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第8章 引き裂かれた翼
127:手紙(1)
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「何という事だ…」
エーデルシュタイン王国の首都ヴェルツブルグ。その日、王城に届いた1通の手紙が、王国を震撼させた。玉座の間において、大勢の重臣達がざわめき、宰相のゲラルト・フォン・ドッペルバウアーでさえ、半ば呆然としたまま呟く他になかった。
「皆さん、遅くなりました」
不安に満たされた玉座の間に澄み渡る男性の声が響き、重臣達は一斉に扉へと振り向く。重臣達の視線の先には、一人の年若い男が、重臣達の誰よりも颯爽とした姿で玉座へと歩み寄っていた。
「殿下!」
重臣達を代表して、ゲラルトが若い男に声をかける。殿下と呼ばれた男は、目鼻立ちの整った魅力的な顔をゲラルトへと向け、神妙に頷いた。
「ゲラルト、陛下のご容態は?」
「はい。正直に申しまして、芳しくありません。今朝届いた手紙を見た途端に卒倒され、未だお目覚めになりません」
「そうですか…」
ゲラルトから報告を受けたクリストフは俯き、沈痛な面持ちをする。だが、すぐに顔を上げると、ゲラルトに向けて口を開いた。
「それで、その手紙はどこに?」
「こちらに。殿下にも直接届いたと伺いましたが」
「ええ。同じ内容か、拝見させて下さい」
クリストフの求めに応じ、ゲラルトが手紙を差し出す。クリストフは手紙を受け取ると、その場で開き、素早く目を通した。
―――
エルフ ティグリ族 族長から、エーデルシュタイン国王へ、書を奉る。
貴国、並びにカラディナ共和国が遣わした軍により、我らがエルフ八氏族は、未曽有の国難を迎えた。だが、幸いにしてサーリア様の御加護により、我らは貴軍の暴虐を打ち破り、祖国たる大草原に安寧を取り戻す事ができた。
我々エルフと貴国はガリエルとの永年の戦いでともに肩を並べる盟友であると信じていたが、此度の貴国の軽率な行動により、その友誼に深刻な亀裂が生じたと云わざるを得ない。
此度の厄災により我ら八氏族の一つモノは壊滅し、一族ことごとく大草原の露と消え、貴国らが遣わした兵35,000も異郷の地に斃れた。我々は、この様な不幸を招いた貴国の妄動を非難するとともに、十分な説明を求める。
だが、我々はそれでも、貴国が信頼に足る盟友であると信じている。我々は、此度の不幸はガリエルによる悪辣な策謀によって齎されたものと判断している。お互いのすれ違いによって、双方とも取り返しのつかない損害を被ってしまったが、我々と貴国は、立ち向かうべき敵を誤ってはいけない。立ち向かうべき相手は、ガリエルなのだ。
我々は、その根幹を守るためであれば、モノを襲った不幸でさえも水に流す覚悟ができている。貴国が真の盟友であれば、我々の覚悟をきっと理解し、我々と同じ英断を下すであろうと信じている。
現在我々は、陛下の長子、リヒャルト殿下をお預かりしている。我々はリヒャルト殿下を通じ、お互いの蟠りを解きほぐす事が、何よりも肝要であると考えている。殿下にはすでに我々の真意をご理解いただき、暫くの間我々と生活を共にし、友好への橋渡しを担っていただく事で、ご快諾いただいた。
殿下の身の安全は、貴国が再び信義に反する行動を取らない限り、お約束する。
我々は、貴国と再び肩を並べ、ガリエルと戦う日が来る事を、切に願う所存である。
中原暦6625年 ガリエルの第5月
ティグリ族 族長 グラシアノ
―――
「…ふぅ」
「殿下…」
クリストフが手紙を読み、大きく息をつく。ゲラルトが焦れた様に声をかけると、クリストフは頭を上げ、ゲラルトに語り掛けた。
「…私に届いた内容と同じですね。西誅は失敗し、兄上が虜囚の身となりました」
