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season1
14話:幸せを呼ぶ羽子板の真相
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「まったく、誰がキス魔だよ。ちぇ~、ワンちゃんいいなぁ……」
「ほら、アレク兄ちゃん。今日は羽根突きしに来たんでしょ。はい、これ」
そう言ってシロが羽子板をアレクに差し出しました。
「ここは皆が参拝してるから、ちょっと離れたところでやろうね」
「おう、わかった」
拝殿の端にちょうど空き地のようになっている場所があったので、そこで開始することにしました。ちょっと他人の目がある場所ではありますが、羽根突きをするだけですからそこまで目を引くこともないでしょう。
ワタクシも羽子板を受け取り、羽根が付いた丸い玉を握りました。
「さぁ、いきますよアレク!」
「おう! どっからでもかかってこい!」
開始の合図とともに、カーンと乾いた音と共に勢いよく羽根が宙を舞います。
最初は調子よく打ち合いをしていたのですが、しばらくすると観戦していたシロが急に変なことを言いました。
「ねぇねぇ、その羽子板が入ってた箱の裏に変なことが書いてあるんだけど!」
「えっ」
その声に気をとられたアレクが羽子板を盛大に空振りさせて、羽根がぽとりと地面に落ちました。
すると急にどこからともなく、ちゅんちゅんと鳥の鳴き声がして大量のすずめが現れ、こちらに向かって飛んでくるではありませんか。
すずめの大群はアレクの頭上をかすめて遠くへ飛んでいきました。なぜかアレクは頭を手で押さえてすずめを睨んでいます。
「おい、頭にすずめのフンが落ちてきたぞ! ついてねぇなぁ……ジェル、拭く物もってない?」
アレクはティッシュを受け取り、フンをぬぐいました。
「急に災難でしたね。でもアレクにそんなことがあるとは珍しい」
「だよなぁ、頭にフンとか初めてかも」
「アレク兄ちゃんが災難に遭った……ねぇこれ見て、もしかしてここに書いてあることが起きたんじゃない?」
驚いた様子のシロが、そう言いながら蓋の裏側をこちらに見せると、裏には細い筆で書いたと思われる文字でこんなことが書いてありました。
一、一度遊戯を開始すると二百五十六回、打ち合いを完了させないと一昼夜のちに大きな災厄が訪れる
二、羽根を落とした者に大小問わず無作為な内容の災厄が訪れる
三、打ち合い完了後にその場に大きな幸運が訪れる
「大きな災厄が訪れるってなんだよこれ!」
「大きな災厄……地震とか何かの天変地異があるということでしょうか?」
「たぶんそういうのも含まれるよねぇ……」
シロがワタクシの言葉に頷きました。
「それを防ごうと思ったら俺とジェルで明日までに256回もラリーしなきゃなんねぇってこと?」
アレクが、げんなりした様子で声をあげます。
「そうなりますね……シロ、なんとかなりませんか?」
神であるシロならなんとか無かったことにできるのではと思い問いかけましたが、残念ながらそう上手くはいかないようです。
「これは個人がかけた呪いとかそんなレベルの話じゃなくて、神器に近い物だと思うから僕じゃ無効にはできないよ」
シロはお手上げ、と言わんばかりに肩をすくめました。
「おかしいですねぇ……『幸せを呼ぶ羽子板』と箱に書いてたのに」
そう言いながらワタクシが蓋を手にとり、よく見てみますと半額シールが少しはがれかけていて、下になにか文字のようなものが見えるではありませんか。
不審に思ってそっとシールをはがしてみると『幸せを呼ぶ』の手前に『不』の文字が書かれていました。
「不幸せを呼ぶ羽子板。なんて陰湿な……!」
「とりあえず、ゲーム始めちゃったからには終わらせないといけないね。あと何回くらいだろう」
「あと230回くらいは必要かと」
「えぇ~まだそんなにあるのかよ!」
「じゃ、僕がカウントするよ。ジェルもアレク兄ちゃんもがんばって!」
