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恋は1対1

コイツとの冷静な会話は無理に等しい

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ーーボッ


ん?

何か今、ガスレンジに火が点いたような音が……。

私は少々緊迫しながらキッチンに視線をやった。
しかし、火も何も点いていない。


「空耳かぁ」


私は自らの耳に不安を感じながら再び前を向き直した。


「あ、前言撤回。」


千鶴が恥ずかしさのあまり燃えた音でした。

おぉ、真っ赤だ~。


のん気にも私は火山のような千鶴を見つめながら思案を巡らせる。


頭に異常が無いことは分かった。
あとは、何故に私に着きまとうのかが問題なのよね。


「あのさぁ、何で私なの?」


何げなく私はそう聞いてみた。


「好きです。」


千鶴はそれに対して、明かに質問を聞いていなかったであろう回答をした。


「いや、だから。何でって聞いてるの!」


「それはデートの時に言いましたよ好きです。」


「普通あれじゃ納得できないし。」


「澪は普通じゃないから納得できると思いま好きです。」


「……貴様いい加減にしろよ?
普通じゃないのはオ・マ・エ。」


ていうかさっきから好きです好きですと、会話に紛れさせているんだけどわざとかなぁ。
嫌だなぁ。怖いなぁ。


「よくご存じで!
確かに僕の澪への愛は尋常で無いほどの深さですよ。よく知っていますね、澪は物知りだ。
いや、僕マニアとでも言いますか」


ニンマリと満面の笑みに頬を薔薇色に染め上げる千鶴。


お手上げだ。

もうコイツとの冷静な対話なんて無理に等しい。



 
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