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2章:いろんな人の、いろんな事情。
そして、それから。 ――8
しおりを挟む「――ああ、任せなさい。それでは、子どもたちは王宮へ連れていく。お前たちはどうする?」
お前たちって言うのは、オレ、カイル、リンジー、そしてセシリアのことかな。少し考え、一歩前に出た。
「セシリアの依頼主はルトナーク家です。我々はルトナーク領主に今回のことを報告する義務があります。報告を終えたら、代理人としてエリス・F・ルトナークを王宮へ向かわせます」
「ほう?」
「きちんと子どもたちを、ケアしてもらわなければなりませんから。次期領主のシェリルよりは、エリスのほうが自由なので。構いませんか?」
陛下はこくりと首を縦に動かした。自分から王宮に関わろうとしているが、こればかりは自分の目でしっかりと見ないと安心できない。
それに、王都にいればカーティスに会う頻度も増すんじゃないかと勝手に考えた。彼のこともできれば助けたい。いや、助けたいと思うこと自体、おこがましいとは思うんだけど……ひとりで戦っている子を、放っておけるわけがない。
「へ、陛下! わ、私も王宮に行きます!」
「セシリア、といったか。なぜ、きみも?」
「私が決めたことだから、私が見届ける。……それが理由では、ダメですか……?」
「あ、それでしたらエリスさまの護衛であるカイルも一緒でお願いします。彼をひとりで王宮に行かせるわけにはいかないので」
おっと、セシリアとカイルが立候補した。セシリアは、自分の目でみんなが幸せに暮らしていくのを見たいのだろう。
カイルは……オレがぶっ倒れやすいから、かな? 陛下は「ふうむ」と考えるようにオレらを見て、すくっと立ち上がりくるりと後ろを向き「おーい」と人を呼ぶ。陛下の声に気付いた騎士? が近付いてきた。
「どうしました、陛下」
「あー、ルトナーク家に使いを出してくれ。エリスとカイルをこっちで預かるって」
「かしこまりました」
騎士はぺこりと頭を下げて、早速ルトナーク家に連絡を入れようとしているみたいだ。うわ、これ急いで帰らなきゃ。リンジーに視線を向けると、彼は小さくうなずく。
それから、子どもたちが騎士たちに保護され、王宮へ向かうのを見送った。最後に、陛下がぽんとセシリアの肩に手を置く。
「良く決断してくれた」
「……陛下も、私たちに手を差し伸べてくださり、ありがとうございます……!」
「では、王宮で待っている。なにやらそこの子らは、きみに話があるようだからな?」
ちらっとオレらに視線を送る陛下。そのまま教会をあとにした。
オレらは顔を見合わせて、はぁ~と脱力したようにその場に座り込み、今後のことについて話し合った。
「ルトナークに戻って、準備しないと……」
「怒涛の展開だねぇ」
「ですが、ここの子どもたちは助けられましたね……おそらく」
リンジーはそんなオレらの話を楽しそうに聞いていた。そして、「はい」と魔法紙を渡す。魔法紙? とりあえず受け取ると、「ルトナーク行きだよ」と微笑んだ。
転移の魔法紙か。ありがたく使わせてもらおう。立ち上がり、父さんたちに報告することを伝えるとそれを破る。カイルにも魔法紙を渡しているようだから、きっと彼もすぐに来るだろう。
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