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恋は1対1

妊娠…したんですね。

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「な、何よ急におっきな声出して……」


「病院……」


先ほどの和やかな雰囲気から一転し、千鶴は何か思い詰めたような顔をして『病院』の単語をブツブツと呟き始める。


「はぁ、今度は何なのさ。」


「澪……ごめんなさい。」


すると千鶴は私の左手をガシッと鷲掴みしてきたので、私はワケが分からず困惑した。


「な、何よ!」


「僕としたことが……君を1人で行かせるなんて……愚の骨頂でした。」


「はぁ!?」


千鶴は手に力を込めた。



「……妊娠、したんですね?」


「……はぁぁ!?」


「フッ……僕が戸惑うと思いましたか?有り得ませんよ。
待望の懐妊です。心から喜んでいますよ!ありがとう澪。僕の子供を産むのですね……ありがとう!」


何を言うかと思えば千鶴は私が妊娠したと言い張り、身に覚えの無い感謝をしてきた。

いや、感謝されるも何も……事実無根ですし、そんなこと言った覚えは無いですし。
それより何より、妊娠に至る経緯すらありませんでしたし。ハイ。


「……んなワケねぇでしょ。」


私は目を点にして目の前の馬鹿を見つめた。


天然……いや、やっぱりここまでいくと精神病の人なのかも……。

私はそう思った瞬間、急に罪悪感を感じた。

もしかしたら自分は今まで、精神病の人に対して殴ったり蹴ったり……思い切り理不尽な態度を取ってきたのだろうか?

もしそうだとしたら、私は最低な人間だ!


「千鶴……さん。
あの、私、千鶴さんのことをよく知らないんだけど……えと、あの、高校はどこへ行ってたんですか?」


私はしどろもどろになりながら何とか糸口を掴もうと質問をした。
少々お門違いな質問ではあるが。



「高校……ですか?西高ですけど。」


「にっ!西高!?……って、隣街の西高に行ってたってこと!?」


「はい。」


マジですか。
西高と言えば、この地域に住む人間なら誰もが知っている超名門校であり、毎年何名もの東大合格者を生み出している高校なのだ。

そうだよな……藤堂グループを仕切るエリートだもの、不思議じゃないかも。

ていうか……コイツ、馬鹿なのに素晴らしい頭脳の持ち主なんだなぁ。
知能こそ素晴らしいことは分かったが、やはり頭のどこかが正常ではないのかもしれない。


と思いながら、私は感心の眼差しで千鶴の顔を改めてジーッと見つめた。



 



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