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恋のライバル

捨て猫を拾う

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「うっせぇよ。可愛いって言うなバカ。」


うわ、顔は可愛いのに言うことマジで可愛くない‥‥。


「あ、ゴメンね。
ただ、勿体無いな~と思ったのよ。」


私は何を言い訳してるんだか。
まぁ確かに嘘はついてないけどさぁ‥‥。


その後女の子はそっぽを向いた。

よく見ると、耳も手も真っ赤だ。
体も微かに震えてるし‥‥。
もしかしてずっと外にいた?

私は心配になり、また『余計なお世話』を言う。


「あの、寒いんじゃない?誰か待ってんの?」


「‥‥別に。」


女の子は、曇り空を見つめながらぶっきらぼうに呟く。


「家、ここのマンションなの?
冷えるし、中に入ったら?」


「‥‥‥‥。」


無視かい。

私は虚しさを感じたが、それでも引かなかった。

だって背中がすごく‥‥寂しそうだ。



「‥‥寒いんじゃない?」


「‥‥‥‥。」


女の子の無視は続いたが、私は喋り続ける。

普段なら、こんなにしつこく誰かに話しかけることもないのになぁ。

まるで彼女は段ボールに入った、捨て猫のようだった。

こんなに震えているのに放っておけないよ。


「あ‥‥外にいたかったとか?」


「‥‥無いんだよ。」


「え?」


「‥‥だから、家の鍵失くしたんだよ。入るに入れないんだバカ。」


やっと喋ってくれたかと思いきやまた悪態‥‥。

ていうか鍵失くしたのか。


「ああ、そうなんだ。
え~と‥‥じゃぁ私のウチに入る?親御さんが帰って来るまでさ‥‥。」


見知らぬ子に何言ってんだろ私。
‥‥これじゃナンパだろ。

自分で自分にツッコミを入れて溜め息をついていると、女の子は頭だけをこちらに向けてきた。


「い、いいのか?」


おや。
まさかそんなことを言うとは‥‥よっぽど寒かったのね。

女の子の真っ赤な鼻の頭と、霜で白くなった毛先がその寒さを物語っていた。


「うん入りなよ。風邪引くし。」


そう言って促すと、少し複雑そうな表情をしながらも彼女は私の方へと体を向き直した。


「‥‥うん。」


目を反らしながら照れ臭そうに同意する様子が、何故だかとても可愛いらしく思えた。

 
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