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2章:いろんな人の、いろんな事情。
作戦を決行しよう ――4
しおりを挟むセシリアはオレを見て、「えへへ」と眉を下げて微笑んだ。あ、でも沙織は老衰で亡くなったんだっけ。それなら、こういう子ども扱いはしないほうが良いのかな。そう思って手を頭から離すと残念そうに視線をオレの手に移動させた。
「さて、これからどうするんだい?」
「いろいろ考えたけど、どっかの貴族が教会に寄付するために寄るって感じが一番すんなり中に入れるかなぁと思うんだけど」
神さまに祈るためだけなら、案内されるのは礼拝堂だろうし。オレらが求めるのはもっと教会の内部に入り込むことだ。
だが、リンジーはオレの考えを一蹴した。短時間決行のほうが良いだろうと。
「え、でも……」
「調べたところ、被害者は多数いるよ。男女共にね」
男女共に……! セシリアは目を伏せてしまった。彼女の言っていたことは本当だったのだ。きっと、ずっと救いたくても救えずにいてつらかっただろう。
この世界の成人は十六歳。十六歳なんて、まだまだ子どもじゃないか。くっそ、いい大人が子ども相手になにをしているんだ……!
「では、忍び込むのですか?」
「光属性使える者がふたりもいるんだ。使わない手はないだろう?」
「ですが、エリスさまは……」
魔法を使うと倒れるんじゃないかって? 実は同じことを考えていた。もしも使っている途中で倒れたら……と。
オレの不安を勘付いているのかいないのか、リンジーは魔法紙をオレに渡す。あの短時間でこんなに書いたのか、と感心してしまうほどだ。
「一応、この部屋に戻るように設定してある。万が一のときは使うと良いよ」
「ありがとう。っていうか、なんでこんなにいっぱい……?」
「転移の魔法紙と、あとは各属性の攻撃魔法だ。きみたちを害する相手がいれば、遠慮なく使いたまえ。躊躇する必要はないからね」
一体どんな攻撃魔法があるのか、ちょっと見てみたい。けど、威力がどんなもんかわからないから、本当に緊急時に使うことにしよう。
「エリスくん……いや、エリィくんの魔力はこれでなんとかなるだろう。それと、カイルにも多めに渡しておくから、危なくなったら使いなさい」
「……わかりました、ありがとうございます」
リンジーってこういうときは年上に見えるなぁ。百歳超えているのは確実だろうけど、本当に何歳なんだろう。セシリアにはなにも渡さなかった。
彼女は首を傾げていたけど、リンジーは「彼女はボクと行動を共にするからね」と淡々と説明した。要するに、自分が守るってことなのかな?
とりあえず、セシリアとリンジーは表から、オレとカイルは裏から教会に入ることになった。忍び込むともいう。
「セシリアのことを、頼んで良いんだな?」
「ああ、もちろん。ボクにとって、彼女は庇護対象だからね」
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