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season1
23話:ジェルの葛藤
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こうして日々忙しく過ごしていると時が経つのは早いもので、アレクが呪いで子どもになってから2週間が経ってしまいました。
早く元に戻してあげないと……そう思うのですが、呪いの解析はなかなか進みません。
アレクからなかなか目を離せないのもあり、つい後回しになっていたのです。
そして次の日には、店に遊びに来た氏神のシロにも事情を知られることとなりました。
「最近ジェルお店閉めちゃってるし、どうしたのかと思ったら。まさかアレク兄ちゃんがそんなことになってたなんてね」
「これでも最初に比べるとアレクも少し聞き分けが良くなってくれたので多少はマシですが、やはり大変ですね」
ワタクシはアレクを膝の上に乗せて、シロに育児の様子を語りました。
「……でね、アレクったらお風呂で急に『ママンなのにどうしてちんちん付いてるんだ?』とか言うんですよ。そんなの仕様だから答えようもないじゃないですか!」
「うん、仕様だね」
「それなのにアレクったら……いやもう、可愛いからいいんですけども」
「うん」
シロは相槌をうちながら、アレクを観察するようにジッと見つめています。
他人に見つめられて緊張したのか、アレクはワタクシにギュっとしがみついて顔を隠してしまいました。
「おや、人見知りしてるんですかね。ふふ、珍しい」
「……ねぇ、ジェル。よかったら今すぐアレク兄ちゃんの呪い、僕が解こうか?」
「え……」
「僕は神だ。僕ならきっと今すぐ解けると思う」
――今すぐ。
「いえ、ワタクシが自分で何とかしますので大丈夫です。ワタクシの責任ですから」
気が付けば拒否の言葉が口からでていました。
「そう……でも、なるべく早く解いた方がお互いの為だよ?」
シロは心配そうに言います。
――えぇ、わかっています。わかっていますとも。きっとアレクだって元の姿に戻りたいはずです。
「でも……」
ワタクシはシロの視線に耐えられず、目を伏せました。
「ジェルがそうしたいなら僕は止めないけども。何か困ったことがあったら頼ってね」
そう言ってシロは帰っていきました。
彼を見送った後、ワタクシはリビングのソファーでぼんやりしていました。
「ママン、元気無い……?」
すぐ隣でアレクは絵本を見ていましたが、母親の様子がおかしいことが気になるのか心配そうに見上げ、小さな手を伸ばしてきました。
催促されるまま抱き上げ膝の上に乗せると、ワタクシの顔を兄と同じ澄んだ瞳で見つめます。
そう……この子は自分の子どもではなく兄のアレクサンドル。
だから早く元の姿に戻してあげないといけないんです。それなのに自分は。
「――元の姿になってしまったらきっと、ワタクシをママンと呼んでいたことも、こうやって過ごしたことも何もかも忘れてしまうんでしょうね……」
「ママン?」
「アレク……ごめんなさい」
「ママン、どうして泣いてるんだ?」
――でも。
どうかあと少し。あと少しだけ……この幸せな日々を続けてもいいでしょうか。
ワタクシは幼い身体をそっと抱きしめ、許しを請うのでした。
そして再び、アレクとの生活が始まりました。
ジンが2日に1回は様子を見にきてくれますし、最近はワタクシも少しは育児に慣れてきたように思います。
「アレク、今日は晩御飯に何が食べたいですか?」
「ハンバーグ!」
「ちゃんと人参も食べてくださいね」
「おう!」
そうそう、ジンが置いていった魔法のDVDは効き目バツグンでした。
その結果アレクの中でパン男ブームが到来したらしく、退屈だとすぐにパン男ごっこをしたがります。
「俺はパン男! オマエは悪いやつだからパンを食べろ!」
「えぇ……そんな話じゃなかったでしょ⁉」
「ママン! もっとバイキンらしくして!」
演技指導がざっくりとしているのになかなか厳しく、簡単にOKがでないので困ります。
「ママン、トータスが見たい」
「トータス? 亀?」
「亀違う! トータク!」
「董卓? 黄巾の乱ですか?」
「きくぁんしゃー!」
あぁ、機関車の名前でしたか。
「はいはい、じゃあDVD観ましょうね~」
