159 / 184
2章:いろんな人の、いろんな事情。
そして、それから。 ――8
しおりを挟む「――ああ、任せなさい。それでは、子どもたちは王宮へ連れていく。お前たちはどうする?」
お前たちって言うのは、オレ、カイル、リンジー、そしてセシリアのことかな。少し考え、一歩前に出た。
「セシリアの依頼主はルトナーク家です。我々はルトナーク領主に今回のことを報告する義務があります。報告を終えたら、代理人としてエリス・F・ルトナークを王宮へ向かわせます」
「ほう?」
「きちんと子どもたちを、ケアしてもらわなければなりませんから。次期領主のシェリルよりは、エリスのほうが自由なので。構いませんか?」
陛下はこくりと首を縦に動かした。自分から王宮に関わろうとしているが、こればかりは自分の目でしっかりと見ないと安心できない。
それに、王都にいればカーティスに会う頻度も増すんじゃないかと勝手に考えた。彼のこともできれば助けたい。いや、助けたいと思うこと自体、おこがましいとは思うんだけど……ひとりで戦っている子を、放っておけるわけがない。
「へ、陛下! わ、私も王宮に行きます!」
「セシリア、といったか。なぜ、きみも?」
「私が決めたことだから、私が見届ける。……それが理由では、ダメですか……?」
「あ、それでしたらエリスさまの護衛であるカイルも一緒でお願いします。彼をひとりで王宮に行かせるわけにはいかないので」
おっと、セシリアとカイルが立候補した。セシリアは、自分の目でみんなが幸せに暮らしていくのを見たいのだろう。
カイルは……オレがぶっ倒れやすいから、かな? 陛下は「ふうむ」と考えるようにオレらを見て、すくっと立ち上がりくるりと後ろを向き「おーい」と人を呼ぶ。陛下の声に気付いた騎士? が近付いてきた。
「どうしました、陛下」
「あー、ルトナーク家に使いを出してくれ。エリスとカイルをこっちで預かるって」
「かしこまりました」
騎士はぺこりと頭を下げて、早速ルトナーク家に連絡を入れようとしているみたいだ。うわ、これ急いで帰らなきゃ。リンジーに視線を向けると、彼は小さくうなずく。
それから、子どもたちが騎士たちに保護され、王宮へ向かうのを見送った。最後に、陛下がぽんとセシリアの肩に手を置く。
「良く決断してくれた」
「……陛下も、私たちに手を差し伸べてくださり、ありがとうございます……!」
「では、王宮で待っている。なにやらそこの子らは、きみに話があるようだからな?」
ちらっとオレらに視線を送る陛下。そのまま教会をあとにした。
オレらは顔を見合わせて、はぁ~と脱力したようにその場に座り込み、今後のことについて話し合った。
「ルトナークに戻って、準備しないと……」
「怒涛の展開だねぇ」
「ですが、ここの子どもたちは助けられましたね……おそらく」
リンジーはそんなオレらの話を楽しそうに聞いていた。そして、「はい」と魔法紙を渡す。魔法紙? とりあえず受け取ると、「ルトナーク行きだよ」と微笑んだ。
転移の魔法紙か。ありがたく使わせてもらおう。立ち上がり、父さんたちに報告することを伝えるとそれを破る。カイルにも魔法紙を渡しているようだから、きっと彼もすぐに来るだろう。
0
お気に入りに追加
427
あなたにおすすめの小説
名前のない脇役で異世界召喚~頼む、脇役の僕を巻き込まないでくれ~
沖田さくら
BL
仕事帰り、ラノベでよく見る異世界召喚に遭遇。
巻き込まれない様、召喚される予定?らしき青年とそんな青年の救出を試みる高校生を傍観していた八乙女昌斗だが。
予想だにしない事態が起きてしまう
巻き込まれ召喚に巻き込まれ、ラノベでも登場しないポジションで異世界転移。
”召喚された美青年リーマン”
”人助けをしようとして召喚に巻き込まれた高校生”
じゃあ、何もせず巻き込まれた僕は”なに”?
名前のない脇役にも居場所はあるのか。
捻くれ主人公が異世界転移をきっかけに様々な”経験”と”感情”を知っていく物語。
「頼むから脇役の僕を巻き込まないでくれ!」
ーーーーーー・ーーーーーー
小説家になろう!でも更新中!
早めにお話を読みたい方は、是非其方に見に来て下さい!
クズ王子、弟にざまあされる
相沢京
BL
「貴様を追放するっ!」
弟である第三王子の祝いの会でそう叫んだのは第一王子でクズ王子と言われているダグラスだった。
「え、誰を・・?」
「決まっておろう。カイン、貴様だっ!」
断罪から始まった事件が、この後、思いもよらない陰謀へと発展していく。
*****************************
BL要素が少なめですが、楽しんで頂ければ嬉しいです。
誤字脱字の報告、ありがとうございます。
短編のつもりですが、今後もしかしたら長編となるかもしれません。
【完結】だから俺は主人公じゃない!
美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。
しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!?
でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。
そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。
主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱!
だから、…俺は主人公じゃないんだってば!
異世界に召喚され生活してるのだが、仕事のたびに元カレと会うのツラい
だいず
BL
平凡な生活を送っていた主人公、宇久田冬晴は、ある日異世界に召喚される。「転移者」となった冬晴の仕事は、魔女の予言を授かることだった。慣れない生活に戸惑う冬晴だったが、そんな冬晴を支える人物が現れる。グレンノルト・シルヴェスター、国の騎士団で団長を務める彼は、何も知らない冬晴に、世界のこと、国のこと、様々なことを教えてくれた。そんなグレンノルトに冬晴は次第に惹かれていき___
1度は愛し合った2人が過去のしがらみを断ち切り、再び結ばれるまでの話。
※設定上2人が仲良くなるまで時間がかかります…でもちゃんとハッピーエンドです!
逆ざまぁされ要員な僕でもいつか平穏に暮らせますか?
左側
BL
陽の光を浴びて桃色に輝く柔らかな髪。鮮やかな青色の瞳で、ちょっと童顔。
それが僕。
この世界が乙女ゲームやBLゲームだったら、きっと主人公だよね。
だけど、ここは……ざまぁ系のノベルゲーム世界。それも、逆ざまぁ。
僕は断罪される側だ。
まるで物語の主人公のように振る舞って、王子を始めとした大勢の男性をたぶらかして好き放題した挙句に、最後は大逆転される……いわゆる、逆ざまぁをされる側。
途中の役割や展開は違っても、最終的に僕が立つサイドはいつも同じ。
神様、どうやったら、僕は平穏に過ごせますか?
※ ※ ※ ※ ※ ※
ちょっと不憫系の主人公が、抵抗したり挫けたりを繰り返しながら、いつかは平穏に暮らせることを目指す物語です。
男性妊娠の描写があります。
誤字脱字等があればお知らせください。
必要なタグがあれば付け足して行きます。
総文字数が多くなったので短編→長編に変更しました。
婚約者の恋
うりぼう
BL
親が決めた婚約者に突然婚約を破棄したいと言われた。
そんな時、俺は「前世」の記憶を取り戻した!
婚約破棄?
どうぞどうぞ
それよりも魔法と剣の世界を楽しみたい!
……のになんで王子はしつこく追いかけてくるんですかね?
そんな主人公のお話。
※異世界転生
※エセファンタジー
※なんちゃって王室
※なんちゃって魔法
※婚約破棄
※婚約解消を解消
※みんなちょろい
※普通に日本食出てきます
※とんでも展開
※細かいツッコミはなしでお願いします
※勇者の料理番とほんの少しだけリンクしてます
スキルも魔力もないけど異世界転移しました
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
なんとかなれ!!!!!!!!!
入社四日目の新卒である菅原悠斗は通勤途中、車に轢かれそうになる。
死を覚悟したその次の瞬間、目の前には草原が広がっていた。これが俗に言う異世界転移なのだ——そう悟った悠斗は絶望を感じながらも、これから待ち受けるチートやハーレムを期待に掲げ、近くの村へと辿り着く。
そこで知らされたのは、彼には魔力はおろかスキルも全く無い──物語の主人公には程遠い存在ということだった。
「異世界転生……いや、転移って言うんですっけ。よくあるチーレムってやつにはならなかったけど、良い友だちが沢山できたからほんっと恵まれてるんですよ、俺!」
「友人のわりに全員お前に向けてる目おかしくないか?」
チートは無いけどなんやかんや人柄とかで、知り合った異世界人からいい感じに重めの友情とか愛を向けられる主人公の話が書けたらと思っています。冒険よりは、心を繋いでいく話が書きたいです。
「何って……友だちになりたいだけだが?」な受けが好きです。
6/30 一度完結しました。続きが書け次第、番外編として更新していけたらと思います。
転生したからチートしようと思ったら王子の婚約者になったんだけど
suzu
BL
主人公のセレステは6歳の時に、魔力および属性を調べるために行う儀式に参加していた王子の姿を見て、前世の記憶を思い出す。
そしてせっかくならチートしたい!という軽い気持ちで魔法の本を読み、見よう見まねで精霊を召喚したらまさかの精霊王が全員出てきてしまった…。
そんなにところに偶然居合わせしまった王子のライアン。
そこから仲良くなったと思ったら突然セレステを口説き始めるライアン?!
王子×公爵令息
一応R18あるかも
※設定読まないとわからなくなります(追加設定多々)
※ショタ×ショタから始まるので地雷の方は読まないでください。
※背後注意
※修正したくなったらひっそりとやっています
※主人公よく寝ます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる