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恋に堕ちる
ハードな実習生活
しおりを挟む「おはようごさいまぁす!!」
私の威勢の良い挨拶がホールに響いた。
実習での基本は『元気な挨拶』なのだ。
「おはよう、土屋さん」
この職員の男性は河本さんと言って、立派な介護福祉士だ。優しくてカッコ良くて尊敬している……
あ、『カッコ良い』は余計なワードかな?
「あ、おはようごさいます!何かやることはありますか?」
「うん、じゃあ山田さんの食事介助お願いできるかな?」
河本さんはニッコリと爽やかに微笑んだ。
「はい!分かりました」
私もニッコリと満面の笑みを浮かべ、元気良く返事をした。
――『笑顔』
そう、笑顔こそが最も大切なポイントだ。
ニコニコしていて明るくハキハキとしている学生は、頭でっかちで陰気な学生に比べると格段に評価が上である。
ぶっちゃけ介護は人間性が問われる仕事だからだ。
実習では知識や技術よりも、どれだけ優しく親身にお年寄りに尽せるか―これが何より重要なのだ!
もちろん知識や技術が無ければお年寄りの怪我や病気に繋がるので、前提として必要だ。
それを勉強するために実習というモノが存在するワケだが……、
もちろん苦痛や多大なストレスにも直面する。
「土屋さん!」
私にとって、実習の上で何が1番の苦痛か。
それは……
「勝手に食事介助されちゃ困るのよ!」
この鬼ババ……じゃなくて主任だったりする。
私の場合は、コイツ……じゃなくてこの人がストレスの根源なのだ。
「あの、でも、今日の私の指導者は河本さんなので河本さんの指示に従ったんですが……」
多くの実習生にとって職員の存在が1番のストレスであろう。これは私だけじゃなく、大勢の先輩方やクラスの皆の意見でもある。
「あ、そう。でも主任の私にも一言言ってくれなきゃ困るのよね~!アナタと違って、こっちは仕事なんだからっ」
鬼バ……じゃなくて青木主任は般若みたいな顔を更に醜く歪ませ、まるで私が遊びに来ているみたいな言い方をした。
「はい、すみません。以後気を付けます。」
私は何とか苦笑いにならないよう、頬の筋肉を調整した。
いつもこんな感じで、主任に嫌味を軽く数十回は言われるのを我慢している。
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