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6章:授業参観
19.転送魔法
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「――さ、さて。今日は最後に魔法陣を二箇所設置して、物を移動させる実験をしますよ」
先生は教卓の上に一枚の魔法陣が書かれた羊皮紙を置いて、もう一枚を教室の端に置いた。
教卓の魔法陣の上には先生の教科書が一冊置かれる。
「さぁ皆さん。今からこの教科書が教室の端の魔法陣へと瞬間移動しますよ~」
先生はそう言って転送の呪文を詠唱し始めた。
しかし様子がおかしい。教科書は光の渦に巻き込まれて消えたが、教室の魔法陣からそれが出現しない。
それどころか、魔法陣は真っ赤な怪しい光に包まれている。
「あれは……皆、危ないから魔法陣から離れるんだ!」
後方から危険を察知したホワイティ王子の声が教室に響いた。
その瞬間。魔法陣から角と翼を生やした牛のような巨大な魔物が現れて天井に向かってウォォォォォと咆哮をあげる。
「――天の鎖、ヘブンズチェイン!」
近くにいた先生に魔物が襲い掛かろうとしたその時、金色に輝く魔法の鎖が魔物を絡め取った。
ホワイティ王子がドレスを翻してすばやく前に進み出て、鎖をさらに締め上げる。
「ジュリィ! 後は頼んだ!」
「おぅ、任せろ!」
同じように前に進みでていた師匠が、ドレスと同じ真っ赤なヒールをはいたまま跳躍して机の上に飛び乗り、銀色の杖を魔物に向ける。
「氷の弾丸!」
師匠の声に呼応するように杖の先がキラリと輝いて、鋭い氷柱が勢いよく発射された。
それが魔物の眉間を貫通すると、鎖から逃れようとしていた魔物の目から光が消えて、ぴくりとも動かなくなる。
魔物の脅威が去ったことを皆が認識した瞬間、周囲から歓声が上がった。
そしてタイミングよく、授業の終わりをつげるチャイムが鳴る。
「……いやぁ、お二方、本当に助かりました。とっさの機転に感謝いたしますぞ」
先生は、ホワイティ王子と師匠に握手を求めた。どうやら先生は二人の正体に気付いていないらしい。
「いえいえ、僕は当然のことをしたまでですよ」
「……しかし、ずいぶん危ない実験をしたもんだな」
師匠が教室の端に残った魔法陣の羊皮紙を手に取って、険しい表情をした。
「おい、これは転送魔法の魔法陣じゃねぇぞ。別の場所から何かを召喚する魔法陣だ」
「なんと……どうやら準備段階で手違いがあったようです。大変申し訳ありません」
「手違いって、そんな簡単におきるもんじゃねぇだろ――」
師匠が何かを探すようにギロリと教室内を睨みつけた。
その眼光の鋭さに生徒達からヒィッと悲鳴があがる。
「……まぁまぁ、ジュリィ。原因追求は僕らの役目じゃないから先生にお任せしようじゃないか」
ホワイティ王子が、そう言ってにこやかに師匠をなだめた。
「――まぁ確かに、今日は授業参観に来ただけだしな」
師匠はあっさりと引き下がり、ホワイティ王子と一緒にコツコツとヒールの音をさせて父兄の並ぶ教室の後ろへと戻ろうとする。
「さて、授業も終わったし帰るか」
「せっかくだから僕……じゃなかった、お母さん達と一緒に帰りましょうね~」
あきらかに二人の視線は私に向いている。
周囲もそのせいで、この女装した男達が誰の保護者なのか察知したようだ。
ただでさえ視線が集まって恥ずかしいのに、一緒に帰るとか絶対嫌すぎる。
「あっ……、授業終わったし、私失礼しますっ!」
私はとっさにさっき習ったばかりの転送魔法を自分自身に唱えて、教室から離脱した。
普段の私ならそんな難しい魔法は上手くいかないはずだけど、よっぽど必死だったのか無事校舎の外に移動できた。
