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season2
139話:それいけ!ランタンマン
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もしかしてワタクシの造形が微妙すぎたからでしょうか。
こんなことなら2体ともアレクに任せるべきだったのかもしれません。
少し残念に思いつつも、とりあえず命が宿ったらしいことには安心しました。
こうして2体のジャック・オー・ランタンが誕生したのですが、問題が発生しました。
アレクの作ったランタンは、とんでもない性格だったのです。
「アレクおじさん! 僕は正義の為に戦います!」
「ランタンマン……できればおじさんじゃなくて、お兄さんと呼んで欲しいけど、正義の為に戦うのは偉いぞ!」
「はい! アレクおじさん!」
いつの間にかランタンマンという名前が付けられた彼は、アレクがクローゼットから持って来た大判の茶色いスカーフをマントのように身につけて宙に浮いています。
「それじゃ、パトロールに行ってきます!」
「えっ……おい、外は――」
アレクが止める間も無く、ランタンマンは小さい方のランタンと一緒に窓を開けて、ふよふよと外へ出て行ってしまいました。
「おい、ランタンマン達が出ていっちまったぞ!」
「大丈夫ですよ。周囲にはワタクシが張り巡らした結界がありますから、きっとその先には出られません」
しかし、彼らは結界に弾かれることなく、そのまま外に行ってしまいました。
「あれ、結界が効いてない? ……あぁ、ワタクシの魔力で育っているから認証済み扱いになって通れるんですねぇ。これは興味深い」
「感心してる場合じゃねぇよ! 町の人にランタンマン達の姿を見られたら騒ぎになるぞ。早く追いかけねぇと!」
ワタクシ達は急いでランタンマン達の飛んで行った方向へ走りました。
――キャァァァァァ!
すぐ近くで若い女性の悲鳴が聞こえたので、急いで向かうと、そこには道行く男女に襲い掛かろうとするランタンマンの姿があったのです。
「ハロウィンに浮かれるカップル死すべし! リア充死すべし!」
ランタンマンはそんな怨嗟の声をあげながら、男性の方に殴りかかろうとしていて、小さい方はおろおろした様子で空中に浮いています。
アレクが慌てて後ろから抱きついて止めたので未遂に終わりましたが、危うく傷害事件になるところでした。
「うちの子が申しわけございません!」
ワタクシが平謝りすると、相手は気味悪がって逃げてしまいました。
そりゃあそうですよね……
「おいおい、ランタンマン。正義の為に戦うんじゃなかったのかよ」
「リア充死すべし! カップルを撲滅せよ!」
「ダメだこいつ……」
「あぁ可哀想に。きっとモテないアレクの怨念が、ランタンに宿ってしまったんでしょうねぇ」
ワタクシが率直な感想を述べると、アレクはあからさまに不機嫌な顔で反論しました。
「おい、ジェル。モテないのはオマエも同じだからな。むしろオマエが魔力を注ぎながらリア充を恨んだりしてたんじゃないのか?」
「失敬な! ワタクシはあえて独り身を選んでいるだけです! アレクと一緒にしないでください!」
「なんだと、お兄ちゃんは言っておくが、めちゃめちゃモテてるからな! 宇宙規模でモテてるんだぞ!」
「リア充死すべし! リア充死すべし!」
「あー、もう! ランタンマンは黙ってなさい!」
ワタクシ達がしばらく路上で言い合いをしていると、いつの間にか小さなランタンがランタンマンに近づいてその手をキュッと握りました。
「……ランタンマン」
てっきり話すことができないと思っていたランタンは、少女のような可愛い声でゆっくり話し始めました。
「わたし、うまれたときから、ずっとあなたをみてたよ。ずっとすきだったの」
「えっ……僕のことを?」
「あなたにはわたしがいるよ。だから、そんなことやめて」
「僕のことを愛してくれるの?」
「あいしてる」
その言葉を聞いたランタンマンは、小さなランタンを抱きしめて「ありがとう」とつぶやきました。
そして二人は仲良く手を繋いで家に戻って行ったのです。
――ワタクシ達を完全に無視して。
「あぁぁぁぁぁ!!!! リア充死すべし!!!!」
「おちつけジェル、相手はカボチャだ!」
「うぅ。でも、でもっ……」
「ほら、お兄ちゃんがアイス買ってやるから。コンビニでも寄って帰ろうな」
「はい……」
釈然としない気持ちのまま、ワタクシ達はアイスを買って帰宅したのでした。