「殿下…」
クリストフの言葉を聞き、ゲラルトが声を詰まらせる。ゲラルトも理解はしていたが、改めてクリストフの口から齎された衝撃は、些かも緩和されていなかった。
派遣した軍の半数が戦死し、王太子が捕虜となった。エーデルシュタイン史上最大の惨事である。特に、王太子もさる事ながら、軍の損害は深刻である。エーデルシュタインが保持する戦力は、正規兵及びハンター合計で約10万。そのうち4万を派遣して、半数が戦死したのだ。残りの6万は、ガリエルへの備えと国体の維持に必要であり、安易に動かせるものではない。残存する2万が帰還しない限り、予備兵力さえも存在しない、危機的状況と言えた。
「こんな事になろうとは…。私もあの時、もっと強く諫めるべきでした…」
クリストフが眉間に手を当てて、揉みしだく。ゲラルトが縋るように眺める中、やがてクリストフが眉間から手を離し、口を開いた。
「ゲラルト、まずは国内の動揺を抑える事が急務です。我が国は盤石で、此度の不幸に際し些かも揺らぐ事はないと、内外に知らしめて下さい。私は、教皇猊下に拝謁し、今後の対応を協議して参ります」
「はっ、畏まりました」
***
「猊下、本日はご多忙の中お時間をいただき、誠にありがとうございます」
「いえ。今や、この件に勝る重要事項など、ありません」
教会に向かったクリストフは、早々に教皇フランチェスコの許へと通され、二人は挨拶もそこそこに本題へと入った。
「猊下は此度の不幸に対し、どの様に対処されるのがよろしいと、お考えでしょうか?」
「…」
クリストフの質問に対し、フランチェスコはすぐには答えない。クリストフから視線を外したまま、眉間に皴を寄せ、難しい顔をしている。クリストフは、暫くの間フランチェスコの言葉を待っていたが、フランチェスコから回答が得られないと判断すると、控えめに口を開いた。
「猊下、僭越ながら、私の意見を申し上げてもよろしいでしょうか?」
「…どうぞ」
フランチェスコの了承を得たクリストフは神妙に頷き、意見を述べる。
「猊下、此度の戦によって、中原、エルフはともに多大な損害を被りました。北伐で発生した背信行為は、確かに赦されざる所業であります。しかし、今が、中原とエルフが一体となれる、最後の機会です。今この機会を逃せば、人族とエルフは不倶戴天の敵となり、ガリエルの思う壺となります。幸いエルフもそれに気づいており、自ら流した血を顧みる事なく、我々に手を差し伸べています。この手を払っては、いけません。我々は此度の戦で数万にも及ぶ兵を失い、その上セント=ヌーヴェルも回復の途上です。この上さらにガリエルとエルフの挟撃を受ければ、中原は終わりです。猊下の御心痛は察するに余りありますが、ここは人族のため、曲げてお願いします」
「…しかし、貴国は、それで治まるのですか?」
クリストフの説明を聞いたフランチェスコは顔を上げ、懸念を表明する。エーデルシュタインは、軍の半数を失い、王太子が虜囚の憂き目にあった。このままでは、内外ともに面子が立たない。
しかし、フランチェスコの懸念にもクリストフは動じず、力強く頷いた。
「私が、抑えます。中原の運命を左右する一大事です。我が国の面子など、かかずらうべきではありません」
「…わかりました」
クリストフの目に宿る決意を見たフランチェスコは、大きく息をつき、顔を上げる。
「…教会とカラディナについては、私が抑えます。殿下は、エーデルシュタインをしっかりと抑えていただき、事態がこれ以上深刻にならないよう、お願いします」
「畏まりました。お任せ下さい」
***
フランチェスコの許を辞し、王城に戻ったクリストフは、並び立つ重臣達に次々と指示を飛ばし、対策を講ずる。その日、王城は夜遅くまで灯がともり、多くの人々が駆けずり回っていた。
「…ふぅ」
日付が変わろうとする頃、クリストフはようやく自分の執務室へと戻り、一息つく。彼は近侍を呼び、ワインとつまみを持って来させると、執務席に座り、一人でグラスを傾けた。
「…」
クリストフは右手でワイングラスを持ったまま、左手で机の上に広がる手紙を取り、再び目を走らせる。その瞳には、この事態を楽しむ様な光があった。
―――
エルフ ティグリ族 族長から、エーデルシュタイン クリストフ王子へ、書を奉る。
貴国、並びにカラディナ共和国が遣わした軍により、我らがエルフ八氏族は、未曽有の国難を迎えた。
幸いにしてサーリア様の御加護により、我らは貴軍の暴虐を打ち破り、祖国たる大草原に安寧を取り戻す事ができたが、我らが八氏族の一つモノは壊滅して一族ことごとく大草原の露と消え、貴国らが遣わした兵35,000も異郷の地に斃れた。また、貴殿の兄上、リヒャルト殿下の身も、我々がお預かりしている。
我々は貴国との間にこれ以上決定的な亀裂を生み、不倶戴天の敵同士となる様な事態は、望んでいない。我々は再び肩を並べ、ガリエルと相対する盟友になれると、信じている。そのため、リヒャルト殿下には暫くの間我々と生活を共にし、貴国との友好の懸け橋となっていただく。
クリストフ殿下には、その間、貴国の安寧をお願いしたい。我々はリヒャルト殿下を留め置く事で、貴国が舵取りを失い、衰退する事を望んでいるわけではない。リヒャルト殿下が帰還された後、貴国が益々隆盛される事を望んでいる。リヒャルト殿下が不在の今、それができるのは、殿下だけだと、我々は考えている。
クリストフ殿下、リヒャルト殿下不在のエーデルシュタインをよろしくお願いする。リヒャルト殿下については、ロザリアの第6月に解放する予定である。それまで殿下には、国を上手く治め、より強固な体制を整えていただきたい。
我々は、貴国の信頼に足る、盟友である。例え貴国の王が誰であろうとも、我々は貴国の信頼に足る盟友となるであろう事を、此処に約束しよう。
中原暦6625年 ガリエルの第5月
ティグリ族 族長 グラシアノ
―――
エーデルシュタイン王国の首都ヴェルツブルグ。その日、王城に届いた1通の手紙が、王国を震撼させた。玉座の間において、大勢の重臣達がざわめき、宰相のゲラルト・フォン・ドッペルバウアーでさえ、半ば呆然としたまま呟く他になかった。
「皆さん、遅くなりました」
不安に満たされた玉座の間に澄み渡る男性の声が響き、重臣達は一斉に扉へと振り向く。重臣達の視線の先には、一人の年若い男が、重臣達の誰よりも颯爽とした姿で玉座へと歩み寄っていた。
「殿下!」
重臣達を代表して、ゲラルトが若い男に声をかける。殿下と呼ばれた男は、目鼻立ちの整った魅力的な顔をゲラルトへと向け、神妙に頷いた。
「ゲラルト、陛下のご容態は?」
「はい。正直に申しまして、芳しくありません。今朝届いた手紙を見た途端に卒倒され、未だお目覚めになりません」
「そうですか…」
ゲラルトから報告を受けたクリストフは俯き、沈痛な面持ちをする。だが、すぐに顔を上げると、ゲラルトに向けて口を開いた。
「それで、その手紙はどこに?」
「こちらに。殿下にも直接届いたと伺いましたが」
「ええ。同じ内容か、拝見させて下さい」
クリストフの求めに応じ、ゲラルトが手紙を差し出す。クリストフは手紙を受け取ると、その場で開き、素早く目を通した。
―――
エルフ ティグリ族 族長から、エーデルシュタイン国王へ、書を奉る。
貴国、並びにカラディナ共和国が遣わした軍により、我らがエルフ八氏族は、未曽有の国難を迎えた。だが、幸いにしてサーリア様の御加護により、我らは貴軍の暴虐を打ち破り、祖国たる大草原に安寧を取り戻す事ができた。
我々エルフと貴国はガリエルとの永年の戦いでともに肩を並べる盟友であると信じていたが、此度の貴国の軽率な行動により、その友誼に深刻な亀裂が生じたと云わざるを得ない。
