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拝啓
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"貴方に婚約破棄をされて3ヶ月が経ちました。
皆様はいかがお過ごしでしょうか。
新しくご婚約されたご令嬢は妖精の様な愛らしさだと、私のいる辺境の地にも噂が届いてまいりました。
無邪気な妖精は華やかな花がお好きで色々と飛び回っているともお聞きしております。
貴方様は国一の気高き花ではございますが、人知を超える妖精を縛り付けるのには難儀するかも知れませんね。
あぁ、妖精の無邪気さも愛らしさの一部でしたかしら。縛り付けては愛らしさも半減するというもの。ありのままのお姿でいられるよう尽くすのが殿方の矜持というものでしたわね。
以前も無邪気な彼女の行動を制限するような発言をしてご不快な思いをさせてしまったというのに私ときたらつい、余計な事を申し上げてしまいました。
お二人がご婚約の宣言をされた際は、私が王太子妃教育にあてた10年以上を無に帰す宣言に動揺して祝辞を述べることも忘れてしまっておりましたので、改めてお祝いをお伝えすべく筆をとった次第でございます。
本当におめでとうございます。
3ヶ月前の動揺も、今もつい余計な事を言ってしまう所も私はまだまだ王太子妃たる鍛錬が足りていなかったのでしょう。
私との縁をお切りになった殿下はやはり素晴らしい判断力をお持ちだったのですね。
その素晴らしい判断力がご公務にも活かされていることと存じます。
先の隣国との対談におけるマナーを度外視したフランクな対応で一気に親密度を高めようといった動きは、私では到底思いつくことも出来なかった動きでございました。
宣戦布告とも取られそうなあのような危ない動き、恐らくこの国のどなたも隣国の王太子殿下に対しては出来ないでしょう。
ひとえに殿下の今後を恐れぬ胆力と、隣国王太子殿下の広く寛大なお心を見抜くお力があったからこそ大きな被害なく対談を終えることが出来たのでしょう。
隣国の王太子殿下はどうやら魔道具士をお求めの為に事を荒立てることはなさらなかったとの事でございました。
この国の魔道具は非常に優秀ですから。その事は長年魔道具士の教育を1人で担ってきた私がよく存じ上げております。
私を王都から遠ざけていたのは曲がりなりにも私が国一の魔道具士であったからでしょうか。
てっきり恋にうつつを抜かしていらっしゃるだけかと思っておりましたので、この展開を読んでいたのかと驚いてしまいました。
聡明な殿下がまさかあのような稚拙な嘘を信じ冤罪で公爵令嬢を一方的に婚約破棄なさるはずがございませんものね。
とはいえこの身の今後について特に制限はなかったかと存じます。
殿下には役立たずと言われてしまいましたが役立たずなりに身の振り方を考えましたの。
あぁ。私の今後の事など殿下は興味が無いかとは思われますが念の為少しだけお伝えさせて頂きますね。
直接辺境の地までお越しいただいた隣国の王太子殿下から色々とお話をお聞きし、私も共に隣国へとお供する事に致しました。
この国では未熟でお役に立つこともできずに追いやられた私でございますが、隣国には必要な力であると嬉しいお言葉を賜ることができました。
妖精様の恩情を頂き国外追放ではなく貴族籍の剥奪のみとされておりましたが、私も私が生み出したもの達ももう二度とこの国の地を踏むことは無いかと存じますので、今更ではございますがお心はお返し致しますとお伝えくださいませ。
心よりお仕えしたいお方と出会えた今はとても充実しており、今までの色褪せた世界が嘘のようにキラキラと色付いてございます。
以前と違いやる気に満ち溢れておりますので、私も色々と新しい魔道具を作ることが出来るでしょう。
今後は隣国の発展の為精一杯努力をしていこうと思っております。
それではどうか末永くお幸せに。貴方様の今が永遠に続くことをお祈り申し上げます。"
皆様はいかがお過ごしでしょうか。
新しくご婚約されたご令嬢は妖精の様な愛らしさだと、私のいる辺境の地にも噂が届いてまいりました。
無邪気な妖精は華やかな花がお好きで色々と飛び回っているともお聞きしております。
貴方様は国一の気高き花ではございますが、人知を超える妖精を縛り付けるのには難儀するかも知れませんね。
あぁ、妖精の無邪気さも愛らしさの一部でしたかしら。縛り付けては愛らしさも半減するというもの。ありのままのお姿でいられるよう尽くすのが殿方の矜持というものでしたわね。
以前も無邪気な彼女の行動を制限するような発言をしてご不快な思いをさせてしまったというのに私ときたらつい、余計な事を申し上げてしまいました。
お二人がご婚約の宣言をされた際は、私が王太子妃教育にあてた10年以上を無に帰す宣言に動揺して祝辞を述べることも忘れてしまっておりましたので、改めてお祝いをお伝えすべく筆をとった次第でございます。
本当におめでとうございます。
3ヶ月前の動揺も、今もつい余計な事を言ってしまう所も私はまだまだ王太子妃たる鍛錬が足りていなかったのでしょう。
私との縁をお切りになった殿下はやはり素晴らしい判断力をお持ちだったのですね。
その素晴らしい判断力がご公務にも活かされていることと存じます。
先の隣国との対談におけるマナーを度外視したフランクな対応で一気に親密度を高めようといった動きは、私では到底思いつくことも出来なかった動きでございました。
宣戦布告とも取られそうなあのような危ない動き、恐らくこの国のどなたも隣国の王太子殿下に対しては出来ないでしょう。
ひとえに殿下の今後を恐れぬ胆力と、隣国王太子殿下の広く寛大なお心を見抜くお力があったからこそ大きな被害なく対談を終えることが出来たのでしょう。
隣国の王太子殿下はどうやら魔道具士をお求めの為に事を荒立てることはなさらなかったとの事でございました。
この国の魔道具は非常に優秀ですから。その事は長年魔道具士の教育を1人で担ってきた私がよく存じ上げております。
私を王都から遠ざけていたのは曲がりなりにも私が国一の魔道具士であったからでしょうか。
てっきり恋にうつつを抜かしていらっしゃるだけかと思っておりましたので、この展開を読んでいたのかと驚いてしまいました。
聡明な殿下がまさかあのような稚拙な嘘を信じ冤罪で公爵令嬢を一方的に婚約破棄なさるはずがございませんものね。
とはいえこの身の今後について特に制限はなかったかと存じます。
殿下には役立たずと言われてしまいましたが役立たずなりに身の振り方を考えましたの。
あぁ。私の今後の事など殿下は興味が無いかとは思われますが念の為少しだけお伝えさせて頂きますね。
直接辺境の地までお越しいただいた隣国の王太子殿下から色々とお話をお聞きし、私も共に隣国へとお供する事に致しました。
この国では未熟でお役に立つこともできずに追いやられた私でございますが、隣国には必要な力であると嬉しいお言葉を賜ることができました。
妖精様の恩情を頂き国外追放ではなく貴族籍の剥奪のみとされておりましたが、私も私が生み出したもの達ももう二度とこの国の地を踏むことは無いかと存じますので、今更ではございますがお心はお返し致しますとお伝えくださいませ。
心よりお仕えしたいお方と出会えた今はとても充実しており、今までの色褪せた世界が嘘のようにキラキラと色付いてございます。
以前と違いやる気に満ち溢れておりますので、私も色々と新しい魔道具を作ることが出来るでしょう。
今後は隣国の発展の為精一杯努力をしていこうと思っております。
それではどうか末永くお幸せに。貴方様の今が永遠に続くことをお祈り申し上げます。"
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