109 / 163
season2
110話:隠しシナリオの世界
しおりを挟む
「キューピッドさん!」
『本当、ジェルは恋愛ダメダメだね~』
「ワタクシはどうすれば正解だったんですか⁉」
『あれはお尻を出したらものすごいイボ痔が見つかって、学会に発表されて彼と海外へ一緒に行くエンドだったんだよ』
「だから、ワタクシはイボ痔じゃありませんってば!」
『医者もダメとなると、もう後はこの世界から出られずに白骨化するしか……』
「そんなの困ります! そもそもクソ設定とゴミみたいなシナリオなのがダメなんですよ! なんとかしてください!」
ワタクシの訴えに、キューピッドはちょっと困ったような声で言いました。
『じゃあ、開発途中でちょっと問題あるんだけど隠しシナリオの世界へ行こうか』
「このゲームをクリアできるなら何でもいいですよ!」
『これで最後だからね。本当にラストチャンスだからね? 何を見ても絶対逃げずに頑張ってね』
気が付くと、ワタクシは公園のベンチに座っていました。
「おや、これは……」
ワタクシの手には紐が握られていて、その先には首輪をして犬の耳とふさふさの尻尾を生やした全裸のアレクが地面にお座りしていました。
「うあぁぁぁぁぁ!!!!」
「なんだよ。急に大きな声を出すからびっくりしたワン」
――えっ……ワン?
『ごめんね、これ本来なら犬の姿なんだけど、公園の背景にこだわりすぎて犬のグラフィックが開発中で実装できてないんだよ』
「犬は真っ先に実装すべきでしたよ! この絵面は倫理的に問題ありすぎでしょう!」
『頑張って、ジェル。これがラストチャンスだよ。真実の愛を掴むんだ!』
「このアレクから何を掴めと……」
げんなりしつつアレクに視線を戻すと、彼はお座りをしたままキラキラした目でこっちを見ています。
これはプレイを続行するしかないんですよね……
「えっと、どうすればいいんでしょうか?」
「お散歩行きたいワン!」
そう言ってアレクは四つんばいのまま歩き始めました。しょうがないのでそのままリードを掴んで散歩させることになったのですが。
「これ、かなり恥ずかしいんですけど……」
道で会う人達にはアレクが犬に見えているのか、もしくはプログラムされていないのか、何も反応はありません。
しかし、全裸の兄に首輪をつけて散歩させながら一緒に歩くのはかなり恥ずかしい状況でした。
「おいジェル、この道は車が来るから気をつけるんだワン!」
「あっ、はい」
「俺、うんこしたいワン」
「いやぁぁぁぁ! それだけは勘弁してください!」
なんとか散歩をして、アレクに案内されるまま元の公園に戻って来ました。
「お散歩に連れて行ってくれてありがとうワン」
アレクは姿勢を正すと、お座りをしてワタクシを見上げ、問いかけます。
「……俺のご主人様になってくれますかワン?」
これは、もしかしたら犬の姿だったらそこそこ良いシーンだったのかもしれません。でも目の前にいるのは全裸で首輪をしたアレクです。
「あの……すごく問題発言な気がするんですけど」
『そこは我慢しないとクリアできないよ』
キューピッドがヒソヒソ声で悪魔のようにささやきかけます。
「……くっ。わかりました。ご主人様になって差し上げます」
「ありがとうワン! うれしいワン!」
感激したアレクに飛びつかれて、ワタクシが悲鳴をあげたのは言うまでもありません。
そして周囲が光り輝くと、空から花びらのような物がたくさん落ちてきて、荘厳な音楽が流れました。
『おめでとう! ゲームクリアだよ!』
「……あぁ、疲れた」
――ゲームの世界は酷いアレクばっかりで、疲れてしまいました。
元の世界に戻って本物のアレクに会えば、彼の良さを実感するかもしれませんね。
気が付くと、ワタクシはリビングのソファーに座ってコントローラーを握っていました。
目の前のテーブルの上には、おつまみの袋やビールの缶。そして日本酒の空き瓶が床に何本も転がっています。
客用のソファーには、スヤスヤと眠るシロの姿がありました。
その足元には、酔っ払ってギラギラのパンツ一丁で床に転がって寝ているアレクと、脱ぎ散らかされた服が落ちています。
「現実のアレクも、たいして良いわけでもありませんでしたね……」
ワタクシは現実逃避すべく、ソファーで眠りに落ちたのでした。
『本当、ジェルは恋愛ダメダメだね~』
「ワタクシはどうすれば正解だったんですか⁉」
『あれはお尻を出したらものすごいイボ痔が見つかって、学会に発表されて彼と海外へ一緒に行くエンドだったんだよ』
「だから、ワタクシはイボ痔じゃありませんってば!」
『医者もダメとなると、もう後はこの世界から出られずに白骨化するしか……』
「そんなの困ります! そもそもクソ設定とゴミみたいなシナリオなのがダメなんですよ! なんとかしてください!」
ワタクシの訴えに、キューピッドはちょっと困ったような声で言いました。
『じゃあ、開発途中でちょっと問題あるんだけど隠しシナリオの世界へ行こうか』
「このゲームをクリアできるなら何でもいいですよ!」
『これで最後だからね。本当にラストチャンスだからね? 何を見ても絶対逃げずに頑張ってね』
気が付くと、ワタクシは公園のベンチに座っていました。
「おや、これは……」
ワタクシの手には紐が握られていて、その先には首輪をして犬の耳とふさふさの尻尾を生やした全裸のアレクが地面にお座りしていました。
「うあぁぁぁぁぁ!!!!」
「なんだよ。急に大きな声を出すからびっくりしたワン」
――えっ……ワン?
