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恋のライバル

窓から変態、襲来

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「な、何だろう?」


私はそう言うなり、警戒しながら窓の方を見つめた。


その瞬間、我が目を疑うことになる。

なんと‥‥ベランダから手が伸びてきたのだ。
何者かが外から2階までよじ上ってくる。


‥‥何者かって?
白昼堂々、そんなことをするのはヤツしかいまい。


「み、澪ー!!」


千鶴はスーツ姿でベランダの柵を跨りながら、我が家に侵入してきた。


―ドンドンドン!


「開けて下さい!寒いです!」


ヤツは窓ガラスを、これでもか!というくらい叩きまくり叫び散らすものだから、葵くんはすっかり怯えている。

はっきり言って、キャンプ場に出没する斧を持った殺人鬼よりも恐いね。うん。



「ねぇ、何アレ!何なの!?」


「あ~‥‥えっと、私専属の変態?」


「は?変態!?」


葵くんは猫のように毛を逆立てながら千鶴を睨み付けている。

‥‥分かるよ、その気持ち。


「澪ー!誰ですかその男はー!
僕に黙って男を家に上げるなんて!
僕の何が不満なーんーでーすーかー!?」


千鶴が泣くようにしてワーワー騒ぎ立て、窓を割らんばかりに力任せで叩き続けるものだから、私は近所迷惑を考え、ついに観念すると窓を開けてやった。


「うるさいぞ馬鹿野郎!
ベランダで叫ぶんじゃないわよ変態が!」


「澪~寒かったです~。」


雪に濡れた千鶴が抱き付いてきたので、怪訝とした顔でその腹を蹴った。


「冷たいわ。離れろ。」


「ひ、酷いですよ‥‥澪。
その男には風呂まで入れてあげて、あげく着替えまで用意してあげたじゃないですか。
恋人は放置ですか?
あえて放置プレイですか?
フ‥‥照れ屋さんというか、何というか‥‥。
全くもって可愛いですグブフッ!」


「全くもってウザイわ。」


千鶴の顔面に張り手をかますと、ヤツは滑りながらフローリングの床に倒れた。


ていうか何で、風呂に入れて着替えを用意してあげたのを知ってるのよ‥‥。
見てたのか?見てたのか!?

それと、よく葵くんが男だって一目で分かったわね‥‥。

『この変態あなどれねぇ』と言わんばかりの感心した眼差しで千鶴を見つめていると、ヤツはムクリと起き上がった。
 

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