此度の厄災により我ら八氏族の一つモノは壊滅し、一族ことごとく大草原の露と消え、貴国らが遣わした兵35,000も異郷の地に斃れた。我々は、この様な不幸を招いた貴国の妄動を非難するとともに、十分な説明を求める。
だが、我々はそれでも、貴国が信頼に足る盟友であると信じている。我々は、此度の不幸はガリエルによる悪辣な策謀によって齎されたものと判断している。お互いのすれ違いによって、双方とも取り返しのつかない損害を被ってしまったが、我々と貴国は、立ち向かうべき敵を誤ってはいけない。立ち向かうべき相手は、ガリエルなのだ。
我々は、その根幹を守るためであれば、モノを襲った不幸でさえも水に流す覚悟ができている。貴国が真の盟友であれば、我々の覚悟をきっと理解し、我々と同じ英断を下すであろうと信じている。
現在我々は、陛下の長子、リヒャルト殿下をお預かりしている。我々はリヒャルト殿下を通じ、お互いの蟠りを解きほぐす事が、何よりも肝要であると考えている。殿下にはすでに我々の真意をご理解いただき、暫くの間我々と生活を共にし、友好への橋渡しを担っていただく事で、ご快諾いただいた。
殿下の身の安全は、貴国が再び信義に反する行動を取らない限り、お約束する。
我々は、貴国と再び肩を並べ、ガリエルと戦う日が来る事を、切に願う所存である。
中原暦6625年 ガリエルの第5月
ティグリ族 族長 グラシアノ
―――
「…ふぅ」
「殿下…」
クリストフが手紙を読み、大きく息をつく。ゲラルトが焦れた様に声をかけると、クリストフは頭を上げ、ゲラルトに語り掛けた。
「…私に届いた内容と同じですね。西誅は失敗し、兄上が虜囚の身となりました」
「殿下…」
クリストフの言葉を聞き、ゲラルトが声を詰まらせる。ゲラルトも理解はしていたが、改めてクリストフの口から齎された衝撃は、些かも緩和されていなかった。
派遣した軍の半数が戦死し、王太子が捕虜となった。エーデルシュタイン史上最大の惨事である。特に、王太子もさる事ながら、軍の損害は深刻である。エーデルシュタインが保持する戦力は、正規兵及びハンター合計で約10万。そのうち4万を派遣して、半数が戦死したのだ。残りの6万は、ガリエルへの備えと国体の維持に必要であり、安易に動かせるものではない。残存する2万が帰還しない限り、予備兵力さえも存在しない、危機的状況と言えた。
「こんな事になろうとは…。私もあの時、もっと強く諫めるべきでした…」
クリストフが眉間に手を当てて、揉みしだく。ゲラルトが縋るように眺める中、やがてクリストフが眉間から手を離し、口を開いた。
「ゲラルト、まずは国内の動揺を抑える事が急務です。我が国は盤石で、此度の不幸に際し些かも揺らぐ事はないと、内外に知らしめて下さい。私は、教皇猊下に拝謁し、今後の対応を協議して参ります」
「はっ、畏まりました」
***
「猊下、本日はご多忙の中お時間をいただき、誠にありがとうございます」
「いえ。今や、この件に勝る重要事項など、ありません」
教会に向かったクリストフは、早々に教皇フランチェスコの許へと通され、二人は挨拶もそこそこに本題へと入った。
「猊下は此度の不幸に対し、どの様に対処されるのがよろしいと、お考えでしょうか?」
「…」
クリストフの質問に対し、フランチェスコはすぐには答えない。クリストフから視線を外したまま、眉間に皴を寄せ、難しい顔をしている。クリストフは、暫くの間フランチェスコの言葉を待っていたが、フランチェスコから回答が得られないと判断すると、控えめに口を開いた。
「猊下、僭越ながら、私の意見を申し上げてもよろしいでしょうか?」
「…どうぞ」
フランチェスコの了承を得たクリストフは神妙に頷き、意見を述べる。
