ていうか‥‥そんなことより。
千鶴のこと、何て説明したらいいの!?
私は今更ながらに千鶴と自分との関係が分からなくなり、小さく丸まっている葵くんの頭を見ながらそのことについて必死に考えていた。
「え~と、だからあの‥‥とりあえず、葵くんの言う通りの馬鹿なのよ!その‥‥だから、気にしないで!」
うわぁ‥‥恥ずかしい~。
玄関前で何叫んでるんだろう。
ああ、もう何もかも滅茶苦茶だ。
それもこれも全部、ぜ~んぶ!
あの変態せいだ。
にわかに顔まで血が昇る。
しかし、それは瞬く間に治まることになった。
支離滅裂な言葉で謝っている、しどろもどろな私に冷たい声が投げられたからだ。
「‥‥いいよ。」
ボソボソとこもったような声。
「え?」
「いいってば!」
「は、はぁ。」
葵くんは腕に埋めていた頭部を少しだけ浮かせると、目を反らしながら投げやりにそう言った。
「あの‥‥またそんな所にいたら、風邪引くよ?」
それに対し、私は再度余計なお節介を焼く。
「‥‥うるさいな。関係無いだろ。」
あーあ。やっと打ち解けたと思ったのに、また振り出しに戻っちゃったよ‥‥。
ほんの数10分前と似たような状況に再び戻ってしまったのだと確信すれば胃が痛くなり、フゥーッという長い溜め息を不意に漏らした。
0
お気に入りに追加
269
あなたにおすすめの小説


ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。



ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる