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2章:いろんな人の、いろんな事情。
お祭り ――5
しおりを挟む「ねえ、シェリー。あなたのブレスレットの色、あたくしが決めても良い?」
「構いませんよ! あ、では、シェリルさまのブレスレットの色を、選んでも良いですか?」
「もちろんよ! ね、エリスたちもそうしたら?」
同意を求めるようにこちらを見るシェリルたち。オレとカイルは視線を交わして、「そうだね」と口にする。すると、シェリルは蕾が綻ぶように微笑んだ。
オレら、シェリルに甘いなぁとしみじみ思う。でも、こういう笑顔が見られるのなら、仕方ないとも感じる。
とはいえ、こういうアクセサリーを選ぶのは初めてだからなぁ。無難にシルバー? もしくは紫? カイルの髪か目の色か。どうしようかなぁ。うーん。
隣をちらりと見ると、真剣な表情でブレスレットを選んでいるカイルの姿が。色のバリエーションが豊富だから、悩むわな。
よし、オレも真剣に選ぶとするか。……ただ、なんかカイルって銀や紫のイメージじゃないんだよなぁ。オレの中では。もっと、なんか、こう……内に秘めているものが熱いというか。じゃあ赤? いや、それもなんか違う。うわー、難しい!
「おじさま、これにするわ!」
「では、わたしはこれにします」
即決じゃん! 女性陣はもう決めてしまったらしい。……あ、これはどうかな、温かみを感じるオレンジ色。オレの中のカイルのイメージはこんな感じなんだよなぁ。
「じゃあ、オレはこれで――カイルは?」
「……こちらにします」
「はい、毎度あり。お揃いのブレスレット、かわいいねぇ」
「えへへ」
シェリルが愛らしく笑ってみせた。ああ、微笑ましい。お金を払って(カイルがお金を渡されていたみたい)、露店のおじさんに手を振ってその場から去る。そして、ちょっと人気のない場所で休憩。
「それにしてもすごい人だな!」
「本当、油断するとはぐれちゃいそう! でも、カイルの魔法があるから大丈夫よね!」
「魔法頼りなのは良いのか悪いのか……」
シェリルと話していると、カイルとシェリーがその会話を聞きながらニコニコしていた。そして、紙袋に入れてくれたブレスレットを取り出すと、シェリルは「手を出してちょうだい」とシェリーを見つめる。シェリーは左手を差し出した。
「あたくしが選んだのはこれよ。あたくしの目と同じ目の色。シェリーはあたくしの護衛だってわかりやすいでしょ?」
すっと青色のブレスレットをシェリーの右手にはめる。……なんかの儀式を見ているような気分になった。シェリーは右手を胸に当て、恭しく頭を下げる。
「どこまでもお供いたします、我が主」
騎士っぽい……! そして、今度はシェリーがブレスレットをシェリルの左手にそっとはめた。少し震えていたのは緊張していたからかな。
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