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2章:いろんな人の、いろんな事情。
再び、王城へ ――5
しおりを挟む「どうかその記憶は消去してください」
「ははは、考えておく。それでは、あとは任せて良いか?」
「はい」
ぽんぽんとオレの頭を撫で、陛下は子どもたちをちらりと見てから、部屋から去って行った。
陛下が離れたタイミングを見計らって、セシリアが近付いてきた。
「お、おおに、お兄ちゃん……」
ほんのりと頬を朱に染めて、迷子のように戸惑ったような表情を浮かべてオレの袖をきゅっと掴むセシリアに、空いているほうの手でぽん、と頭を撫でた。
「オレらがいない間になにがあったんだ?」
問いかけると、セシリアは「なにも」と答えた。嘘をついているようには見えないし、一体リンジーはなにを思って彼女にプロポーズしたんだろう。
「セシリアは、リンジーのことをどう思う?」
「わ、わかんないよ。……でもね、確かめなきゃいけないことがあるの」
「確かめなきゃいけないこと?」
「うん……それをしてからじゃないと、とても返事なんてできないよ……」
リンジーに確かめなきゃいけないことってなんだろう? セシリアは気持ちがだいぶ落ち着いたのか、袖から手を離すとオレの手をぎゅっと握った。
「それに、今は子どもたちの相手をするほうが先! でしょ?」
「そうだな」
子どもたちがきゃあきゃあと賑やかに騒いでいる中に、セシリアがオレの手を引っ張って輪に入る。手を引く彼女の後ろ姿に沙織が重なり、なんだか不思議な気持ちになった。
子どもたちは元気いっぱいで、楽しそうに王宮の生活を話してくれた。
陛下はオレらの要望をいろいろと聞いてくれるみたいだし、あんまり心配いらなかったかな?
子どもたちは新しい生活にワクワクしているようだ。ただ、不安もあるのか表情が暗い子たちもいた。その子たちに話しかけて、どんな不安があるのかを聞いて、「とりあえずやってみてからにしよう?」と声を掛けた。
子どもたちがどんな選択をするのか、それを見守ろう。
みんなを導く人が良い人でありますように、と願いながら子どもたちの話に耳を傾けた。
衣食住を約束してくれたからか、ちゃんと食事も配膳された。彩り豊かな食事はとても美味しかった。子どもたちも目を輝かせ、夢中になって食べていたのを見て、教会では一体どんな食事を摂らせていたのか……あのシスターの顔を思い出すとなんだか不快な気持ちになった。それを悟られないように、こっそりと息を吐く。
ご飯を食べたら眠くなったのか、小さな子どもたちが目を擦り始め、お昼寝をさせるために小さい子たちを別室へ向かわせる。
遊ぶための部屋と寝室は別々のようだ。……まぁ、子どもたちの人数も人数だしね。小さい子たちを大きなベッドに横にさせると、あっという間に眠った。
すやすやと寝息を立てる子どもたちを眺め、オレらも少し休憩することにした。
――この子たちがやりたいことを見つけられますように。導く人が良い人でありますように。
ただ、その考えは甘かったと、翌日思い知った。
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