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恋は1対1
ホントにただのお坊ちゃん?
しおりを挟むその清々しい態度が余計に苛立ちを募らせた。
私はチッと舌打ちをした後、ノロノロと億劫に煙草に火を点けた。
―カチッ、カチッ……
「……あーもー、オイル無くなったじゃん。ハァ。」
「あ、それなら僕が点けますよ。」
千鶴はスーツの内ポケットから高価そうなジッポーを取り出し、左手で火を囲うように添えながら着火した。
「どうぞ。」
「あ……うん。」
私はおそるおそる千鶴の手に顔を寄せ、煙草を火の中へ入れる。
スーツを身にまとい、しなやかな動作でライターの火を差し出す千鶴が、真面目にそこらのホストより格好良く見えた。
ジジジと燃えながら煙草に引火されると、先端から煙がユラユラと舞い上がった。
千鶴は相変わらず涼しげな面立ちに笑みを浮かべている。
「……アンタ、ほんとにただのお坊っちゃん?」
千鶴はジッポーをスーツの内ポケットに再びしまうと、コタツを挟む形で私の向かいの座椅子に腰を下ろした。
「坊っちゃんかどうかは僕自身分かりませんけど、一般的に言えばそうなんでしょうね。」
「……ふぅん。」
金持ちのクセにやけに謙虚だと思うのは、私の偏見だろうか。
それにしても異文化だなぁ。
ごく普通のマンションの一室に、千鶴みたいな人間がいることに対して違和感を感じた。
何か……改めて見るとホント綺麗だよなぁ。
まぁ、最初は惚れてたもんね私。
そう考えながら千鶴のヤケに整った顔を凝視していた。
「……澪。」
「なに。」
「そんなに見つめないで下さい。
溶けてしまいますよ僕……」
千鶴はテーブルの上に物凄い速さで『の』の字を書きまくりながら顔を真っ赤にしていた。
「はぁ。」
今更だとは思うが、珍しいモノを見る目で千鶴を見つめまくった。
変な所で照れるんだなぁ……。
ん?
ーーモソモソ
その時、コタツの中へ突っ込ませていた私の両足が何かによって、モソモソと撫でさすられた。
ていうか明らかに、千鶴の足が私の足をウネウネとタコのように絡ませている。
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