84 / 163
season2
85話:アレクVS巨大ネズミ
しおりを挟む
ワタクシが自分の部屋に戻ると、机の上で小さなネズミが宝石の周囲をチョロチョロしているではありませんか。宝石を片付けずに外に出たのはうかつでした。
「うわっ、ネズミっ! ちょっと、その宝石に触らないでください!」
思わず手を伸ばすと、ネズミはびっくりしたのか逃げ出そうとして近くにあった薬瓶を倒してしまいました。
そのひょうしに瓶の蓋が外れて赤い液体がこぼれ、ネズミの顔をビシャっと濡らします。
そしてそのままネズミは、ワタクシの足元をすり抜けて廊下の方へ逃走してしまいました。
ワタクシも慌てて廊下に出ると、リビングへ向かう茶色い後ろ姿が見えます。
――あれ? なんだかさっきよりネズミが大きいような。
気のせいかと思いながらリビングへ行くと、そこには――巨大な獣の背中がありました。
獣はテーブルの上のビスケットを齧っているらしくポリポリという音が聞こえます。
「く、熊? いや、これはもしかして……」
キュッキューッ、という甲高い鳴き声に細くて長い尻尾。フサフサの毛で覆われた頭には赤い液体が付いていました。
間違いありません、先ほどのネズミです。
机の上に置いてあった魔力供給の薬をひっ被った結果、副作用で巨大化してしまったのでしょう。
「ひっ……ぁ……あ……アレクっ! アレク~‼」
「どうしたジェル!」
アレクは自室に居たらしく、ワタクシの声を聞いてすぐに駆けつけて来ました。
「――なんだこの化け物は!」
「ネズミです!」
「いくらなんでもでかすぎだろ!」
「ワタクシが作った薬のせいで大きくなっちゃったんですよ……ひゃぁっ!」
ビスケットを食べ終えたネズミは、急にこっちを向いてワタクシに襲い掛かってきたのです。
「ジェル!」
とっさにアレクが前に出て、ベストの裏側にいつも仕舞っているナイフを素早く取り出し、刃でネズミの攻撃を受け流しました。
ネズミはアレクを敵と認識したようで、彼に標的を変えて襲い掛かります。
「ジェル、危ないから逃げろ!」
「え、でもこのままじゃアレクが……」
「お兄ちゃんは大丈夫だから、早く逃げろ!」
アレクはナイフで応戦していますが、動きの素早さに苦戦しているようです。なんとかしないと。
後になって思えば、物理攻撃を完全に弾く障壁(しょうへき)をワタクシが張ればよかった話なんですが、その時はすっかり気が動転していて思いつきませんでした。
とにかくネズミをどうにかしないと、ということしか頭に無かったのです。
「何か方法は……そうだ、確か倉庫に――」
ワタクシは急いで店の倉庫へ行って、クラリネットのような形の笛を持ってリビングへ戻りました。
これはかつてドイツでネズミが大量発生した時に、笛の音でネズミを操ったとされるハーメルンの笛吹き男が持っていた笛なのです。
「この笛があれば、あの化け物ネズミを操ることができるはず……!」
リビングに戻ると、アレクが息を弾ませながらもネズミの攻撃を素早くかわしています。
「ジェル⁉」
「ふふふ……さぁ、このハーメルンの笛の威力をお目にかけましょう!」
――ぱ~ぷ~♪
アレクを援護するつもりで勢いよく笛を吹くと、リビングに間の抜けた情けない音が響きました。
そういえばワタクシ、楽器は聴く専門で演奏経験がまったくありませんでしたね……。
当然、効果があるはずもなく。ネズミは何事も無かったかのようにアレクに襲い掛かっています。
「あぁぁぁぁぁぁぁ! もうダメです~!」
ワタクシが叫んだその時、ネズミの動きがビクッと止まったかと思うと、あれよあれよという間にその体が小さくなっていったではありませんか。
「なんだ? 急に小さくなったぞ。どういうことだ?」
「――助かった。どうやら薬の効果が切れたみたいですね。これでもう、ただのネズミですよ」
ネズミはすばやく壁を登って、ドアの方へ逃げていきました。
慌ててアレクがその後を追いましたが、窓のすきまから外に逃げ出してしまい見つかりません。
アレクはしばらく注意深く窓の外を見ていましたが、ふと上の方に目をやって「あっ!」と叫ぶとワタクシを呼び寄せました。
「どうしたんですか? 窓の外に何か……あっ!」
窓から見える大きな木の上にはカラスの巣があって、そこにはギラギラと光る素材で作られた悪趣味なパンツが垂れ下がっています。
「ちくしょう、俺のおニューのパンツが……!」
「カラスって光りモノが好きって言いますけど本当なんですねぇ」
ワタクシ達はこれ以上やっかいな動物が入ってこないように、早急に結界を張りなおすことを決意したのでした。
「うわっ、ネズミっ! ちょっと、その宝石に触らないでください!」
思わず手を伸ばすと、ネズミはびっくりしたのか逃げ出そうとして近くにあった薬瓶を倒してしまいました。
そのひょうしに瓶の蓋が外れて赤い液体がこぼれ、ネズミの顔をビシャっと濡らします。
そしてそのままネズミは、ワタクシの足元をすり抜けて廊下の方へ逃走してしまいました。
ワタクシも慌てて廊下に出ると、リビングへ向かう茶色い後ろ姿が見えます。
――あれ? なんだかさっきよりネズミが大きいような。
気のせいかと思いながらリビングへ行くと、そこには――巨大な獣の背中がありました。
獣はテーブルの上のビスケットを齧っているらしくポリポリという音が聞こえます。
「く、熊? いや、これはもしかして……」
キュッキューッ、という甲高い鳴き声に細くて長い尻尾。フサフサの毛で覆われた頭には赤い液体が付いていました。
