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2章:いろんな人の、いろんな事情。
再び、王城へ ――7
しおりを挟むいつの間にか来ていたセシリアにそう言われて、確かに、と納得した。そこからは速攻で決着がついた。相手がカイルの勢いに負けてバランスを崩し、こけたのだ。すかさず首元に剣の切っ先を突き付けて――カイルの勝利が、確定した。
鞘をぎゅっと握ってカイルに近付くと、彼は「エリスさま」と爽やかな笑顔を浮かべて鞘を受け取り、剣を鞘に戻した。
「お相手、ありがとうございました」
対戦相手に対して丁寧に一礼したが、その瞳がとても冷たい。「ヒッ」と相手が短い悲鳴を上げた。
「あなたは国王陛下から、この子たちの指導を任された立場、ですよね。私に勝てないくらいですのに、本当に指導ができるのですか?」
強さ=指導力ってわけではないだろうけど……カイル、思いっきり煽ってんなぁ。まぁ、陛下が彼に直接頼んだのか、陛下から騎士団長へ、騎士団長から彼へと指定したかはわからないけれど。どちらにせよ、『国王陛下の命令』であることは確かだ。
未だに立ち上がろうとしない対戦相手に、そっと手を差し出す。
「カイル、そこまで。ええと、大丈夫ですか?」
「……別に、手を貸されなくても立てる」
ショックを受けていた彼は、ハッとしたように目を見開き、それから自分の力で立ち上がった。転んだときにちょっと足を捻ってしまったのか、ちょっとふらついている彼に、オレは光魔法を使った。
このくらいなら大丈夫だろ、たぶん、きっと。ぎょっとしたようにカイルがオレを見たのはスルー。
「エリスさま……! 魔法は控えてください……!」
「平気だよ、このくらい。心配性。ええと、子どもたちは本当に素人なんです。剣の持ち方から指導してくださ――」
「……僕の怪我を治してくれるなんて……きみは、天使なのか?」
おっと、なんか変なことを言い出した。光魔法使っただけで天使はねぇわ……。ばっとカイルがオレと彼の間に挟まる形で前に出た。
「天使じゃないです、人間です。ええと、あの子たちの指導、任せて良いんですよね?」
「ああ、任せたまえ、僕の天使!」
「……人間だってば」
ぱぁっと表情を明るくした彼は、子どもたちのところへ走っていった。今度はちゃんと指導してくれるみたいだ。
カイルがすごく複雑そうな表情でこっちを見ている。すっと視線を合わさないように逸らした。
「はぁ……」
重々しくカイルがため息を吐くのを聞いて、オレは後頭部に手を置いて軽く掻いた。
「えーっと、なんか、すごい人が指導することになったね?」
「思い込みが激しいんですよ、彼。学園でも有名人でした。どうやら私のことを覚えていないようでしたが」
学園? まさかのクラスメイトだったのか!?
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