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2章:いろんな人の、いろんな事情。

そして、それから。 ――2

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「で、教会の代わりに孤児院を建てよう。俺に出来るのは、この子たちが安全に暮らせるところを提供すること。……そうだろう?」
「それだけでは足りません。子どもたちが受けた心の傷を癒さないと。トラウマになっている子たちもいるでしょうし。それに、場所を提供するだけでは根本的な解決にはなりません。陛下が慈善活動をするというのなら、力を貸してくれる貴族も多いのでは?」
「はは、なかなかいい度胸だ。気に入ったぞ」

 ちょっと図々しいかなーとは思ったけど、国が管理してくれるならそっちのほうが良いと思う。オレらで解決できることではないし……。ただ、どこまで信用して良いものか。じーっと陛下を見ていると、セシリアが近寄ってきた。

「服と毛布を買って来てくれたんだね、ありがとう。早速着替えさせてくるね!」
「あ、ああ。サイズ、合わなかったらごめんな」

 セシリアに抱きしめていた毛布を渡す。カイルに視線を移すと、彼は小さくうなずいて彼女について行った。

 ボロボロな服を着ている子どもたちに新しい服を渡し、年齢が一桁っぽい子たちには毛布を広げて一緒に包み込む。その仕草がもう本当……愛しい子たちに向けて優しく笑うおばあちゃんのように見えた。

「だが、どうしてこんな無茶をした?」
「セシリアの頼みだったので」
「人のために、危険をかえりみず?」
「セシリアは……彼女は大切な友人ですので。頼みを聞いてあげたいんです。それに、子どもたちが酷い目にあっていると聞いて、助けたいと思いました」

 陛下は「ほう?」と感心しているのか、呆れているのかわからないトーンで呟く。そして、こちらをじぃっと見つめて「……とんだ善人だな」と肩をすくめた。

「……なにか誤解されているようですが……」

 悪人ではないけれど、善人ってわけでもない。ただ、助けられるなら助けたいと思っただけ。

 ルトナーク家を巻き込んで。それでも、父さんたちは背中を押してくれた。ありがたいことにね。

「やりたいようにやった結果が、コレです」
「……そうか。その勇敢さは褒めるべきだろうか?」
「いいえ。褒められることではないでしょう。一歩間違えれば自身も、セシリアたちも危険な行動でしたから」

 そう、決して褒められる行為ではない。本来なら、大人たちを頼って行うべきことだっただろう。

 ……それでも、セシリアのためにオレ自身が動きたかったからだ。

「だが、あの子たちはお前の行動で救われただろう。……こういうのも変な話だが、俺の国民を守ってくれてありがとう、小さな聖女よ」

 …………女装していたな、そういえば。エリスだと気付かれてはいないみたいで安心したけれど、小さな聖女って……! 陛下、もしかして可愛いところがありますか?

「これからは、陛下たちが守ってくださいね」

 笑うのを耐えて、そう言うのが精いっぱいだった。
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