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恋は1対1

ムキになるだけカロリーと幸せを消費する

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ーーゴスゥ!


その刹那、大きな衝撃音がリビングに響き渡った。
内訳すれば、私の踵落としが変態千鶴の脳天に直撃した音だ。

頭に落ちてきた強烈な攻撃を受け、千鶴はそのままテーブルに顔面を強打した。

朝から悪夢のダブルパンチだよ。


「う……ぐふ……ッ。
今日も元気ですねぇ……僕の澪は。」


「何で人ん家のコタツでほっくりと暖まってるのよ!
コタツにカビが生えらぁ!
じゃなくて不法侵入だよクソ変態野郎が!!」


「わぁー、すごい早口ですねぇ。感心しますよ。」


変態もとい、千鶴は昨日の今日で懲りずに不法侵入して来たのだ。

あのメールは何だったのよ。
反省したんじゃなかったのか、
この単細胞め!


「うるせー!今度は鼻をへし折ってやろうか!?」


「わわっ、待って下さいよ!
落ち着いて。」


鼻血を垂らす男前に対して、朝っぱらから『鼻折るぞ』と威嚇できちゃうなんて、我ながらビックリだ。

私は朝日に照らされた千鶴の整った顔を、ひたすら睨み付けた。


「凪……そうだ、凪を起こさなきゃ!
変態に夜這いされちゃう!
凪ぃ!なぎーッッ!」


こうしちゃいられない、と私は血相を変える。


「凪さんなら、先ほど彼氏の家へ行きましたよ?
まぁ、僕と澪を2人きりにするために気を利かしてくれたんでしょうね……。
良い妹さんですよ。」


「う、嘘っ。マジで……?」


その事実を知った途端、私は顔を引きつらせながらその場を1歩退く。

凪が出かけた、それすなわちこの男と2人きりということだ。


朝からなんという大ピンチだろうか。こんな緊迫した生臭い朝を迎えるなんて……。
神様、私何かしましたか?


「おや、固まってどうしたんです?
あ、それと朝なのに夜這いという表現は少し変ですね。
……それとも、夜這いかけて欲しかったんですか?
そんな遠回しな言い方しなくったってぼグハッ!」


私は淡々とセクハラ発言を述べる千鶴の頬を足蹴りした。


「いい加減、学習しやがれ変態め……!」


しかし、今しがた放った自分の発言の内容に引っかかった。
私自身も昨日、学習したことをすっかり忘れているではないか。

そう、コイツに何を言っても無駄だということに……!

ムキになるだけ、カロリーを消費するだけだ。あと幸せも。


 
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