でも結局「メイちゃんには怖い女装の保護者がいる」という噂が学校中に広まってしまったのは言うまでもなかった。
先生は教卓の上に一枚の魔法陣が書かれた羊皮紙を置いて、もう一枚を教室の端に置いた。
教卓の魔法陣の上には先生の教科書が一冊置かれる。
「さぁ皆さん。今からこの教科書が教室の端の魔法陣へと瞬間移動しますよ~」
先生はそう言って転送の呪文を詠唱し始めた。
しかし様子がおかしい。教科書は光の渦に巻き込まれて消えたが、教室の魔法陣からそれが出現しない。
それどころか、魔法陣は真っ赤な怪しい光に包まれている。
「あれは……皆、危ないから魔法陣から離れるんだ!」
後方から危険を察知したホワイティ王子の声が教室に響いた。
その瞬間。魔法陣から角と翼を生やした牛のような巨大な魔物が現れて天井に向かってウォォォォォと咆哮をあげる。
「――天の鎖、ヘブンズチェイン!」
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ホワイティ王子がドレスを翻してすばやく前に進み出て、鎖をさらに締め上げる。
「ジュリィ! 後は頼んだ!」
「おぅ、任せろ!」
同じように前に進みでていた師匠が、ドレスと同じ真っ赤なヒールをはいたまま跳躍して机の上に飛び乗り、銀色の杖を魔物に向ける。
「氷の弾丸!」
師匠の声に呼応するように杖の先がキラリと輝いて、鋭い氷柱が勢いよく発射された。
それが魔物の眉間を貫通すると、鎖から逃れようとしていた魔物の目から光が消えて、ぴくりとも動かなくなる。
魔物の脅威が去ったことを皆が認識した瞬間、周囲から歓声が上がった。
そしてタイミングよく、授業の終わりをつげるチャイムが鳴る。
「……いやぁ、お二方、本当に助かりました。とっさの機転に感謝いたしますぞ」
先生は、ホワイティ王子と師匠に握手を求めた。どうやら先生は二人の正体に気付いていないらしい。
「いえいえ、僕は当然のことをしたまでですよ」
「……しかし、ずいぶん危ない実験をしたもんだな」
師匠が教室の端に残った魔法陣の羊皮紙を手に取って、険しい表情をした。
「おい、これは転送魔法の魔法陣じゃねぇぞ。別の場所から何かを召喚する魔法陣だ」
「なんと……どうやら準備段階で手違いがあったようです。大変申し訳ありません」
「手違いって、そんな簡単におきるもんじゃねぇだろ――」
師匠が何かを探すようにギロリと教室内を睨みつけた。
その眼光の鋭さに生徒達からヒィッと悲鳴があがる。
「……まぁまぁ、ジュリィ。原因追求は僕らの役目じゃないから先生にお任せしようじゃないか」
ホワイティ王子が、そう言ってにこやかに師匠をなだめた。
「――まぁ確かに、今日は授業参観に来ただけだしな」
師匠はあっさりと引き下がり、ホワイティ王子と一緒にコツコツとヒールの音をさせて父兄の並ぶ教室の後ろへと戻ろうとする。
「さて、授業も終わったし帰るか」
「せっかくだから僕……じゃなかった、お母さん達と一緒に帰りましょうね~」
あきらかに二人の視線は私に向いている。
周囲もそのせいで、この女装した男達が誰の保護者なのか察知したようだ。
ただでさえ視線が集まって恥ずかしいのに、一緒に帰るとか絶対嫌すぎる。
「あっ……、授業終わったし、私失礼しますっ!」
私はとっさにさっき習ったばかりの転送魔法を自分自身に唱えて、教室から離脱した。
普段の私ならそんな難しい魔法は上手くいかないはずだけど、よっぽど必死だったのか無事校舎の外に移動できた。
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