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2章:いろんな人の、いろんな事情。

まさかの再会 ――1

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 邪魔にならないように一列になり、人の目から隠れるように奥へ向かう。ふと、教会が視界に入ったので、そっちに行ってみようと提案すると、みんな同意してくれた。お祭り会場の真ん中よりは人が少なそうだ。

 なんとか混雑している場所を抜け出して、教会に歩いていく。

 教会ではバザーをやっているみたいで、どんなものを置いているんだろうと近付こうとすると、カーティスに止められた。

「やめておけ、あれは孤児たちが作ったものだ」
「孤児? 教会じゃないの、あそこ」
「教会が運営している孤児院だ」

 教会が孤児院を運営している? この世界の孤児院の仕組みってどんな感じだっけ? 貴族もお金を出していたはず。教会を見上げてから声を張り上げて宣言している子どもたちに視線を移す。周りの人たちは我関せずとばかりにスルーしていた。

「……なんであんなにボロボロな服を着ているんだ? 孤児院は貴族の支援があるはずだよな?」
「王都のやり方については、わかりません……」
「カーティスはどう思う?」
「なんで俺に聞く?」
「え、だってカーティス、頭良さそうだから……?」

 なんせ学園で首席という未来が待っているし。だから相当頭が良いんだろうなぁと、カーティスをじーっと見ると、彼は「はぁ」と大きなため息を吐き、視線から逃れるように子どもたちに視線を向ける。

「人数が多すぎるか、支援金がないか、横領されているか……もしくは」
「もしくは?」
「同情を集めるために、あえてああいう格好をさせている。見た目に騙されて金を落す連中もいるからな」
「うーん、孤児院って大変なんだなぁ……横領は犯罪だよな。ま、とりあえずどんなのあるか見てくる!」
「あ、おい!」

 カイル、と名を呼ぶと、彼は仕方ないなぁとばかりに眉を下げて付いて来てくれた。子どもたちが作ったものがずらーっと並んでいる。おー、いろいろあるなぁ。シスター服を着た女性が、オレらに気付いてびっくりしたように目を丸くした。

「い、いら、いらっしゃ、い、ませ……!?」

 驚き過ぎじゃないだろうか。子どもたちはそんなシスターを真似して、「いらっしゃいませー!」とユニゾンで元気よく言葉を発する。

 並べられていたものは、刺繍の施されたハンカチ、粘土で作られた可愛らしい置物、子どもらしい絵。――そんな中、一枚の絵画に目を奪われる。だって、それは『沙織サオリ』が描いていたような絵だったから。

 オレには絵の才能がなかったから、変な絵しか描けなかったけど、沙織は違う。

 彼女には絵の才能があったと思う。沙織のえがく風景画にはこんな風に胸が熱くなったのを覚えている。
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