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season3
154話:ジェルの反応
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店の扉は開けると大きな音がしてしまうから、別のところから入ったほうが良さそうだ。
俺は音を立てないように静かに外側から自分の部屋に回りこんだ。
窓は鍵が開いているから簡単に入れる。
「よし、まずは第一段階クリアだな」
部屋の中に鏡があったので試しに自分の姿を見てみたが、本棚や壁が見えるだけで俺の姿は映らなかった。
鏡に映らないというのは、なんとも不思議な感覚だ。
ジェルを探しがてらリビングを通りかかると、ソファの上に座ってテレビを観ているキリトの姿があった。
中身こそ俺と同じオタク男子だが、外見は小さなテディベアだからとても可愛らしい。
――よし、まずはキリトを脅かしてやろう。
テーブルには漫画が積まれていて一緒にパン男ロボのおもちゃが置いてある。
今朝、俺が片付けずに置いていったやつだ。
キリトは、まったくこっちに気づかずにテレビに集中している。
俺はパン男ロボを手にとって、彼の目の前に近づけてみた。
「わっ、なんでありますか⁉」
キリトの目には、急にパン男ロボが宙に浮いて近づいてきたみたいに見えたはずだ。
「ロボが浮いて……ひぇぇぇえ!」
驚く彼にさらに見せ付けるように、俺は空中でロボをぶん回した。
「ポルターガイストであります! 幽霊でありますか⁉ 怖いであります!」
――いや、幽霊はキリトの方なんだが。
彼は慌ててクッションの下に逃げ込んでしまった。
本気で怖がってるみたいだし、可哀想だからネタばらししてやるか。
俺はクッションに顔を近づけてささやいた。
「キリト、俺だ。アレクだ」
「……アレク氏⁉」
「しっ、声がでけぇ。静かにしろ」
「アレク氏、死んじゃったでありますか? 早く成仏するであります」
「意外とドライなんだな」
お兄ちゃんはキリトが成仏した時は悲しかったんだけどなぁ……と思いつつ、状況を説明した。
「最新式の天狗の隠れ蓑でありますか? 姿がまったく見えないであります」
「すげぇだろ。今からジェルを驚かせてくるから、キリトは静かにしてろよ?」
「了解であります。あっ、ジェル氏がこっちに来るでありますよ!」
足音がして、ジェルが洗濯かごを抱えてリビングに入ってきた。
どうやらテラスで洗濯物を干すつもりらしい。
我が家の洗濯機は乾燥機もついてるのに、どうしたんだろうか。
「もう、またこんなに散らかして……」
ジェルは、テーブルの上に乱雑に積まれた漫画とロボを見て顔をしかめた。
「小生ではないであります。アレク氏であります」
「えぇ、わかってますよ。後で片付けておきますかねぇ……はぁ」
「ジェル氏、お洗濯でありますか?」
キリトの問いかけに、ジェルは洗濯かごの中身を彼の方に見せた。
俺のビキニパンツが10枚くらい入っている。
後で洗おうと思って置いておいたやつだ。
「アレクが悪趣味なパンツをそのままにしておくから、気になって洗ったんですけど……このパンツ、ラメやスパンコールのせいで手洗い必須だし、乾燥機が使えないからめんどくさいんですよねぇ。洗濯は自分でしなさいって言ったのに、今日も山に出かけるからって居なくなるし――」
「ジェル氏はダメ男製造機であります」
キリトが辛らつな言葉をボソッと吐いたが、ジェルはそれに気づかず延々愚痴を言いながら、テラスの方へ歩いて行った。
俺も音をたてないようにこっそり後を付いていく。
「さて、しょうがないから干しますかね……」
――よし、ジェルの前でこのギラギラパンツを宙に浮かせて驚かせてやろう。
そう思って洗濯かごに手をつっこんだその時。
「いやぁぁぁ!!!! パンツが宙に!」
……えっ、俺まだ何もしてないんだけど。
とっさに自分の股間を見たら、なぜかギラギラ光るパンツが見えた。
俺が今はいているやつだ。
なんで? なんでだ。なぜかそこだけ中途半端な透け方なのかパンツだけが見えている。
もしかしてバッテリーが切れかけてるのか?
「またパンツに命が宿ったんですかね……忌々しい!」
「まて、ジェル。誤解だ、俺だよ! アレクだ!」
「アレクの声でしゃべってる! やっぱり命が宿ったんですね!」
「違うって!」
俺はとっさに隠れ蓑を脱ごうとした。
でもこれ、着るときもめちゃくちゃ苦労したから脱ぐのも簡単じゃねぇんだ。
うぇぇぇぇ、どうしよう。
「またワタクシのことを狙っているんですね……ギラパンは死すべし!!!!」
ジェルは立てかけてあった布団叩きを手にして、俺の股間めがけて思いっきり振りかぶった。
バシンッ!!!!
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!」
……股間の痛みに、ただうずくまることしかできない。もうダメだ。
神様、これからはちゃんと自分でパンツ洗うから助けてくれ!
