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9章:宣戦布告
24.女騎士イリス
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庭園の薔薇の花のように赤い鎧を身にまとった女騎士は、イリスと名乗った。
「さぁ、お二人とも。こちらの部屋へどうぞ。すぐに着替えをお持ちいたしましょう」
「すまん、イリス」
「いえ……まさかジュリアス様とお会いできるとは思いませんでした」
どうやら、二人は知り合いらしい。
彼女が部屋から出たので、師匠に彼女とどういう知り合いなのかを聞いてみた。
「イリスはアバンティに仕える騎士団の団員だ。俺も何度か会ったことがある程度だったが……」
「アバンティ……もしかしてここがアバンティ王子のお城ですか?」
「あぁ。城の中庭に転送できたまでは良かったんだが……ヘックション!」
師匠は盛大にくしゃみをした。
戻ってきたイリスさんから着替えを借りて、温かい飲み物をもらう。
「イリスさん、すみません」
「いえ、お気になさらず。お召し物はすぐに洗濯がすみますからどうかご安心なさってくださいね」
「ありがとうございます」
「ところで、あなたは……初めてお会いしますが?」
「はい、メイ・マリネールと申します。ジュリアス・フェンサーの弟子です」
「あら、ジュリアス様は、お弟子さんをお迎えになったんですね。メイさん、どうぞよろしく。私はアバンティ騎士団のイリス・ケリーです」
イリス・ケリー。ケリーってどこかで聞いたような……
「イリスは、アガレス将軍の娘だ」
私の表情を読み取った師匠が補足した。あぁ、爺やさんの娘さんなんだ。そういえばなんとなく優しそうな顔立ちが似てるかも。
「さて。いきなりですまんが、アバンティに会わせてもらえるか?」
師匠が本題を切り出すと、イリスさんは少し戸惑った表情をした。
「戦争を止めに来たのですか?」
「そうだ。急に反旗を翻すなんて、いったいアバンティに何があったんだ?」
師匠の問いに、彼女は目を伏せる。
「……わかりません。でもアバンティ様は、最近になって怪しい黒ずくめのローブの者達を宮廷に招き入れるようになったのです」
「黒ずくめのローブの者達?」
「はい。その者たちが出入りするようになってから城の中は一変しました。軍備を増強し、ついには国王様に反旗を翻すことになったのです」
「誰も止めなかったのか」
「家臣達もだんだんアバンティ様に感化されていったのです。でも末端の兵士達や領民達は困惑しています」
「民意ではなく、アバンティの意思ということか」
「はい……まさかアバンティ様がそんな恐ろしいことを考えていらっしゃったなんて……」
イリスさんの瞳から一筋、涙が零れ落ちた。
「――あいつはそんなやつじゃない」
師匠は、そうつぶやきながら銀色の杖を撫でる。
「俺とホワイティ、そしてアバンティは、同じ師匠の下で一緒に魔法の修行してたんだ」
師匠と王子様たちが、一緒に魔法の修行をしていた……だから、師匠はホワイティさんと対等に接してるんだ。
「よくアバンティは“弟達を守る力が欲しくて魔法の修行をしてる”って言ってたよ。弟たちを守るのは自分だ、って。――そんなやつがなんで弟達に戦争をしかけてるんだ。おかしいじゃねぇか」
「ジュリアス様……」
「俺がアバンティを止める。だから、会わせてくれ」
師匠の真剣な瞳に、イリスさんは静かに頷いた。
「さぁ、お二人とも。こちらの部屋へどうぞ。すぐに着替えをお持ちいたしましょう」
「すまん、イリス」
「いえ……まさかジュリアス様とお会いできるとは思いませんでした」
どうやら、二人は知り合いらしい。
彼女が部屋から出たので、師匠に彼女とどういう知り合いなのかを聞いてみた。
「イリスはアバンティに仕える騎士団の団員だ。俺も何度か会ったことがある程度だったが……」
「アバンティ……もしかしてここがアバンティ王子のお城ですか?」
「あぁ。城の中庭に転送できたまでは良かったんだが……ヘックション!」
師匠は盛大にくしゃみをした。
戻ってきたイリスさんから着替えを借りて、温かい飲み物をもらう。
「イリスさん、すみません」
「いえ、お気になさらず。お召し物はすぐに洗濯がすみますからどうかご安心なさってくださいね」
「ありがとうございます」
「ところで、あなたは……初めてお会いしますが?」
「はい、メイ・マリネールと申します。ジュリアス・フェンサーの弟子です」
「あら、ジュリアス様は、お弟子さんをお迎えになったんですね。メイさん、どうぞよろしく。私はアバンティ騎士団のイリス・ケリーです」
イリス・ケリー。ケリーってどこかで聞いたような……
「イリスは、アガレス将軍の娘だ」
私の表情を読み取った師匠が補足した。あぁ、爺やさんの娘さんなんだ。そういえばなんとなく優しそうな顔立ちが似てるかも。
「さて。いきなりですまんが、アバンティに会わせてもらえるか?」
師匠が本題を切り出すと、イリスさんは少し戸惑った表情をした。
「戦争を止めに来たのですか?」
「そうだ。急に反旗を翻すなんて、いったいアバンティに何があったんだ?」
師匠の問いに、彼女は目を伏せる。
「……わかりません。でもアバンティ様は、最近になって怪しい黒ずくめのローブの者達を宮廷に招き入れるようになったのです」
「黒ずくめのローブの者達?」
「はい。その者たちが出入りするようになってから城の中は一変しました。軍備を増強し、ついには国王様に反旗を翻すことになったのです」
「誰も止めなかったのか」
「家臣達もだんだんアバンティ様に感化されていったのです。でも末端の兵士達や領民達は困惑しています」
「民意ではなく、アバンティの意思ということか」
「はい……まさかアバンティ様がそんな恐ろしいことを考えていらっしゃったなんて……」
イリスさんの瞳から一筋、涙が零れ落ちた。
「――あいつはそんなやつじゃない」
師匠は、そうつぶやきながら銀色の杖を撫でる。
「俺とホワイティ、そしてアバンティは、同じ師匠の下で一緒に魔法の修行してたんだ」
師匠と王子様たちが、一緒に魔法の修行をしていた……だから、師匠はホワイティさんと対等に接してるんだ。
「よくアバンティは“弟達を守る力が欲しくて魔法の修行をしてる”って言ってたよ。弟たちを守るのは自分だ、って。――そんなやつがなんで弟達に戦争をしかけてるんだ。おかしいじゃねぇか」
「ジュリアス様……」
「俺がアバンティを止める。だから、会わせてくれ」
師匠の真剣な瞳に、イリスさんは静かに頷いた。
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