時には諦めも必要です

りすい

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12.身の振り方を決めなくちゃかな

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ドキドキの謁見イベントを無事終了したわけですが、
私、正直言ってやること何にもないんですよね。

巻き込まれたのだから、とこのままお国におんぶに抱っこでも良いんだろうけど、
日本人としては働かざる者食うべからずの精神が罪悪感をつつく。

暫くはお勉強の時間と思って先のことを考えるのはやめていたのだが…

「いつまでもこのまま、とはいかないよねぇ」
「何かございましたか?」

思わず漏れ出た言葉に近くで紅茶の準備をしていたペルルがリアクションをしてくれる。

「んー今後、どうしていこうかな、と思いまして。仕事とか見つけられるかな。戸籍、市民権的なのないと1人で生きてくのはやっぱり難しいかな。家とか借りれないよね、国王様保証人になってくれるかな…」

思いつくままに言葉を連ねるも、なんの言葉も返ってこない。
もともと集中できていなかった文字練習の紙から頭を上げペルルの様子を見るも、
彼女はポカンとした表情をしていた。

「ペルル??あ、やっぱ国王様に保証人お願いするのは流石に失礼過ぎたかな?」

「あ、い、いえ。そこではなくてですね?あぁいや。すぐにご返答ができず大変失礼いたしました。ユズキ様は王城を出られるご予定なのですか?昨日の謁見の際に陛下が何か仰っていたのでしょうか。私に正しく情報が届いていないのであれば申し訳ないのですが、そう言ったお話は聞いておりませんでしたので驚いてしまいまして。」

「あーいや、特に今後の居住地どうするのかみたいな話は出てなかったかな?一応私の生活は保証してくれるっていうのは答えて貰えたからそれで良いかなーって思ってあんまり追求しなかったんだけど。」

色々考えなきゃいけない事も多いし、ちょっと疲れて考えることをやめてしまった感があるというのも否めない。
後回しにしない方がいいのはわかるが、今後への不安のせいで目を逸らしたくなってしまうのは仕方がないと思う。

「であれば、このままこちらでお過ごしになった方がよろしいのではないでしょうか。ユズキ様は文字の勉強の進捗も非常に良いとお聞きしております。基礎知識に関しても予定よりも早く授業が終わりそうであるとか。そちらが終わり次第街にお買い物に行くことなども許可されるとのことでしたので、暇を潰すことも出来るかと思うのですが…」

ほう!街にお買い物!それは楽しそう。
異世界に来たとはいえ、まだ城の中から出たことがない。
城の中だけでももちろん日本とは違うところだらけなのだが、街に出たらもっと色々な差を見ることが出来るのではないだろうか。

「暇を潰したい、っていうのもあるにはあるんだけど。日本元の世界の感覚として働かないでずっと過ごすっていうのになんとなくの罪悪感があるのよね…奏ちゃんだって聖女としての仕事をするっていうのに、私だけ何もしないでっていうのはこう、ね?」

「人生を大きく狂わされたのですから、それくらいの恩恵は享受してしかるべきかと思うのですが…ですが、そう簡単に考え方は変えられるものではございませんものね。お仕事に関しては何か良いものがないか、サージュ様にご相談してみましょう。」

確かに、宰相補佐であれば確かに上手いこと仕事を斡旋してくれそうである。
うん、と頷き対応をお願いする。

「承知いたしました。一度ご相談のお時間を頂けるようご連絡しておきますね。私もできる限りユズキ様に気持ちよくお過ごし頂けるよう精一杯お手伝いさせていただきますので、何かございましたらお気軽にお申し付けくださいませ!」
「うん。ありがとう」
「本当に遠慮は不要でございますよ?私を置いて急にいなくなってしまうなんてことはなさらないでくださいね!」

よろしいですね!と念を押すように繰り返すペルルに思わず笑ってしまう。
急に家出をしてしまうような情緒不安定な子に思われてしまったのだろうか。

「大丈夫。ちゃんと相談するし、1人で決めたりしないから安心して。」
「それはようございました。今日はもうお勉強はここまでにして休憩にいたしましょう。明日は魔術の日ですし早めにお休みになられた方が良いでしょう。」

背伸びをしつつ、言われた通りに片付けを始める。
これからの事は1人で考えてもしょうがない。
周りに相談しながら、決めていこう。



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