すると次の瞬間、俺の体は風に包まれてあっと言う間に空を飛んだ。
気が付くとそこは山の頂上で、天狗さんが目の前に居る。
「すまん、バッテリーの充電が不十分であったようだ」
「マジかよ……おかげで酷い目にあったぞ」
「おかげで貴重なデータが取れた。感謝する」
隠れ蓑は、天狗さんに手伝ってもらって無事に脱ぐことができた。
あぁ、助かった。
「では、家に送ってしんぜよう」
「おぉー、ありがとなー!」
この時、俺はまったく考えてなかったんだ。
キリトがジェルにネタばらししたせいで、ジェルがお説教する気満々で待ち構えていることを。
それに気づいたときには俺の体は再び、空を飛んでいた。
俺は音を立てないように静かに外側から自分の部屋に回りこんだ。
窓は鍵が開いているから簡単に入れる。
「よし、まずは第一段階クリアだな」
部屋の中に鏡があったので試しに自分の姿を見てみたが、本棚や壁が見えるだけで俺の姿は映らなかった。
鏡に映らないというのは、なんとも不思議な感覚だ。
ジェルを探しがてらリビングを通りかかると、ソファの上に座ってテレビを観ているキリトの姿があった。
中身こそ俺と同じオタク男子だが、外見は小さなテディベアだからとても可愛らしい。
――よし、まずはキリトを脅かしてやろう。
テーブルには漫画が積まれていて一緒にパン男ロボのおもちゃが置いてある。
今朝、俺が片付けずに置いていったやつだ。
キリトは、まったくこっちに気づかずにテレビに集中している。
俺はパン男ロボを手にとって、彼の目の前に近づけてみた。
「わっ、なんでありますか⁉」
キリトの目には、急にパン男ロボが宙に浮いて近づいてきたみたいに見えたはずだ。
「ロボが浮いて……ひぇぇぇえ!」
驚く彼にさらに見せ付けるように、俺は空中でロボをぶん回した。
「ポルターガイストであります! 幽霊でありますか⁉ 怖いであります!」
――いや、幽霊はキリトの方なんだが。
彼は慌ててクッションの下に逃げ込んでしまった。
本気で怖がってるみたいだし、可哀想だからネタばらししてやるか。
俺はクッションに顔を近づけてささやいた。
「キリト、俺だ。アレクだ」
「……アレク氏⁉」
「しっ、声がでけぇ。静かにしろ」
「アレク氏、死んじゃったでありますか? 早く成仏するであります」
「意外とドライなんだな」
お兄ちゃんはキリトが成仏した時は悲しかったんだけどなぁ……と思いつつ、状況を説明した。
「最新式の天狗の隠れ蓑でありますか? 姿がまったく見えないであります」
「すげぇだろ。今からジェルを驚かせてくるから、キリトは静かにしてろよ?」
「了解であります。あっ、ジェル氏がこっちに来るでありますよ!」
足音がして、ジェルが洗濯かごを抱えてリビングに入ってきた。
どうやらテラスで洗濯物を干すつもりらしい。
我が家の洗濯機は乾燥機もついてるのに、どうしたんだろうか。
「もう、またこんなに散らかして……」
ジェルは、テーブルの上に乱雑に積まれた漫画とロボを見て顔をしかめた。
「小生ではないであります。アレク氏であります」
「えぇ、わかってますよ。後で片付けておきますかねぇ……はぁ」
「ジェル氏、お洗濯でありますか?」
キリトの問いかけに、ジェルは洗濯かごの中身を彼の方に見せた。
俺のビキニパンツが10枚くらい入っている。
後で洗おうと思って置いておいたやつだ。
「アレクが悪趣味なパンツをそのままにしておくから、気になって洗ったんですけど……このパンツ、ラメやスパンコールのせいで手洗い必須だし、乾燥機が使えないからめんどくさいんですよねぇ。洗濯は自分でしなさいって言ったのに、今日も山に出かけるからって居なくなるし――」
「ジェル氏はダメ男製造機であります」
キリトが辛らつな言葉をボソッと吐いたが、ジェルはそれに気づかず延々愚痴を言いながら、テラスの方へ歩いて行った。
俺も音をたてないようにこっそり後を付いていく。
「さて、しょうがないから干しますかね……」
――よし、ジェルの前でこのギラギラパンツを宙に浮かせて驚かせてやろう。
そう思って洗濯かごに手をつっこんだその時。
「いやぁぁぁ!!!! パンツが宙に!」
……えっ、俺まだ何もしてないんだけど。
とっさに自分の股間を見たら、なぜかギラギラ光るパンツが見えた。
俺が今はいているやつだ。
なんで? なんでだ。なぜかそこだけ中途半端な透け方なのかパンツだけが見えている。
もしかしてバッテリーが切れかけてるのか?
「またパンツに命が宿ったんですかね……忌々しい!」
「まて、ジェル。誤解だ、俺だよ! アレクだ!」
「アレクの声でしゃべってる! やっぱり命が宿ったんですね!」
「違うって!」
俺はとっさに隠れ蓑を脱ごうとした。
でもこれ、着るときもめちゃくちゃ苦労したから脱ぐのも簡単じゃねぇんだ。
うぇぇぇぇ、どうしよう。
「またワタクシのことを狙っているんですね……ギラパンは死すべし!!!!」
ジェルは立てかけてあった布団叩きを手にして、俺の股間めがけて思いっきり振りかぶった。
バシンッ!!!!
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!!」
……股間の痛みに、ただうずくまることしかできない。もうダメだ。
神様、これからはちゃんと自分でパンツ洗うから助けてくれ!
すると次の瞬間、俺の体は風に包まれてあっと言う間に空を飛んだ。
気が付くとそこは山の頂上で、天狗さんが目の前に居る。
「すまん、バッテリーの充電が不十分であったようだ」
「マジかよ……おかげで酷い目にあったぞ」
「おかげで貴重なデータが取れた。感謝する」
隠れ蓑は、天狗さんに手伝ってもらって無事に脱ぐことができた。
あぁ、助かった。
「では、家に送ってしんぜよう」
「おぉー、ありがとなー!」
この時、俺はまったく考えてなかったんだ。
キリトがジェルにネタばらししたせいで、ジェルがお説教する気満々で待ち構えていることを。
それに気づいたときには俺の体は再び、空を飛んでいた。
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