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season2
140話:怪奇!謎の看板
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それは紅葉が色づき始めた季節の出来事です。
アンティークの店「蜃気楼」の店内では、カウンターに座り読書しているワタクシと、スマホを眺める兄のアレクサンドルの姿がありました。
「なぁ、ジェル。これ何だと思う?」
アレクが差し出したスマホの画面には、ネットニュースの記事が表示されています。
『怪奇! 謎の看板』
それは京都の山奥で、誰が設置したのかまったくわからない小さな看板が発見されたことが話題になっている、というニュースでした。
その看板はかなり辺鄙な場所にあるので普段は人が通ったりしないそうなのですが、たまたまキャンプ目的の人が見つけてSNSに投稿したのがきっかけで話題になったんだそうです。
記事には、道路側から撮影したと思われる写真が掲載されていました。
白いベニヤ板の看板にペンキで人名らしきものが書かれているのが3枚並んでいます。
「それぞれトミ子、栄作、洋平……と読めますが、何か関連があるんですかね?」
「わかんねぇ。でも噂によるとその名前の人がそこに行くと死んじまうなんて話まであってさぁ。怖くねぇ?」
「馬鹿馬鹿しい。正体のわからないものは往々にしてオカルティックな尾ひれがつくものです。それはデマでしょう」
「じゃあ何で、そんな意味の無い看板を立てる必要があるんだ?」
「もしかしたら、人名に見せかけた暗号なのかもしれません」
「暗号?」
「このトミ子という名前は富、つまり財宝のありかを示しているのではないでしょうか」
「やべぇ、埋蔵金とかそういうやつ?」
「だったら大儲けですね!」
その後、埋蔵金を期待しつつ我々は暗号解読を試みたのですが、残念ながらちっともわかりませんでした。
「解読には情報が足りないんじゃないですかね。もしかしたら、まだ他にも看板があるとか……」
「かもしれないなぁ」
ワタクシ達は続報を期待して情報を検索してみたのですが、残念ながら他に看板を見たという話は無いようです。
ネットニュースで話題にはなったとはいえ、周囲は人家の無い山奥ですし、わざわざそこまで行って確認しようという奇特な人もいないようでした。
このままだと真相はわからずじまいになりそうです。
「こうなったら、俺たちで看板を見に行ってみようぜ」
「確かに現地へ行けば、手がかりがあるかもしれませんね」
「よし、お兄ちゃんに任せろ!」
アレクはSNSで看板の撮影をした人に連絡をして、詳しい場所を聞き出してくれました。
「なるほど。近い場所まではワタクシの転送魔術で行けそうですね」
「もしかしたら山に登るかもだから、準備して行った方がいいな」
「できれば、そうならないで欲しいですけどねぇ……」
こうしてワタクシ達は京都の山奥へとやって来たのです。
目の前には写真で見たのと同じ「トミ子」「栄作」「洋平」と書かれた3枚の看板が並んでいます。
看板はいたって普通のベニヤ板で、裏面を見ても特におかしなところは何もありませんでした。
「しかし、写真で見るよりもなんか不気味だな……」
「そうですねぇ」
「撮影した人は、怖かったから詳しく調べずにすぐ他の山に移動しちゃったらしいんだ」
「じゃあ、他に何かあるかもしれませんね。周辺を探してみましょう」
ワタクシ達は看板を越えて、山の奥に向かって進みました。
すると少し進んだ先に、白い看板が見えます。
「おや、本当にありましたね」
その看板には『頑張れ! 若人達よ!』と力強い筆文字で書かれてありました。
「一応メモ代わりに、スマホで撮影しておきましょうかね」
「お、なんか向こうにも白いものが見えるけど、あれも看板じゃねぇか?」
「行ってみましょう」
その看板は、赤く色づいた紅葉の木の根元にありました。
『鼻が伸びなくて不安です』
油性マジックペンで無造作にそう書かれた文章の下に、丁寧な筆文字の回答らしきものが書かれていました。
『鍛錬すれば自然に伸びていくのでご安心ください。どうしても不安な方には整形外科もご案内しております』
「……なんだ、鼻が伸びねぇって。ピノキオか?」
「ピノキオは整形外科なんて案内されないでしょう。よくわかりませんが、先に進んでみましょう」
アンティークの店「蜃気楼」の店内では、カウンターに座り読書しているワタクシと、スマホを眺める兄のアレクサンドルの姿がありました。
「なぁ、ジェル。これ何だと思う?」
アレクが差し出したスマホの画面には、ネットニュースの記事が表示されています。
『怪奇! 謎の看板』
それは京都の山奥で、誰が設置したのかまったくわからない小さな看板が発見されたことが話題になっている、というニュースでした。
その看板はかなり辺鄙な場所にあるので普段は人が通ったりしないそうなのですが、たまたまキャンプ目的の人が見つけてSNSに投稿したのがきっかけで話題になったんだそうです。
記事には、道路側から撮影したと思われる写真が掲載されていました。
白いベニヤ板の看板にペンキで人名らしきものが書かれているのが3枚並んでいます。
「それぞれトミ子、栄作、洋平……と読めますが、何か関連があるんですかね?」
「わかんねぇ。でも噂によるとその名前の人がそこに行くと死んじまうなんて話まであってさぁ。怖くねぇ?」
「馬鹿馬鹿しい。正体のわからないものは往々にしてオカルティックな尾ひれがつくものです。それはデマでしょう」
「じゃあ何で、そんな意味の無い看板を立てる必要があるんだ?」
「もしかしたら、人名に見せかけた暗号なのかもしれません」
「暗号?」
「このトミ子という名前は富、つまり財宝のありかを示しているのではないでしょうか」
「やべぇ、埋蔵金とかそういうやつ?」
「だったら大儲けですね!」
その後、埋蔵金を期待しつつ我々は暗号解読を試みたのですが、残念ながらちっともわかりませんでした。
「解読には情報が足りないんじゃないですかね。もしかしたら、まだ他にも看板があるとか……」
「かもしれないなぁ」
ワタクシ達は続報を期待して情報を検索してみたのですが、残念ながら他に看板を見たという話は無いようです。
ネットニュースで話題にはなったとはいえ、周囲は人家の無い山奥ですし、わざわざそこまで行って確認しようという奇特な人もいないようでした。
このままだと真相はわからずじまいになりそうです。
「こうなったら、俺たちで看板を見に行ってみようぜ」
「確かに現地へ行けば、手がかりがあるかもしれませんね」
「よし、お兄ちゃんに任せろ!」
アレクはSNSで看板の撮影をした人に連絡をして、詳しい場所を聞き出してくれました。
「なるほど。近い場所まではワタクシの転送魔術で行けそうですね」
「もしかしたら山に登るかもだから、準備して行った方がいいな」
「できれば、そうならないで欲しいですけどねぇ……」
こうしてワタクシ達は京都の山奥へとやって来たのです。
目の前には写真で見たのと同じ「トミ子」「栄作」「洋平」と書かれた3枚の看板が並んでいます。
看板はいたって普通のベニヤ板で、裏面を見ても特におかしなところは何もありませんでした。
「しかし、写真で見るよりもなんか不気味だな……」
「そうですねぇ」
「撮影した人は、怖かったから詳しく調べずにすぐ他の山に移動しちゃったらしいんだ」
「じゃあ、他に何かあるかもしれませんね。周辺を探してみましょう」
ワタクシ達は看板を越えて、山の奥に向かって進みました。
すると少し進んだ先に、白い看板が見えます。
「おや、本当にありましたね」
その看板には『頑張れ! 若人達よ!』と力強い筆文字で書かれてありました。
「一応メモ代わりに、スマホで撮影しておきましょうかね」
「お、なんか向こうにも白いものが見えるけど、あれも看板じゃねぇか?」
「行ってみましょう」
その看板は、赤く色づいた紅葉の木の根元にありました。
『鼻が伸びなくて不安です』
油性マジックペンで無造作にそう書かれた文章の下に、丁寧な筆文字の回答らしきものが書かれていました。
『鍛錬すれば自然に伸びていくのでご安心ください。どうしても不安な方には整形外科もご案内しております』
「……なんだ、鼻が伸びねぇって。ピノキオか?」
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