『ごめんね、これ本来なら犬の姿なんだけど、公園の背景にこだわりすぎて犬のグラフィックが開発中で実装できてないんだよ』
「犬は真っ先に実装すべきでしたよ! この絵面は倫理的に問題ありすぎでしょう!」
『頑張って、ジェル。これがラストチャンスだよ。真実の愛を掴むんだ!』
「このアレクから何を掴めと……」
げんなりしつつアレクに視線を戻すと、彼はお座りをしたままキラキラした目でこっちを見ています。
これはプレイを続行するしかないんですよね……
「えっと、どうすればいいんでしょうか?」
「お散歩行きたいワン!」
そう言ってアレクは四つんばいのまま歩き始めました。しょうがないのでそのままリードを掴んで散歩させることになったのですが。
「これ、かなり恥ずかしいんですけど……」
道で会う人達にはアレクが犬に見えているのか、もしくはプログラムされていないのか、何も反応はありません。
しかし、全裸の兄に首輪をつけて散歩させながら一緒に歩くのはかなり恥ずかしい状況でした。
「おいジェル、この道は車が来るから気をつけるんだワン!」
「あっ、はい」
「俺、うんこしたいワン」
「いやぁぁぁぁ! それだけは勘弁してください!」
なんとか散歩をして、アレクに案内されるまま元の公園に戻って来ました。
「お散歩に連れて行ってくれてありがとうワン」
アレクは姿勢を正すと、お座りをしてワタクシを見上げ、問いかけます。
「……俺のご主人様になってくれますかワン?」
これは、もしかしたら犬の姿だったらそこそこ良いシーンだったのかもしれません。でも目の前にいるのは全裸で首輪をしたアレクです。
「あの……すごく問題発言な気がするんですけど」
『そこは我慢しないとクリアできないよ』
キューピッドがヒソヒソ声で悪魔のようにささやきかけます。
「……くっ。わかりました。ご主人様になって差し上げます」
「ありがとうワン! うれしいワン!」
感激したアレクに飛びつかれて、ワタクシが悲鳴をあげたのは言うまでもありません。
そして周囲が光り輝くと、空から花びらのような物がたくさん落ちてきて、荘厳な音楽が流れました。
『おめでとう! ゲームクリアだよ!』
「……あぁ、疲れた」
――ゲームの世界は酷いアレクばっかりで、疲れてしまいました。
元の世界に戻って本物のアレクに会えば、彼の良さを実感するかもしれませんね。
気が付くと、ワタクシはリビングのソファーに座ってコントローラーを握っていました。
目の前のテーブルの上には、おつまみの袋やビールの缶。そして日本酒の空き瓶が床に何本も転がっています。
客用のソファーには、スヤスヤと眠るシロの姿がありました。
その足元には、酔っ払ってギラギラのパンツ一丁で床に転がって寝ているアレクと、脱ぎ散らかされた服が落ちています。
「現実のアレクも、たいして良いわけでもありませんでしたね……」
ワタクシは現実逃避すべく、ソファーで眠りに落ちたのでした。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたので、契約不履行により、秘密を明かします
tartan321
恋愛
婚約はある種の口止めだった。
だが、その婚約が破棄されてしまった以上、効力はない。しかも、婚約者は、悪役令嬢のスーザンだったのだ。
「へへへ、全部話しちゃいますか!!!」
悪役令嬢っぷりを発揮します!!!
龍神のつがい~京都嵐山 現世の恋奇譚~
河野美姫
キャラ文芸
天涯孤独の凜花は、職場でのいじめに悩みながらも耐え抜いていた。
しかし、ある日、大切にしていた両親との写真をボロボロにされてしまい、なにもかもが嫌になって逃げ出すように京都の嵐山に行く。
そこで聖と名乗る男性に出会う。彼は、すべての龍を統べる龍神で、凜花のことを「俺のつがいだ」と告げる。
凜花は聖が住む天界に行くことになり、龍にとって唯一無二の存在とされる〝つがい〟になることを求められるが――?
「誰かに必要とされたい……」
天涯孤独の少女
倉本凜花(20)
×
龍王院聖(年齢不詳)
すべての龍を統べる者
「ようやく会えた、俺の唯一無二のつがい」
「俺と永遠の契りを交わそう」
あなたが私を求めてくれるのは、
亡くなった恋人の魂の生まれ変わりだから――?
*アルファポリス*
2022/12/28~2023/1/28
※こちらの作品はノベマ!(完結済)・エブリスタでも公開中です。
うつしみひとよ〜ツンデレ式神は跡取り陰陽師にベタ惚れです!〜
ロジーヌ
キャラ文芸
美少女式神と大学生陰陽師の、異類間恋愛ストーリー。
数百年の歴史がある陰陽師家系の佐々木家。そこにずっと仕える式神の桃は、見た目15歳のツンデレ美少女で、佐々木家長男、大学生の風悟にベタ惚れ中。
生まれた時からそばにいる桃に、風悟も恋心を抱いているが、式神と人間では結ばれるはずもなく、両思いながらももどかしい日々を送る日々。
クリスマスが近づいた頃、佐々木家に祈祷依頼が来たが、それは高校教師でもある風悟の父親の元教え子たちの店に、呪いがかけられたというものだった。父親の代わりに風悟が行った店は、オカマバー。風悟は、そこで報われない想いに悩む大人たちを見る……
人と人、男女、人と人ではないもの……。恋愛や友情、世間体や風習に悩みながら、互いを思いやって生きていく人・モノたち。
佐々木家にとらわれ式神として何百年も過ごしながらも、明るく前向きな式神の桃。いまどき大学生ながらも、歴史のある実家の跡取りとして奮闘する風悟。2人の恋の行方は……?
羅刹の花嫁 〜帝都、鬼神討伐異聞〜
長月京子
キャラ文芸
【第8回キャラ文芸大賞に参加中、作品を気に入っていただけたら投票で応援していただけると嬉しいです】
自分と目をあわせると、何か良くないことがおきる。
幼い頃からの不吉な体験で、葛葉はそんな不安を抱えていた。
時は明治。
異形が跋扈する帝都。
洋館では晴れやかな婚約披露が開かれていた。
侯爵令嬢と婚約するはずの可畏(かい)は、招待客である葛葉を見つけると、なぜかこう宣言する。
「私の花嫁は彼女だ」と。
幼い頃からの不吉な体験ともつながる、葛葉のもつ特別な異能。
その力を欲して、可畏(かい)は葛葉を仮初の花嫁として事件に同行させる。
文明開化により、華やかに変化した帝都。
頻出する異形がもたらす、怪事件のたどり着く先には?
人と妖、異能と異形、怪異と思惑が錯綜する和風ファンタジー。
(※絵を描くのも好きなので表紙も自作しております)
第7回ホラー・ミステリー小説大賞で奨励賞をいただきました。
ありがとうございました!
画中の蛾
江戸川ばた散歩
キャラ文芸
昭和29年、東京で暮らす2人の一見青年。
そこにもちこまれた一幅の掛け軸。
中に描かれたのは蛾。
だがそれは実は……
昔書いた話で、ワタシの唯一の「あやかし」です。はい。
全5話。予約済みです。
死に戻り令嬢は千夜一夜を詠わない
里見透
キャラ文芸
陰謀により命を落とした令嬢は、時を遡り他人の姿で蘇る。
都を騒がす疫病の流行を前に、世間知らずの箱入り娘は、未来を変えることができるのか──!?
同人アンソロジー『DATTAMONO』収録作品です。
https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=2653711
求職令嬢は恋愛禁止な竜騎士団に、子竜守メイドとして採用されました。
待鳥園子
恋愛
グレンジャー伯爵令嬢ウェンディは父が友人に裏切られ、社交界デビューを目前にして無一文になってしまった。
父は異国へと一人出稼ぎに行ってしまい、行く宛てのない姉を心配する弟を安心させるために、以前邸で働いていた竜騎士を頼ることに。
彼が働くアレイスター竜騎士団は『恋愛禁止』という厳格な規則があり、そのため若い女性は働いていない。しかし、ウェンディは竜力を持つ貴族の血を引く女性にしかなれないという『子竜守』として特別に採用されることになり……。
子竜守として働くことになった没落貴族令嬢が、不器用だけどとても優しい団長と恋愛禁止な竜騎士団で働くために秘密の契約結婚をすることなってしまう、ほのぼの子竜育てありな可愛い恋物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる