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2章:いろんな人の、いろんな事情。
再び、王城へ ――10
しおりを挟むローレンさんは話をしながら、王家から隣国の公爵家に嫁いだらしい。そして、現在夫であるスマイス公爵と派手に喧嘩をして、家出していたところを陛下が声を掛けた、とのこと。
「……な、んというか、とても行動的ですね?」
「うふふ」
扇子で口元を隠して声を出すローレンさま。カイルとセシリアも椅子に座って、刺繍を習った。その教え方がとても丁寧で、子どもたちも真剣な表情で聞いていた。
「わたくし、本当はデザイナーになりたかったの」
刺繍を教えている手を止めて、しみじみと呟く。王家に生まれた人でも、夢を持つんだなぁと思った。……いや、その、王族って道が広いようで狭い気がするから、つい。
ちなみにローレンさん、陛下のお姉さんらしい。髪の毛が赤っぽいのはそのためか。
ローレンさまに刺繍を教えてもらいながら、ちくちくと針を動かしていると「やっぱり」と彼女が声を出す。
「あなた、アレンにハンカチを渡した?」
「え? はい」
どうして知っているんだろう? とローレンさまを見ると、彼女はオレに近付いて耳元で囁いた。
「アレンがとても大事にしているのよ、あなたの贈ったハンカチ。あの子と友達になってくれて、ありがとうね」
そう言って微笑むローレンさまは、びっくりするほど優しいまなざしをオレに向けていた。甥っ子に友達ができて嬉しいのかもしれない。個人的にはあの大量のプレゼントの中から、アレン殿下がオレの贈ったハンカチを使っていることにも驚きだ。
「……アレン殿下はお元気ですか?」
「ええ。元気そうに勉強しているわ。アレンは国を背負っていくのだから、教育が厳しくなってしまうのが難なのよ。だけど、休憩の時間にこっそりとあなたからもらったハンカチを取り出して、眺めているの。可愛いでしょう?」
ハンカチがすっごく大切にされているのはわかったけど、なんでそんなに大切にしてくれているのだろう?
ローレンさまは他の子たちの刺繍を見始めた。アドバイスをしたり、実際にやってみせたり。みんな楽しそうに刺繍をしている。教会でやっていたからか、結構みんな器用だなぁ。
「……刺繍って難しいですね」
ぽそりと呟いたカイルの手にある刺繍は、とても……こう、カイルのイメージとは正反対のものだった。彼にも苦手なものがあったとは驚きだ。オレはどこをどうしたらこうなるんだと、じっと見つめてしまった。
「カイルって、こういうの苦手なんだ?」
「恥ずかしながら、鍛錬ばかりしていたもので……。普通に服を繕うことならまだできるのですが……基本、真っ直ぐ縫うだけですし」
器用なのか不器用なのか、わからないことを言っている。
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