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2章:いろんな人の、いろんな事情。

対応策 ――1

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 どのくらい、意識を失っていたのだろうか。気付けば自分の部屋のベッドの上にいた。オレ、お祭りの会場で意識を失ったんだよな? いつの間に王都から領地に帰ってきたんだろう?

「エリス坊ちゃん! 体調は大丈夫ですか!?」

 ポーラが顔を覗き込んできた。猫耳をぺたんと伏せているのを見て、ああまた心配をかけてしまった、と申し訳なくなった。今にも泣きだしそうな顔をしているポーラに、「大丈夫だよ」と微笑む。彼女は「旦那さまたちに知らせてきます!」とパタパタ足音を立てて出て行った。

「……なんなんだ、いったい……」

 ゆっくりと身体を起こす。頭痛は嘘のように消えていた。あれだけ痛かったのに。手をぐーぱーと動かしてみた。きちんと動く。本当、なんだったんだ、あの痛み。

 バタバタと数人の駆ける足音が聞こえて、扉が勢いよく開いた。

「エリス、大丈夫か!?」
「いきなり意識を失って驚いたのよ……!」

 父さんと母さんがオレの傍まで駆け寄り、体調を確認するかのようにぺたぺたと額を触る。

「心配かけてごめんなさい」

 頭を下げると、父さんがくしゃりとオレの頭を撫でた。そして、オレが気を失ったあとのことを話してくれた。

 カイルがオレを背負い、みんなで教会に向かったらしい。そこで一応休ませてもらったけど、全然起きる気配がなかったから、ルトナーク家に戻ってきたらしい。セシリアも一緒に。

 どうやら話はちゃんとまとまったみたいだ。でも、セシリアの表情は暗く、ポータと同じように泣きそうな顔をしていた。

「医者に診てもらったが、原因がわからないと言われてね……」
「……そうなんですね」

 なにが原因なのか、思い当たることはないんだけどなぁ。

「とにかく、ゆっくりと休むこと。いいね、エリス」
「うん」

 ほら、エリスを休ませないと、と父さんは集まってくれたみんなを部屋の外に連れ出した。シェリルが「あとでね」と口パクで伝えてきたから、軽く手を振った。

 パタン、と扉が閉まる音が耳に届く。小さく息を吐き、ベッドに寝転ぶ。身体が弱いとか、体力がないとか、そういう感じの頭痛じゃないよな、これ。

 原因なんだろうと考えていると、扉がノックされた。「はい?」と返事をすると、カイルとリンジーが姿を見せた。部屋に入ると、リンジーは後ろ手で扉を閉め、鍵をかける。近くに来ると、すいすいと宙に指を滑らせる。なにかを書いているようだ。

「盗み聞き防止の魔法さ。今から、ボクはきみにとって聞かれたくないことを口にするからね」
「……は?」

 リンジーがなにを言っているのかわからない。とりあえず再び起き上がり、彼を見る。

 リンジーはじーっとなにかを確かめるようにオレを見て、それから肩をすくめた。な、なんなんだ……? 彼は視線を外すと椅子を持って来るとそこに座り、カイルは立ったままだ。

「カイルを連れて来たのは、彼の協力も必要だからさ」
「協力?」
「その、私もリンジー卿に連れて来られたので……」

 どんな内容の話をするのか、カイルも知らないみたいだ。リンジーはオレとカイルを交互に見てから、口を開く。
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