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ここは何処

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身支度が整いこのまま玄関へ案内してもらえると思っていた。リリーさんに案内されるままついていった先には料理と目覚めた時にいたイケメンで名前は確かクラレンス様。


「クラレンス様、レミ様の御用意整いました。」

「あぁ、ご苦労様」

「レミ、どうぞこちらへ」

「え、いやあの、私ここまでもてなして頂けるような事は何も…」

有無を言わせない笑顔でエスコートされる。

「時間も遅くなってしまいましたので、この家を出ていくのは明日にしたほうがよろしいと思います。幸いこの家は空き部屋ばかりなのでお気になさらず泊まっていって下さい。」

「そうですか…では礼を言わせて下さい。お洋服、食事、泊まる場所まで準備頂きありがとうございます。えぇっと、クラレンス様…と呼んでもいいのでしょうか?」

「お好きにお呼びください。呼び捨てしていただいても構いませんよ。」

「いえ、親しき仲にも礼儀ありと言いますのでクラレンス様と呼ばせていただきます。」


食事にしましょうとクラレンス様の一言で会話は終了した。ぶちゃけてしまえばめちゃくちゃラッキーである。夢オチかもしれないこのリアルな夢で料理も寝る場所も確保できた上出来だと思う。明日からどうするかは後で考えるとして今は食事集中しよう。テーブルマナーはなんとなく昔学校で習ったものしかわからないけど問題ないだろうか。クラレンス様を盗み見ると両端からフォークやナイフを使っているので問題なさそうだ。


「………っ」


高級レストラン並の見た目の料理に反して味が不味い。いや、薄い。できれば食べたくないけど、おもてなしされている側なのだから飲み込まなくては…。


「レミ、食事はいかがでしょうか?」

「そうですね、初めて食べる味がします。」

「この料理は伝統料理で、昔から親しまれているものなんです。」

「あ、あぁ、だから優しい味がするんですね…!」


そのまま私はクラレンス様の解説付き不味いフルコースを味わうことになった。何の手も入っていない果物がデザートだったことだけが幸せ。そして食事が終わり次第、お風呂へ通され、部屋へ案内してもらった。


「レミ様、こちらが今日お泊りになる部屋でございます。私はこれにて失礼いたします、おやすみなさいませ。」


「リリー様、案内していただきありがとうございます。」


私が目を覚ましてから何かとリリーさんに助けられっぱなしである。とりあえずお礼を言っておけば印象も悪くならないだろう。


「レミ様、私はただのメイドでございます。クラレンス様のように様付してはなりません。分不相応です。」

「そうでしたか。あまり礼儀作法分からなくて…ではリリーさんとお呼びしてもいいですか?」

「レミ様のお好きなようにお呼びください。」

「ありがとうございます。」


身分制度はありそうな気はしてたけど本当にあるものなのか。リリーさんは凄い美人なのにメイドやっているなんてどんな世界だ…。異世界的なことはそこそこ満喫したし、これで寝れば流石に現実に戻っているに違いない、そう願いを込めておやすみなさい。
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