127 / 163
season2
128話:霊VSオタク
しおりを挟む
ジンの取引先のひとつだというその家は、なかなか立派なお屋敷で、出迎えた屋敷の主も裕福そうな人物です。
「おお! あなた方が霊能力者の方ですか! ジンさん、ありがとう!」
「どういたしまして♪ 彼らに任せておけば安心よ!」
ジンはどうやらワタクシ達のことを勝手に「霊能力者」と紹介したようです。確かにその方がなにかと都合は良さそうですけども。
「人形はこちらの部屋にあります。家族も皆すっかり怖がって困っているんですよ。ではよろしくお願いいたします」
屋敷の主は人形のある部屋を案内した後、そそくさと戻って行きました。
「なぁ、ジェル。俺達が“霊能力者”ってどういうことだ? ……もしかしてオバケか? オバケがでるのか⁉」
「アレク、静かにしなさい」
「いやだ~! お兄ちゃんジャパニーズホラーは嫌だっていつも言ってるのに! 俺帰るぅ~!!!!」
「アレクちゃん、落ち着いて。ただのお人形だから」
涙目で引き返そうとするアレクをなだめながら、ワタクシ達は部屋のドアを開けました。
そこには毛布で覆われ、ロープでグルグル巻きにされた何かがぽつんと置かれています。
「これは……いかにも、いわくつきという感じですねぇ」
「ひぃっ、オバケか⁉ オバケが中にいるのか⁉ そのロープ、ほどいちゃダメなヤツだよな⁉」
「アレク、ちょっと黙っててもらえますか」
ワタクシはロープをほどき、毛布をどかしてみました。
するとそこには、ガラスケースに入ったドレス姿の可愛い西洋人形があったのです。
「あらぁ、可愛いわねぇ♪」
「ほう、これは確かに値打ちものですねぇ……どれどれ」
ワタクシが状態をチェックしようとケースから出してドレスの裾をめくった瞬間、人形が震えはじめました。
そして野太い男の声で――
『いやぁぁぁー! なにするでありますかー!』
「え……?」
『ハレンチですぞ! セクハラでありますぞ!』
「うわっ……!」
思わずびっくりして人形を毛布の上に落っことしてしまいました。
今、あきらかに男性の声で、ハレンチだのセクハラだの場違いな単語が聞こえたのですが。
「ジン、この人形には第二次世界大戦中に捕虜になった少女の霊がついているんじゃなかったんですか?」
「てっきりそうだと思ったんだけど……違うみたいね。あなた、だぁれ?」
「しょっ、小生はこの世に未練があって留まっているであります。本名は恥ずかしいからハンドルネームで失礼。そうですな……キリト、と呼んで欲しいであります!」
「はぁ……」
これはどう見ても少女の霊では無さそうです。
とりあえずキリトと名乗る人形を拾って、毛布の上に座らせて詳しい事情を聞くことにしました。
「それで先ほど“この世に未練がある”とおっしゃいましたが、どんな未練なんでしょうか?」
「……魔法少女エクセレントサニー」
「は?」
「魔法少女エクセレントサニーちゃんの続きが観たいのであります! それを観るまでは成仏できないのであります!!!!」
人形は大声でよくわからない単語を叫びました。
「えくせれんとさにーちゃん……? なんですかね……?」
「さぁねぇ……?」
ワタクシ達には何のことかさっぱりわかりません。
しかし人形は、それを観るまでは成仏しないと頑なに言い張るのです。
「困りましたねぇ……」
これでは成仏させるのも難しいかと思われたのですが。
すると、ずっとジンの背中に隠れながらこっちの様子をうかがっていたアレクが、急に人形に近づいて語りかけたのです。
「なぁなぁ、サニーちゃん何話まで観た?」
「9話までであります。毎週楽しみにしてたのに、小生は交通事故に遭って死んでしまい、気が付いたらこの人形の中にいたんであります」
「9話か。わかる、わかるぞ……サニーちゃんが覚醒(かくせい)して新しいコスチュームになった話だよな。あれは感動したよな~!」
アレクは人形に向かって大きく頷いています。
「おお、同志よ! 小生も涙無しには観られなかったでありますよ! でもこの人形から出られなくて、続きを観ることもできず……」
「安心しろキリト。それなら録画してある! 俺の家で一緒に観よう!」
「おお、貴方が神か!」
アレクと人形が意気投合しているのを、ワタクシ達はただ眺めることしかできませんでした。
「よくわからないですけど、アレクのおかげで上手くいきそうですね」
「そうねぇ……」
こうしてワタクシ達は、無事に人形を譲り受けて自宅へと持ち帰ることができたのです。
それから2週間後――
「アレク氏! やっぱりサニーちゃんは尊いですなぁ!」
「だよな! でた~必殺技! サニーフラッシュ! いぇぇぇぇい!」
リビングで人形と一緒にソファーに座ってアニメを観ながら盛り上がるアレクを横目で見ながら、ワタクシは紅茶を飲んでため息をつきました。
「はぁ。このアニメも次週で最終回……これでやっと人形が手に入りますね。まったく、めんどくさいことになったものです」
しかしワタクシは、そのアニメが人気作品で続編がすぐ始まることや「続編も観たい」と人形が駄々をこねることなど、その時は知りもしなかったのでした。
「おお! あなた方が霊能力者の方ですか! ジンさん、ありがとう!」
「どういたしまして♪ 彼らに任せておけば安心よ!」
ジンはどうやらワタクシ達のことを勝手に「霊能力者」と紹介したようです。確かにその方がなにかと都合は良さそうですけども。
「人形はこちらの部屋にあります。家族も皆すっかり怖がって困っているんですよ。ではよろしくお願いいたします」
屋敷の主は人形のある部屋を案内した後、そそくさと戻って行きました。
「なぁ、ジェル。俺達が“霊能力者”ってどういうことだ? ……もしかしてオバケか? オバケがでるのか⁉」
「アレク、静かにしなさい」
「いやだ~! お兄ちゃんジャパニーズホラーは嫌だっていつも言ってるのに! 俺帰るぅ~!!!!」
「アレクちゃん、落ち着いて。ただのお人形だから」
涙目で引き返そうとするアレクをなだめながら、ワタクシ達は部屋のドアを開けました。
そこには毛布で覆われ、ロープでグルグル巻きにされた何かがぽつんと置かれています。
「これは……いかにも、いわくつきという感じですねぇ」
「ひぃっ、オバケか⁉ オバケが中にいるのか⁉ そのロープ、ほどいちゃダメなヤツだよな⁉」
「アレク、ちょっと黙っててもらえますか」
ワタクシはロープをほどき、毛布をどかしてみました。
するとそこには、ガラスケースに入ったドレス姿の可愛い西洋人形があったのです。
「あらぁ、可愛いわねぇ♪」
「ほう、これは確かに値打ちものですねぇ……どれどれ」
ワタクシが状態をチェックしようとケースから出してドレスの裾をめくった瞬間、人形が震えはじめました。
そして野太い男の声で――
『いやぁぁぁー! なにするでありますかー!』
「え……?」
『ハレンチですぞ! セクハラでありますぞ!』
「うわっ……!」
思わずびっくりして人形を毛布の上に落っことしてしまいました。
今、あきらかに男性の声で、ハレンチだのセクハラだの場違いな単語が聞こえたのですが。
「ジン、この人形には第二次世界大戦中に捕虜になった少女の霊がついているんじゃなかったんですか?」
「てっきりそうだと思ったんだけど……違うみたいね。あなた、だぁれ?」
「しょっ、小生はこの世に未練があって留まっているであります。本名は恥ずかしいからハンドルネームで失礼。そうですな……キリト、と呼んで欲しいであります!」
「はぁ……」
これはどう見ても少女の霊では無さそうです。
とりあえずキリトと名乗る人形を拾って、毛布の上に座らせて詳しい事情を聞くことにしました。
「それで先ほど“この世に未練がある”とおっしゃいましたが、どんな未練なんでしょうか?」
「……魔法少女エクセレントサニー」
「は?」
「魔法少女エクセレントサニーちゃんの続きが観たいのであります! それを観るまでは成仏できないのであります!!!!」
人形は大声でよくわからない単語を叫びました。
「えくせれんとさにーちゃん……? なんですかね……?」
「さぁねぇ……?」
ワタクシ達には何のことかさっぱりわかりません。
しかし人形は、それを観るまでは成仏しないと頑なに言い張るのです。
「困りましたねぇ……」
これでは成仏させるのも難しいかと思われたのですが。
すると、ずっとジンの背中に隠れながらこっちの様子をうかがっていたアレクが、急に人形に近づいて語りかけたのです。
「なぁなぁ、サニーちゃん何話まで観た?」
「9話までであります。毎週楽しみにしてたのに、小生は交通事故に遭って死んでしまい、気が付いたらこの人形の中にいたんであります」
「9話か。わかる、わかるぞ……サニーちゃんが覚醒(かくせい)して新しいコスチュームになった話だよな。あれは感動したよな~!」
アレクは人形に向かって大きく頷いています。
「おお、同志よ! 小生も涙無しには観られなかったでありますよ! でもこの人形から出られなくて、続きを観ることもできず……」
「安心しろキリト。それなら録画してある! 俺の家で一緒に観よう!」
「おお、貴方が神か!」
アレクと人形が意気投合しているのを、ワタクシ達はただ眺めることしかできませんでした。
「よくわからないですけど、アレクのおかげで上手くいきそうですね」
「そうねぇ……」
こうしてワタクシ達は、無事に人形を譲り受けて自宅へと持ち帰ることができたのです。
それから2週間後――
「アレク氏! やっぱりサニーちゃんは尊いですなぁ!」
「だよな! でた~必殺技! サニーフラッシュ! いぇぇぇぇい!」
リビングで人形と一緒にソファーに座ってアニメを観ながら盛り上がるアレクを横目で見ながら、ワタクシは紅茶を飲んでため息をつきました。
「はぁ。このアニメも次週で最終回……これでやっと人形が手に入りますね。まったく、めんどくさいことになったものです」
しかしワタクシは、そのアニメが人気作品で続編がすぐ始まることや「続編も観たい」と人形が駄々をこねることなど、その時は知りもしなかったのでした。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
我が家の家庭内順位は姫、犬、おっさんの順の様だがおかしい俺は家主だぞそんなの絶対に認めないからそんな目で俺を見るな
ミドリ
キャラ文芸
【奨励賞受賞作品です】
少し昔の下北沢を舞台に繰り広げられるおっさんが妖の闘争に巻き込まれる現代ファンタジー。
次々と増える居候におっさんの財布はいつまで耐えられるのか。
姫様に喋る犬、白蛇にイケメンまで来てしまって部屋はもうぎゅうぎゅう。
笑いあり涙ありのほのぼの時折ドキドキ溺愛ストーリー。ただのおっさん、三種の神器を手にバトルだって体に鞭打って頑張ります。
なろう・ノベプラ・カクヨムにて掲載中
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。

腐れヤクザの育成論〜私が育てました〜
古亜
キャラ文芸
たまたま出会ったヤクザをモデルにBL漫画を描いたら、本人に読まれた。
「これ描いたの、お前か?」
呼び出された先でそう問いただされ、怒られるか、あるいは消される……そう思ったのに、事態は斜め上に転がっていった。
腐(オタ)文化に疎いヤクザの組長が、立派に腐っていく話。
内容は完全に思い付き。なんでも許せる方向け。
なお作者は雑食です。誤字脱字、その他誤りがあればこっそり教えていただけると嬉しいです。
全20話くらいの予定です。毎日(1-2日おき)を目標に投稿しますが、ストックが切れたらすみません……
相変わらずヤクザさんものですが、シリアスなシリアルが最後にあるくらいなのでクスッとほっこり?いただければなと思います。
「ほっこり」枠でほっこり・じんわり大賞にエントリーしており、結果はたくさんの作品の中20位でした!応援ありがとうございました!
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる