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「っ!お前は!なぜそんなに涼しい顔をしている!!そうか契約紋だな?逆らえなくしているのか?悪質な。」
耳が痛むほどの怒号が聞こえ思わず身体がすくむ。
「本当に性根の腐った女だ。奴隷解放をうたいなから己の都合の良いように縛り付ける。そうだろう、今の側近の分布を見ても力があり冒険者経験のある者は囲い込めば大きな力になる。御するのが己であれば殿下にもいい顔が出来よう!そういった流れを読む力だけは認めてやってもいい。」
語り出したガーランドに口を挟む隙はない。
もっともあったとしても聞いて貰えないだろうが。
馬鹿にするな、と思った。
血のにじむ思いをしてきた。女だからと理不尽な扱いにも耐えた。
なぜ、女だというだけでこうも目の敵にされ罵倒されなくてはいけないのか。
悔しくて、少しだけ涙が滲んでしまった。
まずい、と思った時にはもう遅くて。
「あぁ、言い逃れが出来なくなれば途端に泣き出すのか。可愛く泣いて抱きつけば殿下も絆されるとでも?こんなに浅ましい女に騙されるなど殿下もどうなさったのか。まぁいい。すぐに私が正してやる。今すぐにでもご自慢の身体で味方を増やした方が良いのでは?」
馬鹿にしたように鼻で笑われる。
…きっちりと制服を着込み、色気なく髪をまとめあげ、野暮ったい眼鏡を掛ける。どれだけ禁欲的にしても女というだけで言われのない中傷をされる。
こんな見た目の私を捕まえて尚、色を疑う彼こそ年がら年中ハニートラップに引っかかっているのではないだろうか。
「そのくだらない話はいつまで続きます?」
「あぁ。君の話だったね。済まない、不愉快な女が邪魔をするものだから。」
「彼女は何もしてないですけどね。」
私の真横にいたカイルは1歩だけ私より前にでる。
カイルにも、私が色を使って出世したと思われてのかな。
なんて冷めた頭で考える。
それでも、私は引けない。
頑張っている他の女性事務員のためにも。
私に期待してくれている上司のためにも。
大丈夫。分かってくれる人が居る。
いつかはちゃんとおさまるべき場所に落ち着くから。
すっと表情が抜け落ちるのを感じる。
大丈夫、いつも通りだ。
今日はうっかり感情が表に出てしまったが、いつもは心を殺せていたのだ。
気にする必要はない。
珍しく動揺していた私が落ち着いたのが分かったのか、ガーランドがまた怒り出す。
「お前は本当に人形のようだ。気持ち悪い。」
ごめん、限界。
横から小さなつぶやきが聞こえた。
ハッとした瞬間、動くことも喋る事も出来なくなる。
原因はカイルの発している殺気。
帯刀している剣は抜かれていないが、ビリビリとした刺すような空気が満ちている。
「まだ、彼女を罵倒するつもりですか?これ以上続けると言うのであればそれ相応の対応をさせていただきます。それと、たとえ自由だとしても死んでも貴方の言いなりにはなりませんよ。貴方は色々と見直した方がいい、生き方を。」
それでは。と一方的に会話を切ってその場を離れようとするカイルに手を掴まれて引っ張られる。
「ふざけるな!」
大きな声に振り向くと真っ赤な顔をしたガーランドが杖をこちらに向けている。
矛先は私。
耳が痛むほどの怒号が聞こえ思わず身体がすくむ。
「本当に性根の腐った女だ。奴隷解放をうたいなから己の都合の良いように縛り付ける。そうだろう、今の側近の分布を見ても力があり冒険者経験のある者は囲い込めば大きな力になる。御するのが己であれば殿下にもいい顔が出来よう!そういった流れを読む力だけは認めてやってもいい。」
語り出したガーランドに口を挟む隙はない。
もっともあったとしても聞いて貰えないだろうが。
馬鹿にするな、と思った。
血のにじむ思いをしてきた。女だからと理不尽な扱いにも耐えた。
なぜ、女だというだけでこうも目の敵にされ罵倒されなくてはいけないのか。
悔しくて、少しだけ涙が滲んでしまった。
まずい、と思った時にはもう遅くて。
「あぁ、言い逃れが出来なくなれば途端に泣き出すのか。可愛く泣いて抱きつけば殿下も絆されるとでも?こんなに浅ましい女に騙されるなど殿下もどうなさったのか。まぁいい。すぐに私が正してやる。今すぐにでもご自慢の身体で味方を増やした方が良いのでは?」
馬鹿にしたように鼻で笑われる。
…きっちりと制服を着込み、色気なく髪をまとめあげ、野暮ったい眼鏡を掛ける。どれだけ禁欲的にしても女というだけで言われのない中傷をされる。
こんな見た目の私を捕まえて尚、色を疑う彼こそ年がら年中ハニートラップに引っかかっているのではないだろうか。
「そのくだらない話はいつまで続きます?」
「あぁ。君の話だったね。済まない、不愉快な女が邪魔をするものだから。」
「彼女は何もしてないですけどね。」
私の真横にいたカイルは1歩だけ私より前にでる。
カイルにも、私が色を使って出世したと思われてのかな。
なんて冷めた頭で考える。
それでも、私は引けない。
頑張っている他の女性事務員のためにも。
私に期待してくれている上司のためにも。
大丈夫。分かってくれる人が居る。
いつかはちゃんとおさまるべき場所に落ち着くから。
すっと表情が抜け落ちるのを感じる。
大丈夫、いつも通りだ。
今日はうっかり感情が表に出てしまったが、いつもは心を殺せていたのだ。
気にする必要はない。
珍しく動揺していた私が落ち着いたのが分かったのか、ガーランドがまた怒り出す。
「お前は本当に人形のようだ。気持ち悪い。」
ごめん、限界。
横から小さなつぶやきが聞こえた。
ハッとした瞬間、動くことも喋る事も出来なくなる。
原因はカイルの発している殺気。
帯刀している剣は抜かれていないが、ビリビリとした刺すような空気が満ちている。
「まだ、彼女を罵倒するつもりですか?これ以上続けると言うのであればそれ相応の対応をさせていただきます。それと、たとえ自由だとしても死んでも貴方の言いなりにはなりませんよ。貴方は色々と見直した方がいい、生き方を。」
それでは。と一方的に会話を切ってその場を離れようとするカイルに手を掴まれて引っ張られる。
「ふざけるな!」
大きな声に振り向くと真っ赤な顔をしたガーランドが杖をこちらに向けている。
矛先は私。
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