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恋の影

夢のような夜のデート

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――ドクッドクッバクッ




緊張のあまり昨夜はあまり眠れないまま、千鶴さんとのデートの時間がやってきてしまった。


ていうか、今、目の前に……います。意中の人が。



「澪さん……どうしましたか?
僕の顔に何か付いてますかね?」


夜景をバックに私達はイタリア料理を楽しんでいる。


ぶっちゃけ、こんなに近い内に願望が叶うとは思いませんでした。夜景の見えるレストラン……。


私は実習に汗水垂らしていた日々を、走馬灯のように思い起こしていた。

あの時に比べたら、まるで今の自分がお姫様みたいだ。
まぁ……あくまで『みたいな』気分だけどね。


「あ、いえ!考え事してたんです。スイマセン、ぼーっとしちゃって……」


私は慌てふためきながら千鶴さんにそう伝えると、彼はやんわりと微笑んだ。


「そろそろ、出ましょうか。一緒に外で夜景が見たいです」


ま、眩しい!夜景なんかよりアナタの笑顔が眩しいです……!


私は鼻血が出ないように神様に必死に祈りながら店を出ると、千鶴さんに連れられて店のビルの屋上に行った。


そこから見下ろすネオンは、まるで宝箱をひっくり返したみたいでとても綺麗だ。

私は感動のあまり、じんわり涙を浮かべる。


その時、一陣の風がビュウッと私の肩を撫でていった。
真冬の凍てつく風が肌を突き刺す。

……寒い。

私は色気付いて薄着して来たことを多大に後悔した。

鼻水なんぞ垂らしたら致命傷だわ……ピンチ!


「……寒いですね。澪さん、風邪引きますよ」


千鶴さんは私の耳元でそう囁くと、スーツの上着を華麗に私の肩に被せてくれた。

華麗にね!


「……あ、ありがとうございます!でも千鶴さんが風邪引きますっ」


私は真っ赤になりながら千鶴さんの月明かりに照らされた綺麗な顔を見上げた。 




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