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3章:攻略キャラ、大集合?
彼の秘密。 ――1
しおりを挟む――とぷん、とまるで海の中に落ちたかのような感覚。息はできるし、目を開けても海水が目にしみるということもない。そもそも海じゃない。
これはきっと夢だ。明晰夢というやつ。ただ、なんでこんな夢を見ているんだろう? だって、周りを見渡してもただの暗闇。深く深く、落ちていく夢なんて、幸先悪そうな夢じゃないか。
とはいえ、落ちるだけでは嫌なので、なんとか浮上できないものかともがいてみる。夢の中なんだ。ある程度、オレがコントロールできるはず。
上へ、上へと泳いでみる。そのうちに上に向かっているのか下に沈んでいるのかわからなくなってきた。感覚が狂わされているのかも。
『なぜ、抗う?』
耳元で囁くような声。びくりと身体が強張った。その声はとても低く、聞いたことのない声だった。
『なぜ、糸が切れた?』
また、違う声。今度は若い女性のような声だった。糸? って、もしかして、乙女ゲームのキャラクターとして行動していないから?
なら、この声は――……
「――オレらを縛りつけている、世界の声……?」
双子の姉であるシェリルを悪役令嬢に仕立て、断罪させる世界の声なのだろうかと辺りを見渡す。真っ暗なままだ。でも、見上げるときらりと一筋の光が視界に入った。
手を伸ばし、その光に触れる。ぐっと引き寄せられるように、腕を引っ張られた。
「エリスさま!」
――ハッとして、夢から覚めた。
「大丈夫ですか、エリスさま」
心配そうにオレの顔を覗き込むカイル。彼はしっかりと腕を掴んでいて、彼が引っ張り上げてくれたのだと感じ、改めて顔を向けた。
「大丈夫、ごめん。なんか変な夢を見たみたい」
「それはきっと『世界の夢』だね」
すっと姿を現したのはリンジーだった。
「まったく、干渉不要と言っているのに」
ぼそりと呟かれた言葉に、首を傾げる。干渉不要、って『世界』のこと? リンジーはこの世界と一体どんな関係なんだ。
「リンジー卿、あなたは一体、何者なのですか?」
カイルが言葉を僅かに震えさせながらリンジーに問う。真摯なまなざしを受けて、リンジーは眉を下げた。
「――調停者」
リンジーは右手を腰に添えて、口元に弧を描いた。ぴくり、とオレの腕を掴んでいたカイルの手が震えた。それが怯えなのか、ただ単に驚いたからなのかはわからなかった。
っていうか、リンジーって攻略キャラなんだよな? セシリアが言うには。そんな人物が調停者? 調停者ってあれだよな、争いごとを解決に導く人。
一体どういうことなんだ? 頭が混乱してきたぞ。
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