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恋のライバル
澪と僕のラララ
しおりを挟む周囲の席という席から、熱いコールと拍手が沸き起こる。
な、何この状況‥‥。
私は目を点にしながら2メートル以上の背丈の千鶴を見上げた。
「うわぁ‥‥千鶴さんカッコイイ~!」
加奈子は加奈子で楽しそうにしている。
「え~、では一曲。
ちなみに作詞作曲はこの僕です。」
‥‥おまえかよ。
私は腰を抜かしたようにしてソファに沈み込む。
「‥‥聴いて下さい。タイトルは
『澪と僕のラララ』。」
何だよそのふざけたタイトルは。
色々ツッコミを入れている間に、どこからともなく音楽スタート!
『~ああ澪 君は流れ星と共に地上へ舞い降りた 荘厳な光をまとう女神~
愛の女神ヴィーナスでさえも嫉妬する その美貌が僕を捉えて離さないよ!
離さないよ~ 離さないよ~
(コーラス)
離したくない~ 滑らかなそのブロンズ像のような手を~
~ああ澪 どうして君は澪~
僕は君の前では卑しい下僕も同然さ!』
千鶴はチラチラ私の方を見つめておぞましい歌を唄った。
そしてその歌の内容に、金属バットで後頭部を殴りつけられたような衝撃が駆け巡るのだった。
‥‥なんじゃその臭い歌詞はぁ!
千鶴は頬を紅潮させながら、自作の歌を唄い続けた。
混沌さえ感じられるその歌を聴き入った女子達は、涙を浮かべながら千鶴を熱っぽく見つめているときた。
‥‥ここは一体どこよ?
確かさっきまでは、ごく普通の学校のカフェだったわよね?
間違ってもコンサートホールじゃないわよね!?
私は真っ青になりながら強引に加奈子の腕を引っ張った。
「かか帰るわよ、加奈子。」
熱唱している千鶴に気付かれないようにコソコソ低姿勢で席を立つ。
「え~どうして?せっかく千鶴さ‥‥。」
「い、いーのよ早く行こ!お願いしますぅ!」
私は加奈子の言葉を遮ると、ガタガタ震えながら哀願した。
そして歌に夢中の千鶴から、やっとの思いで逃げ出したのだった。
もう2度とカフェには行けない。
青冷めながらそう思った。
脂汗か冷や汗か分からない液体が体中を嫌な感じに湿らせている。
あの男、次にノコノコと現れたらどうしてくれようか。
ドス黒い闘志を燃やしながら食堂から出ると、ピリピリとした冷気が頬を引きつらせた。
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