「猊下、此度の戦によって、中原、エルフはともに多大な損害を被りました。北伐で発生した背信行為は、確かに赦されざる所業であります。しかし、今が、中原とエルフが一体となれる、最後の機会です。今この機会を逃せば、人族とエルフは不倶戴天の敵となり、ガリエルの思う壺となります。幸いエルフもそれに気づいており、自ら流した血を顧みる事なく、我々に手を差し伸べています。この手を払っては、いけません。我々は此度の戦で数万にも及ぶ兵を失い、その上セント=ヌーヴェルも回復の途上です。この上さらにガリエルとエルフの挟撃を受ければ、中原は終わりです。猊下の御心痛は察するに余りありますが、ここは人族のため、曲げてお願いします」
「…しかし、貴国は、それで治まるのですか?」
クリストフの説明を聞いたフランチェスコは顔を上げ、懸念を表明する。エーデルシュタインは、軍の半数を失い、王太子が虜囚の憂き目にあった。このままでは、内外ともに面子が立たない。
しかし、フランチェスコの懸念にもクリストフは動じず、力強く頷いた。
「私が、抑えます。中原の運命を左右する一大事です。我が国の面子など、かかずらうべきではありません」
「…わかりました」
クリストフの目に宿る決意を見たフランチェスコは、大きく息をつき、顔を上げる。
「…教会とカラディナについては、私が抑えます。殿下は、エーデルシュタインをしっかりと抑えていただき、事態がこれ以上深刻にならないよう、お願いします」
「畏まりました。お任せ下さい」
***
フランチェスコの許を辞し、王城に戻ったクリストフは、並び立つ重臣達に次々と指示を飛ばし、対策を講ずる。その日、王城は夜遅くまで灯がともり、多くの人々が駆けずり回っていた。
「…ふぅ」
日付が変わろうとする頃、クリストフはようやく自分の執務室へと戻り、一息つく。彼は近侍を呼び、ワインとつまみを持って来させると、執務席に座り、一人でグラスを傾けた。
「…」
クリストフは右手でワイングラスを持ったまま、左手で机の上に広がる手紙を取り、再び目を走らせる。その瞳には、この事態を楽しむ様な光があった。
―――
エルフ ティグリ族 族長から、エーデルシュタイン クリストフ王子へ、書を奉る。
貴国、並びにカラディナ共和国が遣わした軍により、我らがエルフ八氏族は、未曽有の国難を迎えた。
幸いにしてサーリア様の御加護により、我らは貴軍の暴虐を打ち破り、祖国たる大草原に安寧を取り戻す事ができたが、我らが八氏族の一つモノは壊滅して一族ことごとく大草原の露と消え、貴国らが遣わした兵35,000も異郷の地に斃れた。また、貴殿の兄上、リヒャルト殿下の身も、我々がお預かりしている。
我々は貴国との間にこれ以上決定的な亀裂を生み、不倶戴天の敵同士となる様な事態は、望んでいない。我々は再び肩を並べ、ガリエルと相対する盟友になれると、信じている。そのため、リヒャルト殿下には暫くの間我々と生活を共にし、貴国との友好の懸け橋となっていただく。
クリストフ殿下には、その間、貴国の安寧をお願いしたい。我々はリヒャルト殿下を留め置く事で、貴国が舵取りを失い、衰退する事を望んでいるわけではない。リヒャルト殿下が帰還された後、貴国が益々隆盛される事を望んでいる。リヒャルト殿下が不在の今、それができるのは、殿下だけだと、我々は考えている。
クリストフ殿下、リヒャルト殿下不在のエーデルシュタインをよろしくお願いする。リヒャルト殿下については、ロザリアの第6月に解放する予定である。それまで殿下には、国を上手く治め、より強固な体制を整えていただきたい。
我々は、貴国の信頼に足る、盟友である。例え貴国の王が誰であろうとも、我々は貴国の信頼に足る盟友となるであろう事を、此処に約束しよう。
中原暦6625年 ガリエルの第5月
ティグリ族 族長 グラシアノ
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