それは非売品です!~残念イケメン兄弟と不思議な店~

白井銀歌

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season3

149話:フォラス、神社へ行く

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 とりあえず連れて行くにしても、今の彼はパンツ一丁なので服を着てもらわないといけません。

「ヌゥ……ジェルマンが着ているのと同じのでいいだろうか? ムンッ!」

 フォラスが気合を入れると、ワタクシと同じ紺色の執事服姿になりました。
 適正サイズが理解できていないのか、パツンパツンで襟は窮屈そうだし、ブラウスのボタンは今にも弾け飛びそうです。

 正直ペアルックになるのは不快ですが、まぁそれでも、パンツ一丁で出歩かれるよりはいいでしょう。

「じゃあ、外の世界を案内して差し上げますよ。どこに行きたいんですか?」

「そうであるな……愛し子達が普段よく行く場所に我も行きたいぞ」

 ワタクシたちが普段よく行く場所――

「シロの神社とかどうだ?」

「そうですねぇ」

 あの神社なら境内けいだいには足湯もあって手ごろな観光スポットと言えなくもないし、悪くないかもしれません。
 神社に悪魔を連れて行くのはどうかと思いますが、まぁ別に宗教戦争が起きるようなことも無いでしょうし、大丈夫でしょう。

 ワタクシ達は、フォラスを連れて友人の氏神のシロが祭られている神社に向かうことにしました。

 フォラスは周囲をキョロキョロしながら歩いています。

「ヌゥッ、あの走る箱は何だ⁉ あんな物は見たこと無いぞ!」

「あれは自動車です」

「なにッ! 我の知る自動車は屋根の無い馬車のような形であったが……ずいぶん変わったのだな」

 おそらくフォラスの知識は100年前で止まっているのでしょう。
 見るものすべてが新鮮に違いありません。

「このカラフルな箱は何だ?」

「自動販売機です。容器に入ったコーヒーやお茶を売っているんですよ」

「なるほど。では箱よ、コーヒー3人分売ってくれ。……おい、聞いているのか?」

 バンバンッ! ベコッ!

 フォラスが呼びかけながら自販機を軽く叩くと、機械がへこみました。

「ちょっと! なにやってるんですか⁉」

「ヌゥ……返事が無い。うっかり殺してしまったかもしれぬな」

「いや、別に中に人が居るわけではありませんから!」

「さらっと怖いこと言ったな、おっちゃん……」

 慌ててへこんだ機械を錬金術で修復して、お金を入れてコーヒーを買って渡しました。

「そういや、フォラスのおっちゃんは神社は初めてか?」

「そうであるな。どんなところか楽しみだ」

 コーヒーを飲みながら朗らかに笑う彼は、ただの人の良さそうなマッチョのオッサンにしか見えません。
 このままおとなしく観光してくれるといいのですが。

「ほら、おっちゃん。あれが神社だぞ。鳥居が見えるだろ」

「ヌゥ……素晴らしいッ! ウォォォォ!!!!」

 フォラスはいきなり叫ぶと、走りだして鳥居に向かって大きく跳躍し、ぶら下がって懸垂けんすいし始めたのです。

「おっちゃん! それは筋トレ器具じゃねぇぞ!」

 懸垂する彼をアレクが引きずりおろして、とりあえず拝殿に向かいました。

「いいですか、ワタクシの言う通りにお参りしてくださいね!」

「ヌゥ……わかった」

「まず、この吊り下げてある大きな鈴を鳴らして……」

 ワタクシが賽銭箱の上に吊り下げてある鈴紐を揺らすとガランガランと大きな音が鳴りました。

「そして、お辞儀を2回した後に2回手を叩く」

 パンッパンッ! と拍手を打ってみせるとフォラスは頷きました。

「なるほど……まずこの鈴を鳴らすのだな」

 ガランガラン! ブチッ! ガシャン!!!!

「何やってるんですか⁉」

 彼が鈴紐を手にすると千切れて鈴が落ちてしまいました。
 すると拝殿の扉が開いて、中には唖然とした顔の氏神のシロが立っています。

「ちょっと何やってるの! ……あれ、ジェルにアレク兄ちゃん?」

「すみません! すぐ直しますので!」

 慌てて錬金術で鈴を元に戻して、シロに事情を説明しました。

「悪魔ねぇ……まぁいいけど」

「ヌオッ! 愛し子達に友達ができておったとは……我はうれしいぞ! お近づきのしるしにこれを授けよう」

 フォラスは大きな缶入りのプロテインをズボンの中から取り出して、シロに差し出しました。
 彼の服の中はどういう仕組みになっているんでしょうか。

「ど、どうも……ちょうど今は境内にスサノオ様の為に奉納された神馬があっちに居るから、見物していくといいよ」

「ムンッ! それは興味深い!」

「あぁちょっと、フォラス! 勝手に行かないでください!」
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