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season1
20話:ジェルはママンです!?
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「じゃ、早速とりかかりますかね」
ワタクシは店を閉めて自室の机に腕輪を持ち込み、呪いの解析を始めました。
腕輪をルーペで覗き、浮かび上がる文字列をチェックしては、手元の羊皮紙に特別に調合したインクと水晶のペンでひたすら文字を書いていきます。
3割程度書き写したところで部屋にコンコン、とノックの音が響きました。
「おい、ジェル。昨日借りた本の続きってある?」
ドア越しに聞こえたのは兄の声です。寝てたと思ってたらもう起きてたみたいですね。
「アレク、今は手が離せないので勝手に入って持って行ってください」
おう、という返事と共にドアの開く音がして彼が部屋に入ってきました。
「わりぃ、取り込み中だったか。どうしても続きが気になっちまってさぁ……ん、何やってんだ?」
「ジンからの頼まれものです。呪いを解いて欲しいんだそうで……」
ワタクシはアレクに背を向けて机に座ったまま答えました。
「ふーん、確かに呪いとかジェルの得意分野だもんなぁ」
そう言いながら彼は本棚を物色しているのか、本をパラパラとめくる音が聞こえます。
「なぁ、ジェル。続きどこだ? いっぱいあってわかんねぇぞ」
「しょうがないですね……」
ワタクシは文字を書いていた手を止め、机に腕輪を置いて席を立ちました。
そして目的の本を見つけて、アレクに手渡そうとした瞬間。
急に机の上の腕輪が光り始め、その光が収束してワタクシの方へ飛んできました。
「ジェル!」
とっさにアレクがワタクシに覆い被さり、光は彼の背に当たりました。
「え、アレク⁉」
「ジェル、大丈夫か……」
その声を最後に目の前からアレクの姿が消え、彼の服がバサリと落ちました。
「……あ、アレク! アレク!」
静かになった部屋の中、ワタクシが必死で彼の名を呼ぶと、その声に応えるかのようにわずかに布の擦れる音がします。
「ん……?」
目の前の服をよく見ると、少しこんもりと膨らんでいて、それが少し動いたかと思うとそこから小さな男の子が顔を出しました。
少し癖のある黒い髪。くりっとした美しいマリンブルーの瞳。この子はもしかして……
「あなた……アレクですか⁉」
「んー? ママン……?」
男の子はワタクシを見てママンと呼んで首をかしげました。わぁ、可愛い……いや、そうじゃなくて。
「えーと。あなた、お名前は?」
「あれく……しゃんどる……」
男の子は、たどたどしく答えます。
「何歳?」
「うーん……なんさい? わかんない……」
見たところ3,4歳といったところでしょうか。どうやらこの子どもはアレク本人のようですが、姿だけでなく中身も幼くなってしまったようです。
「アレク、ワタクシが誰かわかりますか?」
「ママン!」
アレクはうれしそうに元気良く答えました。
――ママン? ママンはフランス語で母親のことです。つまりアレクにはワタクシが母親に見えると。
「いえいえ、ママンじゃないですよ。ワタクシはあなたの弟のジェルマンです」
訂正しても理解できないらしく、彼は不思議そうに首をかしげます。
「ジェル……? ジェルは赤ちゃんだぞ……?」
「赤ちゃん?」
――あぁ、なるほど。アレクとワタクシは2歳違いですから、彼の記憶の中の弟はまだ赤ん坊なのですね。
「ママンは……俺のママンじゃないのか? パパとジェルはどこ?」
アレクは急に不安そうな顔になり、確認するようにじっと見つめてきました。
そう言えば母も金髪でワタクシと顔が似てましたから、幼い彼がそう思うのも仕方ないかもしれませんね。このまま否定し続けても彼を混乱させるだけでしょう。
ワタクシはその場にしゃがみこんで小さなアレクに目線を合わせ、努めて優しく微笑みかけながら言いました。
「えぇ。ワタクシはあなたのママンですよ。パパとジェルはお出かけしています」
「お出かけ……」
「だからしばらくの間、ママンと2人でお留守番しましょうね」
「うん、わかった! おるすばんだな。ママン、抱っこ!」
アレクはうれしそうに目を輝かせ、手を伸ばしてきました。
子どもを抱っこなんてしたことないのでどうしたらいいのかわからず戸惑っていると、アレクは抱っこして、とさらに手を伸ばし何度もせがんできます。
恐る恐る背中と脚を抱え、抱き上げてみるとアレクはキャッキャと声をあげて喜びます。
うっ、子どもって予想以上に重い……
抱っこして気づきましたが、この子、丸裸じゃありませんか。
でも子供服なんて我が家にはありません。このまま裸の子どもを連れて歩くわけにもいかず、かと言ってこの子を家に置いて買いに行くのも心配です。
「困りましたね……」
とりあえずバスタオルで包んでみましたが、当然これでは服には見えません。でもどうしようも無いし、この姿で一緒に買いに行くべきか……
しばらく悩んでいると、急に店の方から声がしました。
「ジェル子ちゃ~ん! アタシよぉ~!」
この声はジン。ちょうど良いところに来てくれた……!
