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2章:いろんな人の、いろんな事情。

今後の話し合い ――5

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「……がんばったのね」

 そっと、シェリルがセシリアの頭を撫でた。

「シェリルちゃん優しいなぁ」

 指でにじんだ涙を拭い、眉を下げてシェリルを見つめるセシリア。シェリルは目を丸くして、それから「ま、まあねっ?」となぜか語尾を上げた。

「そんなわけで、前世の記憶を持っているから、攻略対象と恋愛する気にはならないんだよね」
「それだけ幸せな人生だったんだな」
「うん! もしも、もしもあの人が生まれ変わってこの世界にいるのなら、もう一度彼と結婚したいと思うくらいには愛していたから」

 心の奥底から愛していたのだろう。沙織サオリを愛してくれた人に、感謝の気持ちでいっぱいになった。――それに、セシリアは、前世でつらかったことを一度も口にしなかった。

 もしかしたら、オレらに気遣ってくれたのかもしれない。でも、彼女の人生がどれだけ幸せだったのかを聞いて、安心することができた。一番、気がかりだったから。

「そっか」
「それに、その……、私の感覚がちょっとおばあちゃんっぽいところもあるから、今の自分と同じくらいの子を見ても、可愛いなぁとか甘やかしてあげたいなぁとかしか思わなくてね……」

 おばあちゃんっぽいって、自分でも思っていたのか。孤児院の子どもたちにとって、きっとセシリアの存在は癒しだったろう、たぶん。

 そんな彼女を連れてきちゃって良かったんだろうか? あのちょっと高圧的なシスターの顔を思い出して、ゆっくりと息を吐く。

「だからこそ! 私は教会の子たちを助けたいの! 力を貸して、お兄ちゃん!!」
「うん?」

 一気に話が違う方向に流れたぞ。セシリアを見ると、メラメラと瞳に炎を灯している。どういうことだ? とシェリルを見ると、彼女はなにかを考えているのか、口元に手を当てた。

「あなた、あのときシスターに怯えていたように見えたわ。どうして怯えていたのか、教えてくださる?」

 ビクッと大きくセシリアの肩が跳ねた。ぎゅっとオレの服を掴んできたので、安心させるように頭を撫でる。

 セシリアはぐっと唇を噛み締めてから、オレの傍から離れた。そして、さっきまで座っていた席に戻り、椅子に座った。シェリルも同じように座るのを見届けると、口を開く。

「シスター機嫌を損ねると、大変なことになるの。叩かれたり蹴られたり、ご飯を抜かれたり」
「……っ!?」

 カーティスといい、セシリアといい、まだ幼い子どもたちに、大人がなにをしているんだ……!

「他にも、なにかあるの?」

 一気に目の前が真っ赤になったオレとは違い、シェリルは冷静だ。
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