アレクはおとなしく機関車のDVDを観ています。
最近は彼も聞き分けが良くなったので時間に多少余裕ができ、呪いの解析はすっかり完了していました。
早く元に戻してあげないと……そう思うのですが、呪いの解析はなかなか進みません。
アレクからなかなか目を離せないのもあり、つい後回しになっていたのです。
そして次の日には、店に遊びに来た氏神のシロにも事情を知られることとなりました。
「最近ジェルお店閉めちゃってるし、どうしたのかと思ったら。まさかアレク兄ちゃんがそんなことになってたなんてね」
「これでも最初に比べるとアレクも少し聞き分けが良くなってくれたので多少はマシですが、やはり大変ですね」
ワタクシはアレクを膝の上に乗せて、シロに育児の様子を語りました。
「……でね、アレクったらお風呂で急に『ママンなのにどうしてちんちん付いてるんだ?』とか言うんですよ。そんなの仕様だから答えようもないじゃないですか!」
「うん、仕様だね」
「それなのにアレクったら……いやもう、可愛いからいいんですけども」
「うん」
シロは相槌をうちながら、アレクを観察するようにジッと見つめています。
他人に見つめられて緊張したのか、アレクはワタクシにギュっとしがみついて顔を隠してしまいました。
「おや、人見知りしてるんですかね。ふふ、珍しい」
「……ねぇ、ジェル。よかったら今すぐアレク兄ちゃんの呪い、僕が解こうか?」
「え……」
「僕は神だ。僕ならきっと今すぐ解けると思う」
――今すぐ。
「いえ、ワタクシが自分で何とかしますので大丈夫です。ワタクシの責任ですから」
気が付けば拒否の言葉が口からでていました。
「そう……でも、なるべく早く解いた方がお互いの為だよ?」
シロは心配そうに言います。
――えぇ、わかっています。わかっていますとも。きっとアレクだって元の姿に戻りたいはずです。
「でも……」
ワタクシはシロの視線に耐えられず、目を伏せました。
「ジェルがそうしたいなら僕は止めないけども。何か困ったことがあったら頼ってね」
そう言ってシロは帰っていきました。
彼を見送った後、ワタクシはリビングのソファーでぼんやりしていました。
「ママン、元気無い……?」
すぐ隣でアレクは絵本を見ていましたが、母親の様子がおかしいことが気になるのか心配そうに見上げ、小さな手を伸ばしてきました。
催促されるまま抱き上げ膝の上に乗せると、ワタクシの顔を兄と同じ澄んだ瞳で見つめます。
そう……この子は自分の子どもではなく兄のアレクサンドル。
だから早く元の姿に戻してあげないといけないんです。それなのに自分は。
「――元の姿になってしまったらきっと、ワタクシをママンと呼んでいたことも、こうやって過ごしたことも何もかも忘れてしまうんでしょうね……」
「ママン?」
「アレク……ごめんなさい」
「ママン、どうして泣いてるんだ?」
――でも。
どうかあと少し。あと少しだけ……この幸せな日々を続けてもいいでしょうか。
ワタクシは幼い身体をそっと抱きしめ、許しを請うのでした。
そして再び、アレクとの生活が始まりました。
ジンが2日に1回は様子を見にきてくれますし、最近はワタクシも少しは育児に慣れてきたように思います。
「アレク、今日は晩御飯に何が食べたいですか?」
「ハンバーグ!」
「ちゃんと人参も食べてくださいね」
「おう!」
そうそう、ジンが置いていった魔法のDVDは効き目バツグンでした。
その結果アレクの中でパン男ブームが到来したらしく、退屈だとすぐにパン男ごっこをしたがります。
「俺はパン男! オマエは悪いやつだからパンを食べろ!」
「えぇ……そんな話じゃなかったでしょ⁉」
「ママン! もっとバイキンらしくして!」
演技指導がざっくりとしているのになかなか厳しく、簡単にOKがでないので困ります。
「ママン、トータスが見たい」
「トータス? 亀?」
「亀違う! トータク!」
「董卓? 黄巾の乱ですか?」
「きくぁんしゃー!」
あぁ、機関車の名前でしたか。
「はいはい、じゃあDVD観ましょうね~」
アレクはおとなしく機関車のDVDを観ています。
最近は彼も聞き分けが良くなったので時間に多少余裕ができ、呪いの解析はすっかり完了していました。
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