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2章:いろんな人の、いろんな事情。

まさかの再会 ――2

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「あの、この絵はいくらですか?」
「お、お、お買い上げですか!? 絵を!?」
「あ、売り物ではありませんか?」
「い、いいえっ! しょ、少々お待ち、ください!」

 慌てたように教会に向かうシスター。なにをそんなに慌てているんだ? と首を傾げていると、子どもがオレに話しかけてきた。

「にいちゃんはその絵、気に入ったの?」
「え? あ、うん。いい絵だなって思うよ」
「ふーん。本当にいたんだ。この絵を見て気付いてくれる人がいるって言っていたんだよ」
「……? 『気付いてくれる人がいる』?」

 言っている意味がわからなくて、そのことを聞こうと口を開くと、だだだだだっと勢いよくこっちに走ってくる人の姿が見えた。な、何事だ!? 思わず身構えると、その子が勢いのまま抱き着いてきた。あまりの勢いに驚いてそのまま尻もちをついてしまった。

 勢いが良すぎたからか、悪意を感じなかったからか、カイルの反応が遅れたみたいだ。ぎゅうっと抱き着いて来ている子をカイルが引き剥がそうとしたけど、その子が震えているのを見て、彼を止めた。

 そして、『咲耶サクヤ』だった頃に、沙織サオリをこんな風に慰めていたな、とその子の後頭部を優しく撫でる。

「やっと、やっと会えた……! 咲耶お兄ちゃん……!」

 ぐすぐすと泣きながらそう言う子に、目を大きく見開いた。

「――沙織……?」

 オレが震える声で名前を告げると、その子は身体を離して立ち上がり、くしゃっと今にも大泣きしそうな表情を浮かべながらも手を差し出してきた。

「ずっと、待っていたんだよ。咲耶お兄ちゃん!」

 その手を取って立ち上がり、マジマジと彼女を見た。ふわふわのピンク色の髪は肩まで伸びていて、緩くウェーブが掛かっている。エメラルドグリーンのような瞳はしっかりとオレを映していて、「え、マジで?」と思わず呟いた。

「な、何事だったのよ、エリス?」
「うわぁ、本物のシェリルちゃんだぁ!」
「え? え? ええ?」
「カーティスくん、ちっちゃい!」
「喧嘩売ってんのか!?」

 きゃあきゃあとはしゃぐ、沙織。オレ、夢でも見ているのかな? なんだかあまりにも現実味がなくて、ぎゅっと頬をつねってみる。ちゃんと痛い。そして、ボロボロと大きな涙の粒を流している姿を見て、急いでハンカチを取り出して彼女の涙を拭う。

「本当に、沙織、なのか? オレ、お前のことを守れなかった?」
「違うよ。ちゃんと老衰で死んだよ、私。お兄ちゃんが助けてくれた命だもん。大切に大切に生きて、ひ孫までいたんだよ。みんなに看取られながら逝ったの。そしたらね、神さまが『お兄ちゃんに会いたい?』って言ってね、会いたいって答えたの。だから、私、この世界に生まれたんだよ」
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