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2章:いろんな人の、いろんな事情。

今後の話し合い ――8

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「とりあえず、王都に行けたら良いのかい?」
「そうなるのかな? ここからだと王都って遠いよね」
「ええ、まあ。転移の魔法が使えれば、一瞬ですけど……」

 確かに一瞬だったなぁ。使えたら便利そうな魔法だよな、転移。オレも覚えられないものか。

 リンジーがローブの内ポケットからなにかを取り出した。紙? と筆? 彼はさらさらと紙になにかを書いていく。文字なのか絵なのか、さっぱりわからなかった。

 ただ、カイルはそれを見て「うわぁ」と変な顔をした。一体どんな効果のある紙を作ったんだろうか。

「魔法紙の完成っと。これは転移の魔法紙さ」
「はい?」

 魔法紙ってなんだ? っていうかそんなにさらっと作れるもんなの!? 思わずカイルとシェリーを見る。シェリーは目をパチパチとまたたかせ、カイルは重々しくため息を吐いた。

「それってそんなに簡単にできるものなの……?」
「あれ一枚で小さな家が買えるくらいの価値ですよ……」

 それをさらりと作れるとか、リンジーは本当に何者なんだ。ハーフエルフなのは知っているけれど。

「……あるじくんも連れていくのかい?」
「できれば連れていきたくないな。セシリアは連れていくけど」

 シェリルはオレやセシリアと違い、正真正銘の十二歳だ。そんな子をこういういざこざに巻き込むのは躊躇ためらうし。カイルたちは良いのか、と聞かれると答えに詰まるけど、彼らの強さは訓練を見ていたからわかる。

「ふむ。……ならば、ボクも行こう。念のためシェリーはあるじくんについてもらい、カイルはボクたちと教会へ」

 年長者であるリンジーがそう予定を立てていると、扉をノックする音が聞こえた。

「みんな、ここにいる?」

 シェリルの声だ。誰かが答える前に扉が開き、彼女たちが入ってきた。晴れ晴れした顔を見るに、父さんたちからの協力は得られたみたいだ。

「お父さまからひとつ、忠告されたわ。――やるのなら徹底的に、だそうよ」

 危険なことに首を突っ込むなって言われるかと思ったけど、ルトナーク家の教育方針は割と緩いんだろうか。意外そうにシェリルを見ると、彼女は上機嫌そうに笑っていた。セシリアも、協力者を得て嬉しそうだ。

「……さて、それじゃあボクが最初に乗り込もうかな。ちょっと探ってくるよ。そういうのは得意中の得意だからね!」
「え、もう?」
「探るだけさ。なにかわかったらすぐに戻ってくるよ。主くん、構わないだろう?」
「ええ。お願いね、リンジー」
「あ、あの! お気をつけてくださいね」

 セシリアがリンジーをじっと見つめて言葉を掛けると、彼は「もちろんだとも」と微笑み、魔法を発動させた。……リンジーが得意なのは風属性のはずなのに、なんで転移魔法がつかえるんだろうか?

 そもそも転移魔法なのかな、さっき発動させた魔法。
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