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恋の影

通報を決意

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「う、嘘ですよね!?
今の言葉は空耳ですよね!」


私が後退りしながら言うと、
千鶴さんはネクタイに指を絡ませながら不敵に笑った。


「いいえ?
空耳なんかじゃありませんよ。
……あ!もしかして、着る服が無くなったのを怒ってるんですか?
フフッ、それならすぐに新しい物を買って差し上げますよ。
……そしてその服をたくさん着て、澪の香りでいっぱいにさせて下さい。
また頂きに参りますから!」


ーー……!

私は言葉も出せずに口をパクパクさせた。

なんということだろうか。
藤堂さんの孫は、
正真正銘の『変態』だったのだ。


私の頭の中で『キモイ』の3文字が大きく浮かんだ。


「きっ……(もい)!
じゃ、もしかして……、
ここ数週間で失くなったと思っていた服は……全部、アナタが盗ってたって言うの?」


小刻みに震える私の頬に、
千鶴さん……いや、変態の手が伸びてきたので、全身の毛が猫のように逆立った。


「はい。愛故の衝動なんです。
許して下さいね。
僕の、愛する、澪……!」


千鶴はそう言うと、私の顔に接近してキスをしようと迫って来た。



「……ぎ……」


私は決意した。


「ぎ?」


「ぎゃぁぁあ!触るな変態ッ!」


この男には2度と近付かないことを。

そして警察に通報することを……!



ーーバキィッ!!


勢い余って、私は千鶴の顔を思い切り殴ってしまった。




 
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