シロに励まされ、ワタクシ達は再び打ち合いを始めました。青空の下、カンッ、カンッと乾いた音が響きます。
「ほら、アレク兄ちゃん。今日は羽根突きしに来たんでしょ。はい、これ」
そう言ってシロが羽子板をアレクに差し出しました。
「ここは皆が参拝してるから、ちょっと離れたところでやろうね」
「おう、わかった」
拝殿の端にちょうど空き地のようになっている場所があったので、そこで開始することにしました。ちょっと他人の目がある場所ではありますが、羽根突きをするだけですからそこまで目を引くこともないでしょう。
ワタクシも羽子板を受け取り、羽根が付いた丸い玉を握りました。
「さぁ、いきますよアレク!」
「おう! どっからでもかかってこい!」
開始の合図とともに、カーンと乾いた音と共に勢いよく羽根が宙を舞います。
最初は調子よく打ち合いをしていたのですが、しばらくすると観戦していたシロが急に変なことを言いました。
「ねぇねぇ、その羽子板が入ってた箱の裏に変なことが書いてあるんだけど!」
「えっ」
その声に気をとられたアレクが羽子板を盛大に空振りさせて、羽根がぽとりと地面に落ちました。
すると急にどこからともなく、ちゅんちゅんと鳥の鳴き声がして大量のすずめが現れ、こちらに向かって飛んでくるではありませんか。
すずめの大群はアレクの頭上をかすめて遠くへ飛んでいきました。なぜかアレクは頭を手で押さえてすずめを睨んでいます。
「おい、頭にすずめのフンが落ちてきたぞ! ついてねぇなぁ……ジェル、拭く物もってない?」
アレクはティッシュを受け取り、フンをぬぐいました。
「急に災難でしたね。でもアレクにそんなことがあるとは珍しい」
「だよなぁ、頭にフンとか初めてかも」
「アレク兄ちゃんが災難に遭った……ねぇこれ見て、もしかしてここに書いてあることが起きたんじゃない?」
驚いた様子のシロが、そう言いながら蓋の裏側をこちらに見せると、裏には細い筆で書いたと思われる文字でこんなことが書いてありました。
一、一度遊戯を開始すると二百五十六回、打ち合いを完了させないと一昼夜のちに大きな災厄が訪れる
二、羽根を落とした者に大小問わず無作為な内容の災厄が訪れる
三、打ち合い完了後にその場に大きな幸運が訪れる
「大きな災厄が訪れるってなんだよこれ!」
「大きな災厄……地震とか何かの天変地異があるということでしょうか?」
「たぶんそういうのも含まれるよねぇ……」
シロがワタクシの言葉に頷きました。
「それを防ごうと思ったら俺とジェルで明日までに256回もラリーしなきゃなんねぇってこと?」
アレクが、げんなりした様子で声をあげます。
「そうなりますね……シロ、なんとかなりませんか?」
神であるシロならなんとか無かったことにできるのではと思い問いかけましたが、残念ながらそう上手くはいかないようです。
「これは個人がかけた呪いとかそんなレベルの話じゃなくて、神器に近い物だと思うから僕じゃ無効にはできないよ」
シロはお手上げ、と言わんばかりに肩をすくめました。
「おかしいですねぇ……『幸せを呼ぶ羽子板』と箱に書いてたのに」
そう言いながらワタクシが蓋を手にとり、よく見てみますと半額シールが少しはがれかけていて、下になにか文字のようなものが見えるではありませんか。
不審に思ってそっとシールをはがしてみると『幸せを呼ぶ』の手前に『不』の文字が書かれていました。
「不幸せを呼ぶ羽子板。なんて陰湿な……!」
「とりあえず、ゲーム始めちゃったからには終わらせないといけないね。あと何回くらいだろう」
「あと230回くらいは必要かと」
「えぇ~まだそんなにあるのかよ!」
「じゃ、僕がカウントするよ。ジェルもアレク兄ちゃんもがんばって!」
シロに励まされ、ワタクシ達は再び打ち合いを始めました。青空の下、カンッ、カンッと乾いた音が響きます。
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