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恋のライバル
予想外の成績
しおりを挟む不安に心臓を上下させながら、先生から成績表を受け取る。
「あら、成績表開けないの?」
「あー、いいんです。後からじっくり見ようかなぁ~って。」
私は後ろ頭をポリポリ掻く仕草をしながらそう答えた。
だって、悪いことは先延ばしにしたいし‥‥。
肩を下げながら情けなくそう思った時だった。
「何言ってるの、土屋さん!
Aよ、A取ったんですよアナタ!」
「えー?」
「フフッ、自分の目で確認してごらんなさい。
よく頑張りましたね!」
畑野先生は赤い口紅で塗られた大きな口をニンマリと吊り上げ、親指を立てた。
「‥‥え?」
私は先生の言葉に頭を真っ白にさせながら、トボトボと加奈子の下まで歩く。
「どうだった?」
加奈子は消沈した私の顔を覗き込みながら尋ねてきた。
「いや、まだ‥‥。」
「見ないの?」
「え、あ、うん‥‥見るよ。」
半ば放心しながら促されるようにして、手中にある成績表を開いた。
「‥‥ウソ‥‥。」
「澪ちゃん?大丈夫?私も見てイイ?」
加奈子は大分心配そうな表情をしながら見つめてきた。
私は放心したままの状態で、それに黙って頷く。
―パラリ
「み、澪ちゃん!おめでとう!
Aだよぉ!」
加奈子は成績表からこちらに視線を移すなり、目を真ん丸にしながら私の手を握り締めて祝福した。
そして、その握られた手を見つめた時、私はようやく実感する。
「‥‥Aだ‥‥Aだよ!
やったぁー!私がAー!!」
夢にも思わなかった。
自分が他の科目でAを取ろうとも、まさか実習でA評価を取るなんて‥‥。
「やったね!頑張ったからだよぉ~澪ちゃん!」
加奈子の優しい声に、不覚にもじんわりと目頭が熱くなるのを感じた。
‥‥嬉しい。
それと同時に、加奈子の声が藤堂さんのモノにも聞こえて、まるで本人からも『おめでとう』と言われているような錯覚に陥る。
「私‥‥頑張ったんだなぁ。」
その後の講義中も、ボーッとしてたのは言うまでもない。
CでもBでもナイ。
Aだなんて‥‥!
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