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2章:いろんな人の、いろんな事情。
そして、それから。 ――7
しおりを挟む陛下は顎に指を掛けて、「ほう?」と呟いた。面白そうにオレを見るのやめてもらっていいですかねぇ。部下の人たちも顔を見合わせてなにかを言っているように見えた。
「……ね、みんなはどうしたい? ここ離れて、王宮で暮らしてみる?」
セシリアが子どもたちに問う。みんな、不安そうに眉を下げてセシリアと陛下を交互に見ていた。陛下が子どもたちに近付くと、大人が怖いのか、身体を強張らせる子もいた。
陛下が片膝をつき、子どもたちの顔を見渡して頭を下げたことで、みんな驚いたように息を呑み、陛下をじっと見つめた。
「我が国民を守れなかったことを、ここに詫びよう。そして、王宮に来てくれたら、生活に困ることがないように精いっぱい生きる術を教えることを約束する。……どうか、我らと一緒に来てくれないか?」
陛下が、詫びた……?
えええ、王さまが謝る場面なんて、なんてレアなところを見てしまったんだ……! ここにいる全員驚いているようだ。そりゃ驚くわ。あ、リンジーだけは動じてなかった。
「陛下、ひとつお聞きしてもよろしいですか?」
「ん? なんだい?」
「この教会兼孤児院のこと、誰に聞いたのでしょうか?」
「……それは秘密だ。協力者から、と言っておこう」
一体協力者って誰なんだろう。ぱっと思い浮かんだのはアランだった。元気に暮らしているかな。子どもたちは困ったようにセシリアを見ていた。とりあえず、子どもたちだけでここに残るよりは、王宮で面倒を見てもらえるのなら、そっちのほうが良いとは思う。
教会で暮らしていくには、まだ幼い子たちも多いから。
王宮で仕事を教えてもらいながら暮らせば、陛下の言うようにひとりで生き抜く術を身に付けることができるだろう。
「セシリア、あなたが決めてくれる? 私たちは、あなたの言葉に従うわ」
「え、わ、私? 私が決めて良いの?」
「そうだな、セシリアが決めるのなら……」
昨日、鞭で打たれそうになっていた少女がそう言うと、周りの子どもたちも同意した。彼女はオレを見たので、こくりとうなずく。
救いを求めたのはセシリアだ。彼女に決定権があるだろう。
「……あの、王宮は安全ですか?」
不安げに陛下に尋ねる。陛下は「もちろんだ」と力強くうなずいた。セシリアは目を伏せてゆっくりと深呼吸をしてから、顔を上げて真剣な表情を陛下に向け、スカートの裾を掴んで頭を下げた。
「――この子たちを、お願いします」
彼女の言葉は硬かった。不安と期待が入り混じっているのだろう。
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