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恋のライバル

阿呆を置いて逃げる

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「澪ちゃん、千鶴さん置いて来ちゃったけど‥‥いいの?」


「い、いいのいいの!先に家に帰ってろって言われてたしね。」


心配する加奈子に対し、とっさに大嘘を吐いた。
だって、千鶴が変態だって言っても誰も信じてくれないしね、フフ。

私は泣きながら笑った。


「そっかぁ。ならいいんだけど‥‥あ!私、午後からゼミの集まりあるんだった。
澪ちゃんはゼミ無いの?」


加奈子は冷たい外気に頬をピンクに染めながら言った。


「あ~ウチのゼミ、明日なんだよねぇ。だから今日は半ドン。」


「そうなんだぁ~。じゃあそろそろ時間だから行くね。また明日!」


「うん、また明日ね。転ばないでよー?」


少々焦りながら校舎へ駆け出した加奈子に注意を促した後、私は帰路に着いた。


‥‥ったく、アイツがいるとロクなことがないって思い知らされたわ。冗談は下着泥棒だけにしろってのよ!

いや、それも十分にハタ迷惑な行為だよな。
もしかして私の感覚、おかしくなってきてる!?

嗚呼もうアイツ無理‥‥。
無理無理絶対無理!
私の中から常識が消え失せてしまう前に消えてほしいわ。


私は変態千鶴に辟易しながら、雪が敷き詰められた歩道を熊のようにノッソリと大股で歩いた。
そして先ほどの千鶴の突拍子もない行動に、ひたすら腹を立てるのだった。


大体何なのよ、あのパフォーマンスは!
何でわざわざ人がたくさん集まる場所で目立つことするんだろ。目立ちたがり屋なのか?それともやっぱり天然なのか?
ホントに何なのアイツ‥‥。
とりあえず次会ったら、2度と学校に近付くなと言ってやる。

何故なら、ウチみたいな女子校に千鶴みたいな色男が現れると色々と面倒だからだ。

さっき私と加奈子がいた食堂の2階には、カフェや談話室が設置されている。

ほとんどの学生が何故か2階ばかりを利用するので、知らない女子の愚痴や世間話などが自然に耳に入るのだ。

女子校に在籍する女子達は、とにかく砂漠のように干からびている。
男というオアシスを求める生き物と化しているのだ。

それは言い過ぎだって?
いやいや、談話室で毎日聞こえてくる『彼氏欲しい』トークを耳にすれば、誰だって嫌でもそう感じるわよ。
ぶっちゃけ耳にタコだわ‥‥。

そんなハングリーな女子達の群れに千鶴みたいなキラキラしたヤツが投下されたら‥‥狼の群れに迷い込む羊よね。
まぁ、私もその寂しい女子の内の1人なんだけどさ。 
 

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