ワタクシはアレクを抱っこしたまま、急いで店のドアの鍵を開けてジンを迎え入れました。
ワタクシは店を閉めて自室の机に腕輪を持ち込み、呪いの解析を始めました。
腕輪をルーペで覗き、浮かび上がる文字列をチェックしては、手元の羊皮紙に特別に調合したインクと水晶のペンでひたすら文字を書いていきます。
3割程度書き写したところで部屋にコンコン、とノックの音が響きました。
「おい、ジェル。昨日借りた本の続きってある?」
ドア越しに聞こえたのは兄の声です。寝てたと思ってたらもう起きてたみたいですね。
「アレク、今は手が離せないので勝手に入って持って行ってください」
おう、という返事と共にドアの開く音がして彼が部屋に入ってきました。
「わりぃ、取り込み中だったか。どうしても続きが気になっちまってさぁ……ん、何やってんだ?」
「ジンからの頼まれものです。呪いを解いて欲しいんだそうで……」
ワタクシはアレクに背を向けて机に座ったまま答えました。
「ふーん、確かに呪いとかジェルの得意分野だもんなぁ」
そう言いながら彼は本棚を物色しているのか、本をパラパラとめくる音が聞こえます。
「なぁ、ジェル。続きどこだ? いっぱいあってわかんねぇぞ」
「しょうがないですね……」
ワタクシは文字を書いていた手を止め、机に腕輪を置いて席を立ちました。
そして目的の本を見つけて、アレクに手渡そうとした瞬間。
急に机の上の腕輪が光り始め、その光が収束してワタクシの方へ飛んできました。
「ジェル!」
とっさにアレクがワタクシに覆い被さり、光は彼の背に当たりました。
「え、アレク⁉」
「ジェル、大丈夫か……」
その声を最後に目の前からアレクの姿が消え、彼の服がバサリと落ちました。
「……あ、アレク! アレク!」
静かになった部屋の中、ワタクシが必死で彼の名を呼ぶと、その声に応えるかのようにわずかに布の擦れる音がします。
「ん……?」
目の前の服をよく見ると、少しこんもりと膨らんでいて、それが少し動いたかと思うとそこから小さな男の子が顔を出しました。
少し癖のある黒い髪。くりっとした美しいマリンブルーの瞳。この子はもしかして……
「あなた……アレクですか⁉」
「んー? ママン……?」
男の子はワタクシを見てママンと呼んで首をかしげました。わぁ、可愛い……いや、そうじゃなくて。
「えーと。あなた、お名前は?」
「あれく……しゃんどる……」
男の子は、たどたどしく答えます。
「何歳?」
「うーん……なんさい? わかんない……」
見たところ3,4歳といったところでしょうか。どうやらこの子どもはアレク本人のようですが、姿だけでなく中身も幼くなってしまったようです。
「アレク、ワタクシが誰かわかりますか?」
「ママン!」
アレクはうれしそうに元気良く答えました。
――ママン? ママンはフランス語で母親のことです。つまりアレクにはワタクシが母親に見えると。
「いえいえ、ママンじゃないですよ。ワタクシはあなたの弟のジェルマンです」
訂正しても理解できないらしく、彼は不思議そうに首をかしげます。
「ジェル……? ジェルは赤ちゃんだぞ……?」
「赤ちゃん?」
――あぁ、なるほど。アレクとワタクシは2歳違いですから、彼の記憶の中の弟はまだ赤ん坊なのですね。
「ママンは……俺のママンじゃないのか? パパとジェルはどこ?」
アレクは急に不安そうな顔になり、確認するようにじっと見つめてきました。
そう言えば母も金髪でワタクシと顔が似てましたから、幼い彼がそう思うのも仕方ないかもしれませんね。このまま否定し続けても彼を混乱させるだけでしょう。
ワタクシはその場にしゃがみこんで小さなアレクに目線を合わせ、努めて優しく微笑みかけながら言いました。
「えぇ。ワタクシはあなたのママンですよ。パパとジェルはお出かけしています」
「お出かけ……」
「だからしばらくの間、ママンと2人でお留守番しましょうね」
「うん、わかった! おるすばんだな。ママン、抱っこ!」
アレクはうれしそうに目を輝かせ、手を伸ばしてきました。
子どもを抱っこなんてしたことないのでどうしたらいいのかわからず戸惑っていると、アレクは抱っこして、とさらに手を伸ばし何度もせがんできます。
恐る恐る背中と脚を抱え、抱き上げてみるとアレクはキャッキャと声をあげて喜びます。
うっ、子どもって予想以上に重い……
抱っこして気づきましたが、この子、丸裸じゃありませんか。
でも子供服なんて我が家にはありません。このまま裸の子どもを連れて歩くわけにもいかず、かと言ってこの子を家に置いて買いに行くのも心配です。
「困りましたね……」
とりあえずバスタオルで包んでみましたが、当然これでは服には見えません。でもどうしようも無いし、この姿で一緒に買いに行くべきか……
しばらく悩んでいると、急に店の方から声がしました。
「ジェル子ちゃ~ん! アタシよぉ~!」
この声はジン。ちょうど良いところに来てくれた……!
ワタクシはアレクを抱っこしたまま、急いで店のドアの鍵を開けてジンを迎え入れました。
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