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2章:いろんな人の、いろんな事情。

そして、それから。 ――14

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 ミニマドレーヌに手を伸ばし、ひょいと口の中に放り込む。もぐもぐと咀嚼をして、口の中に広がる甘さとバターの風味を感じながら、お茶を飲んだ。

「そのおかげでオレらは無事だったのだから、感謝しないとな」
「そうですね」

 カイルもお茶を飲んでからうなずいた。とりあえず、全員無傷であのシスターたちを捕らえることができたのだから、少し肩の力を抜いてもいいはず。

 リンジーが協力的なのは本当に助かったし、このまま彼が味方でいてくれるのなら心強い。

 気が抜けたからか、ふわぁと大きなあくびをひとつ。カイルが「す少し休んでください」と声を掛けてきたので、そうする、とばかりに首を縦に動かした。お茶を全部飲み切ってから、ベッドへ移動する。

 ベッドに潜り込んで目を閉じると、カイルがそっと手を握ってきた。ふわふわとした気持ちで彼の魔力を受け取る。

「……あったかい……」

 ぽつりと呟き、目を閉じるとあっという間に眠りに落ちた。

◆◆◆

 ――そして気付くと翌朝だった。

「おはようございます、エリスさま」
「……おはよう。もしかして、ずっと手を繋いだままだった?」

 カイルは微笑んだ。肯定だ。

 まだ陽が高いうちにベッドに入って気付いたら翌朝って、オレは一体何時間睡眠をしたんだ……? いや、知らないほうが良いかも。

「カイル、眠れなかったんじゃ?」
「そんなことはありませんよ」

 本当かなぁと疑いつつ、彼の顔をじっくり眺める。顔色はいいけど。そしてふと自分の身体が楽になっていることに気付いた。不足している魔力をカイルで補充できたから?

「あれ、いつの間にか着替えてる」
「普段着では寝づらそうでしたので……」

 カイルが着替えさせてくれたらしい。全然気付かなかった。大丈夫か、オレ。

「エリス坊ちゃん、起きていますか?」

 扉をノックする音と、ポーラの声。

「起きてるよー」

 扉に向かって声を掛けると、ポーラが洗顔用の水を持って来てくれたようだ。

「おはようございます、エリス坊ちゃん。ぐっすり眠れたようですね。カイルも、おはよう」
「おはよう、ポーラ。うん、気が付いたら朝だったよ」
「おはようございます。それでは、私は自室に一度戻りますね」

 ポーラとバトンタッチするようだ。カイルは繋いでいた手を離し、オレに一礼してから部屋から出て行く。

「カイルったら、ずっとエリスさまの部屋にいたのですね」
「え?」
「食事も摂らないで……」
「え、そうなの?」

 お腹空いただろうに。カイルが一晩中オレの手を握っていてくれたから、身体は楽になったけど、それでカイルの体調が崩れたら大変だ。
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