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恋の影

双子の妹

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胸を焦がすようなあの運命の出会いから、約1ヶ月が過ぎた。
実習は、無事終了したのだ。

あれから色んなことがあった。
車椅子に自分の足を引っ掛けて、足首が流血したり
(お年寄りじゃなくて自分の足で良かったけどね)。
主任が私の悪口を陰でコソコソ言っているのを聞いたり
(ふざけんじゃねーわよ!)。
毎日の入浴介助や排泄介助などのハードな介護のお陰で3キロ痩せてしまったり
(まぁ良いダイエットになったわ)。


とにかく日記などには書ききれないほどのたくさんの出来事があった。

中でも私にとって最大にして最高の出来事が……。



「なーにニヤケてんのぉ?」


ウットリと煙草を吸っている私に向かって、鏡が話しかけた。

……じゃなくて瓜二つの双子の妹だ。


「う、うるさいわね!」


「良かったね、お ねえ
1年と2ヶ月も彼氏いないから結構心配したよ私」


ヘヘへと笑いながら妹の凪が同情してきた。


「いちいち年月まで覚えてなくていいから!」


「え~だって姉妹として心配じゃない?よっぽど男の子紹介しようと思ったわよぉ」


コイツ、嫌味か?

私はその発言に苛立ち、煙草の煙を凪の顔に吹きかけた。


凪は、私と違って男の子にモテるので常に彼氏がいる。
なので私みたいに、1年と2ヶ月なんてブランクは空いたことが無いのだ。

だからたまに凪のこういった発言にイライラさせられる。


……同じ顔に産まれたというのに、神様は不公平だ。

そう思いながら私は煙草を灰皿に押し付けた。


「ま、良かったじゃん!
超カッコいいんでしょ?そのお孫さんとやらは」


凪は両手の指をクロスさせ、その上に自分の顎を乗せた。


「……そりゃ、もう。」


みるみるうちに私の顔に血が上っていく。
千鶴さんの顔を思い浮かべたからだ。



『澪さん、実習が終わったら一緒に出かけませんか。』



千鶴さんの色気のある重低音の声が、頭の中でクルクルと回った。


そう、あの後彼に携帯の番号とメルアドを書いた紙を渡されたのだ。

つまりは……。



「で、お姉ちゃんはデートに何を着て行くのかな?」


その凪の言葉を聞いて、顔面に火が着火された。


「……で、でぇとよね。」


「デェト、ですよ?」


凪は私の初々しい反応を見てクスクスと笑っている。 




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