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恋は1対1

私の受難は、まだ始まったばかり。

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件名‥‥‥『藤堂です。』


「ひいいぃー!」


メールを開いた瞬間、部屋中に響く私の叫び声。
いつから自分はホラー映画の主人公になったのだろうか。

ていうか、無事‥‥だったの?

そんな疑問を感じながらも、私は死に損ない千鶴からのメッセージを読み始めた。



『今日、澪の家に上がらせてもらいました。これで2度目ですね‥‥熱い時間を過ごしたのは。』


「熱くねーよ!!」


私は携帯を握り締めた手に力を強く入れ過ぎたので、携帯がミシミシと音を鳴らした。


『まぁ、今頃は僕等の赤い糸のように結ばれたパンツと格闘している頃でしょうか‥‥。
頑張って下さいね!p(^^)q』


「何が赤い糸だ!てゆーか顔文字!ウザいっつーの!」


ゼエゼエと息を切らせながら文面に対して突っ込んだ。
だって、突っ込まずにいられるもんですか。



『そして先ほど‥‥澪、貴女に階段から突き落とされて気付いたことがあります。

僕は全然反省していなかったって‥‥。
ごめんなさい澪。いつまでも童心を忘れることが出来ない、やんちゃな僕を許して下さい。』



「‥‥千鶴‥‥。」


私はその内容に、少しだけまた心を打たれた。

‥‥一応、反省してるんだ。
やっぱ自分が悪いとは思ってんのね‥‥。


ただし、私は殴っただけであって突き落としたワケじゃないけどね。

それと、あれを『やんちゃ』の一言で済ませるその精神に敬服するよ。

私は力なく笑みをこぼした。


白髪‥‥増えたかも。



「ん、まだあるわね?」


私は続けて追伸を読む。



『P.S.
盗んだパンツは全部で12枚です。
澪が僕のポケットから奪還したのは10枚です。
すなわち残りの2枚は僕の物ということですね。

フッ‥‥どうやら今日の僕は運が良いらしい。僕は世界一の幸せ者ですよ。
ではまた明日(^-^)/chu』



「‥‥‥‥。」


―嗚呼、恐るべし


「『chu』じゃねーよ!!
変態ぃぃい!!!」


私は突っ込むべき箇所を見失い、手元にある10枚のパンツを壁に叩き付けた。


―藤堂‥‥千鶴!!



「‥‥ハッ!てゆーか、
『また明日』!?」


私の受難の日々はまだ、始まったばかりのようだ。


 
 
 
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