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season1
45話:3枚の御札
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――男にはたとえどんな危険があったとしても行かねばならぬ時がある。
その時、俺はアンティークの店「蜃気楼」で、次の旅行先について弟のジェルマンと話し合いをしていた。
「なぁ、ジェル。限定品なんだよ。そこでしか買えない特別仕様のパン男ロボなんだよ……!」
「でもその地域はマフィアの抗争が盛んですし、つい最近だって爆弾テロがあったばかりですし……ワタクシは反対です!」
「そんなこと言うなよ、ロボ買ったらお兄ちゃんすぐ帰ってくるからさぁ……」
俺の好きなアニメ「パン男はつらいよ」がS国でブレイクしたのを記念して、S国限定で特別仕様のパン男ロボットが販売されることになった。
日本では販売される予定が無いから絶対買いに行きたいんだが、ジェルは「そんな危険なところに行かせられない」と、さっきからずっと渋い顔をして反対している。
「……通販じゃダメなんですか?」
「通販してねぇんだよ」
「じゃ、少々高くてもオークションで買うんじゃいけませんか?」
「こういうのは自分の足で買いに行くからいいんだよ!」
「はぁ……アレクは言い出したら聞かないし、しょうがないですねぇ」
俺のゆるぎないパン男ロボへの思いをジェルは理解したのか、軽くため息をつくと店のカウンターの引き出しをごそごそと探って俺に3枚の御札を手渡した。
渡された御札を見てみると、薄くて柔らかい紙の上に複雑な文字列が並んでいる。そのいくつかはルーン文字で書かれているようだった。
「なんだこれ?」
「旅先で困ったことがあればその御札にお願いしなさい。助けてくれますから」
「へぇ、便利だなぁー!」
「いいですか、その御札は3枚しかありません。つまり助けてくれるのは3回だけです。よく考えて使うんですよ?」
「おう、ありがとな!」
「――もしその3枚を使い切ったら即、帰国してもらいますからね?」
「わかった、わかった。わかったからそんな怖い顔しないでくれ」
真剣な顔で念を押すジェルの頭をポンポンと軽く撫でて、俺は御札をいつも着ているベストの内ポケットに入れた。
――そん時はさ、御札が必要になるなんて思ってもみなかったんだ。
こうして俺は、不安そうな表情のジェルに見送られてS国へ旅立った。
最初に向かった市内のデパートでは、もうパン男ロボは完売になっていた。
売り場では俺と同じように他所の国からはるばる来たけど買えなかったという人たちがたむろしていて、完売の文字やロボットのパネルの写真を撮っている。
やはりマフィアがいようがテロがあろうが、オタクの購買欲はそう簡単には消えないのだ。
「ここで売ってないとしたら、後は個人商店を当たるしかねぇかなぁ……」
それから、ネットの情報を頼りにまだ在庫があるという店を探し出した俺は、喜んでその店のある通りへやってきた。
「なんだ、やけに薄暗くて汚い通りだな……ホントにここかよ?」
その道は昼間だというのに、木々が日の光を遮ってる上に見通しが悪く、どこかアングラな雰囲気のある道だった。しかも道を聞こうにもどこにも人の姿が見当たらない。
「まいったな。これじゃ店がどこかわかんねぇぞ……」
困った俺は、ポケットの中の御札のことを思い出した。
その時、俺はアンティークの店「蜃気楼」で、次の旅行先について弟のジェルマンと話し合いをしていた。
「なぁ、ジェル。限定品なんだよ。そこでしか買えない特別仕様のパン男ロボなんだよ……!」
「でもその地域はマフィアの抗争が盛んですし、つい最近だって爆弾テロがあったばかりですし……ワタクシは反対です!」
「そんなこと言うなよ、ロボ買ったらお兄ちゃんすぐ帰ってくるからさぁ……」
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日本では販売される予定が無いから絶対買いに行きたいんだが、ジェルは「そんな危険なところに行かせられない」と、さっきからずっと渋い顔をして反対している。
「……通販じゃダメなんですか?」
「通販してねぇんだよ」
「じゃ、少々高くてもオークションで買うんじゃいけませんか?」
「こういうのは自分の足で買いに行くからいいんだよ!」
「はぁ……アレクは言い出したら聞かないし、しょうがないですねぇ」
俺のゆるぎないパン男ロボへの思いをジェルは理解したのか、軽くため息をつくと店のカウンターの引き出しをごそごそと探って俺に3枚の御札を手渡した。
渡された御札を見てみると、薄くて柔らかい紙の上に複雑な文字列が並んでいる。そのいくつかはルーン文字で書かれているようだった。
「なんだこれ?」
「旅先で困ったことがあればその御札にお願いしなさい。助けてくれますから」
「へぇ、便利だなぁー!」
「いいですか、その御札は3枚しかありません。つまり助けてくれるのは3回だけです。よく考えて使うんですよ?」
「おう、ありがとな!」
「――もしその3枚を使い切ったら即、帰国してもらいますからね?」
「わかった、わかった。わかったからそんな怖い顔しないでくれ」
真剣な顔で念を押すジェルの頭をポンポンと軽く撫でて、俺は御札をいつも着ているベストの内ポケットに入れた。
――そん時はさ、御札が必要になるなんて思ってもみなかったんだ。
こうして俺は、不安そうな表情のジェルに見送られてS国へ旅立った。
最初に向かった市内のデパートでは、もうパン男ロボは完売になっていた。
売り場では俺と同じように他所の国からはるばる来たけど買えなかったという人たちがたむろしていて、完売の文字やロボットのパネルの写真を撮っている。
やはりマフィアがいようがテロがあろうが、オタクの購買欲はそう簡単には消えないのだ。
「ここで売ってないとしたら、後は個人商店を当たるしかねぇかなぁ……」
それから、ネットの情報を頼りにまだ在庫があるという店を探し出した俺は、喜んでその店のある通りへやってきた。
「なんだ、やけに薄暗くて汚い通りだな……ホントにここかよ?」
その道は昼間だというのに、木々が日の光を遮ってる上に見通しが悪く、どこかアングラな雰囲気のある道だった。しかも道を聞こうにもどこにも人の姿が見当たらない。
「まいったな。これじゃ店がどこかわかんねぇぞ……」
困った俺は、ポケットの中の御札のことを思い出した。
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