その後、彼らは本人たちの希望で魔界へ移住することになりました。
小さな家を建てて、仲睦まじく二人で幸せに暮らしているそうです。
こんなことなら2体ともアレクに任せるべきだったのかもしれません。
少し残念に思いつつも、とりあえず命が宿ったらしいことには安心しました。
こうして2体のジャック・オー・ランタンが誕生したのですが、問題が発生しました。
アレクの作ったランタンは、とんでもない性格だったのです。
「アレクおじさん! 僕は正義の為に戦います!」
「ランタンマン……できればおじさんじゃなくて、お兄さんと呼んで欲しいけど、正義の為に戦うのは偉いぞ!」
「はい! アレクおじさん!」
いつの間にかランタンマンという名前が付けられた彼は、アレクがクローゼットから持って来た大判の茶色いスカーフをマントのように身につけて宙に浮いています。
「それじゃ、パトロールに行ってきます!」
「えっ……おい、外は――」
アレクが止める間も無く、ランタンマンは小さい方のランタンと一緒に窓を開けて、ふよふよと外へ出て行ってしまいました。
「おい、ランタンマン達が出ていっちまったぞ!」
「大丈夫ですよ。周囲にはワタクシが張り巡らした結界がありますから、きっとその先には出られません」
しかし、彼らは結界に弾かれることなく、そのまま外に行ってしまいました。
「あれ、結界が効いてない? ……あぁ、ワタクシの魔力で育っているから認証済み扱いになって通れるんですねぇ。これは興味深い」
「感心してる場合じゃねぇよ! 町の人にランタンマン達の姿を見られたら騒ぎになるぞ。早く追いかけねぇと!」
ワタクシ達は急いでランタンマン達の飛んで行った方向へ走りました。
――キャァァァァァ!
すぐ近くで若い女性の悲鳴が聞こえたので、急いで向かうと、そこには道行く男女に襲い掛かろうとするランタンマンの姿があったのです。
「ハロウィンに浮かれるカップル死すべし! リア充死すべし!」
ランタンマンはそんな怨嗟の声をあげながら、男性の方に殴りかかろうとしていて、小さい方はおろおろした様子で空中に浮いています。
アレクが慌てて後ろから抱きついて止めたので未遂に終わりましたが、危うく傷害事件になるところでした。
「うちの子が申しわけございません!」
ワタクシが平謝りすると、相手は気味悪がって逃げてしまいました。
そりゃあそうですよね……
「おいおい、ランタンマン。正義の為に戦うんじゃなかったのかよ」
「リア充死すべし! カップルを撲滅せよ!」
「ダメだこいつ……」
「あぁ可哀想に。きっとモテないアレクの怨念が、ランタンに宿ってしまったんでしょうねぇ」
ワタクシが率直な感想を述べると、アレクはあからさまに不機嫌な顔で反論しました。
「おい、ジェル。モテないのはオマエも同じだからな。むしろオマエが魔力を注ぎながらリア充を恨んだりしてたんじゃないのか?」
「失敬な! ワタクシはあえて独り身を選んでいるだけです! アレクと一緒にしないでください!」
「なんだと、お兄ちゃんは言っておくが、めちゃめちゃモテてるからな! 宇宙規模でモテてるんだぞ!」
「リア充死すべし! リア充死すべし!」
「あー、もう! ランタンマンは黙ってなさい!」
ワタクシ達がしばらく路上で言い合いをしていると、いつの間にか小さなランタンがランタンマンに近づいてその手をキュッと握りました。
「……ランタンマン」
てっきり話すことができないと思っていたランタンは、少女のような可愛い声でゆっくり話し始めました。
「わたし、うまれたときから、ずっとあなたをみてたよ。ずっとすきだったの」
「えっ……僕のことを?」
「あなたにはわたしがいるよ。だから、そんなことやめて」
「僕のことを愛してくれるの?」
「あいしてる」
その言葉を聞いたランタンマンは、小さなランタンを抱きしめて「ありがとう」とつぶやきました。
そして二人は仲良く手を繋いで家に戻って行ったのです。
――ワタクシ達を完全に無視して。
「あぁぁぁぁぁ!!!! リア充死すべし!!!!」
「おちつけジェル、相手はカボチャだ!」
「うぅ。でも、でもっ……」
「ほら、お兄ちゃんがアイス買ってやるから。コンビニでも寄って帰ろうな」
「はい……」
釈然としない気持ちのまま、ワタクシ達はアイスを買って帰宅したのでした。
その後、彼らは本人たちの希望で魔界へ移住することになりました。
小さな家を建てて、仲睦まじく二人で幸せに暮らしているそうです。
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