名犬アレク

７．桜舞うお散歩日和

おはよう、ご主人。今日もお散歩に行くぞ。

まためんどくさいって言ってるな。

わんわん！　わんわん！

ほら、紐をちゃんと持て。袋は持ったか？　お水は無くてもいいけど持って行くんだろ。

よし、俺に付いてこい！


テクテク、テクテク。

今日も空は広くて、お日さまがまぶしいな。

草の匂い、土の匂い、お花の匂い。

俺、どれも大好きだ。

テクテク、テクテク。

ちゃんとご主人が付いてきているか、振り返って確認。

よしよし、ちゃんといるな。

テクテク、テクテク。

あれ、ご主人。

いつもと違う道だ。前にもこんなことあったなぁ。

なんだっけ？　まぁいいや。


俺の横をブォ～って車が通り過ぎて行く。

車はよくわからないけど、変な匂いをさせて走る箱だ。

テクテク、テクテク。

――あれ、いつもと違う匂いがしてきた。

なんの匂いだろう。

あっ、俺知ってる。これ、桜だ。

見上げると桜の花が咲いていた。

空が桜でいっぱいになっている。すごいすごい。

ふわりと風に乗って花びらが俺の鼻にくっついた。

ブルブルブルブル！

ブルブルしたけど花びらは落ちない。

ご主人が俺を見て笑って、スマホを俺に向けた。

カシャっと音がする。

満足そうな顔をしたご主人が、花びらをつまんで取ってくれた。


俺はふたたび歩き出す。

テクテク、テクテク。

お散歩は楽しいな、ご主人。

テクテク、テクテク。

次はどの道に行く？

どこだって俺はご主人と一緒だからな。

ちゃんと付いてくるんだぞ。