間違いありません、先ほどのネズミです。
机の上に置いてあった魔力供給の薬をひっ被った結果、副作用で巨大化してしまったのでしょう。
「ひっ……ぁ……あ……アレクっ! アレク~‼」
「どうしたジェル!」
アレクは自室に居たらしく、ワタクシの声を聞いてすぐに駆けつけて来ました。
「――なんだこの化け物は!」
「ネズミです!」
「いくらなんでもでかすぎだろ!」
「ワタクシが作った薬のせいで大きくなっちゃったんですよ……ひゃぁっ!」
ビスケットを食べ終えたネズミは、急にこっちを向いてワタクシに襲い掛かってきたのです。
「ジェル!」
とっさにアレクが前に出て、ベストの裏側にいつも仕舞っているナイフを素早く取り出し、刃でネズミの攻撃を受け流しました。
ネズミはアレクを敵と認識したようで、彼に標的を変えて襲い掛かります。
「ジェル、危ないから逃げろ!」
「え、でもこのままじゃアレクが……」
「お兄ちゃんは大丈夫だから、早く逃げろ!」
アレクはナイフで応戦していますが、動きの素早さに苦戦しているようです。なんとかしないと。
後になって思えば、物理攻撃を完全に弾く障壁(しょうへき)をワタクシが張ればよかった話なんですが、その時はすっかり気が動転していて思いつきませんでした。
とにかくネズミをどうにかしないと、ということしか頭に無かったのです。
「何か方法は……そうだ、確か倉庫に――」
ワタクシは急いで店の倉庫へ行って、クラリネットのような形の笛を持ってリビングへ戻りました。
これはかつてドイツでネズミが大量発生した時に、笛の音でネズミを操ったとされるハーメルンの笛吹き男が持っていた笛なのです。
「この笛があれば、あの化け物ネズミを操ることができるはず……!」
リビングに戻ると、アレクが息を弾ませながらもネズミの攻撃を素早くかわしています。
「ジェル⁉」
「ふふふ……さぁ、このハーメルンの笛の威力をお目にかけましょう!」
――ぱ~ぷ~♪
アレクを援護するつもりで勢いよく笛を吹くと、リビングに間の抜けた情けない音が響きました。
そういえばワタクシ、楽器は聴く専門で演奏経験がまったくありませんでしたね……。
当然、効果があるはずもなく。ネズミは何事も無かったかのようにアレクに襲い掛かっています。
「あぁぁぁぁぁぁぁ! もうダメです~!」
ワタクシが叫んだその時、ネズミの動きがビクッと止まったかと思うと、あれよあれよという間にその体が小さくなっていったではありませんか。
「なんだ? 急に小さくなったぞ。どういうことだ?」
「――助かった。どうやら薬の効果が切れたみたいですね。これでもう、ただのネズミですよ」
ネズミはすばやく壁を登って、ドアの方へ逃げていきました。
慌ててアレクがその後を追いましたが、窓のすきまから外に逃げ出してしまい見つかりません。
アレクはしばらく注意深く窓の外を見ていましたが、ふと上の方に目をやって「あっ!」と叫ぶとワタクシを呼び寄せました。
「どうしたんですか? 窓の外に何か……あっ!」
窓から見える大きな木の上にはカラスの巣があって、そこにはギラギラと光る素材で作られた悪趣味なパンツが垂れ下がっています。
「ちくしょう、俺のおニューのパンツが……!」
「カラスって光りモノが好きって言いますけど本当なんですねぇ」
ワタクシ達はこれ以上やっかいな動物が入ってこないように、早急に結界を張りなおすことを決意したのでした。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
我が家の家庭内順位は姫、犬、おっさんの順の様だがおかしい俺は家主だぞそんなの絶対に認めないからそんな目で俺を見るな
ミドリ
キャラ文芸
【奨励賞受賞作品です】
少し昔の下北沢を舞台に繰り広げられるおっさんが妖の闘争に巻き込まれる現代ファンタジー。
次々と増える居候におっさんの財布はいつまで耐えられるのか。
姫様に喋る犬、白蛇にイケメンまで来てしまって部屋はもうぎゅうぎゅう。
笑いあり涙ありのほのぼの時折ドキドキ溺愛ストーリー。ただのおっさん、三種の神器を手にバトルだって体に鞭打って頑張ります。
なろう・ノベプラ・カクヨムにて掲載中
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。

腐れヤクザの育成論〜私が育てました〜
古亜
キャラ文芸
たまたま出会ったヤクザをモデルにBL漫画を描いたら、本人に読まれた。
「これ描いたの、お前か?」
呼び出された先でそう問いただされ、怒られるか、あるいは消される……そう思ったのに、事態は斜め上に転がっていった。
腐(オタ)文化に疎いヤクザの組長が、立派に腐っていく話。
内容は完全に思い付き。なんでも許せる方向け。
なお作者は雑食です。誤字脱字、その他誤りがあればこっそり教えていただけると嬉しいです。
全20話くらいの予定です。毎日(1-2日おき)を目標に投稿しますが、ストックが切れたらすみません……
相変わらずヤクザさんものですが、シリアスなシリアルが最後にあるくらいなのでクスッとほっこり?いただければなと思います。
「ほっこり」枠でほっこり・じんわり大賞にエントリーしており、結果はたくさんの作品の中20位でした!応援ありがとうございました!
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる