上 下
125 / 184
2章:いろんな人の、いろんな事情。

お祭り ――5

しおりを挟む

「ねえ、シェリー。あなたのブレスレットの色、あたくしが決めても良い?」
「構いませんよ! あ、では、シェリルさまのブレスレットの色を、選んでも良いですか?」
「もちろんよ! ね、エリスたちもそうしたら?」

 同意を求めるようにこちらを見るシェリルたち。オレとカイルは視線を交わして、「そうだね」と口にする。すると、シェリルは蕾が綻ぶように微笑んだ。

 オレら、シェリルに甘いなぁとしみじみ思う。でも、こういう笑顔が見られるのなら、仕方ないとも感じる。

 とはいえ、こういうアクセサリーを選ぶのは初めてだからなぁ。無難にシルバー? もしくは紫? カイルの髪か目の色か。どうしようかなぁ。うーん。

 隣をちらりと見ると、真剣な表情でブレスレットを選んでいるカイルの姿が。色のバリエーションが豊富だから、悩むわな。

 よし、オレも真剣に選ぶとするか。……ただ、なんかカイルって銀や紫のイメージじゃないんだよなぁ。オレの中では。もっと、なんか、こう……内に秘めているものが熱いというか。じゃあ赤? いや、それもなんか違う。うわー、難しい!

「おじさま、これにするわ!」
「では、わたしはこれにします」

 即決じゃん! 女性陣はもう決めてしまったらしい。……あ、これはどうかな、温かみを感じるオレンジ色。オレの中のカイルのイメージはこんな感じなんだよなぁ。

「じゃあ、オレはこれで――カイルは?」
「……こちらにします」
「はい、毎度あり。お揃いのブレスレット、かわいいねぇ」
「えへへ」

 シェリルが愛らしく笑ってみせた。ああ、微笑ましい。お金を払って(カイルがお金を渡されていたみたい)、露店のおじさんに手を振ってその場から去る。そして、ちょっと人気ひとけのない場所で休憩。

「それにしてもすごい人だな!」
「本当、油断するとはぐれちゃいそう! でも、カイルの魔法があるから大丈夫よね!」
「魔法頼りなのは良いのか悪いのか……」

 シェリルと話していると、カイルとシェリーがその会話を聞きながらニコニコしていた。そして、紙袋に入れてくれたブレスレットを取り出すと、シェリルは「手を出してちょうだい」とシェリーを見つめる。シェリーは左手を差し出した。

「あたくしが選んだのはこれよ。あたくしの目と同じ目の色。シェリーはあたくしの護衛だってわかりやすいでしょ?」

 すっと青色のブレスレットをシェリーの右手にはめる。……なんかの儀式を見ているような気分になった。シェリーは右手を胸に当て、うやうやしく頭を下げる。

「どこまでもお供いたします、我が主」

 騎士っぽい……! そして、今度はシェリーがブレスレットをシェリルの左手にそっとはめた。少し震えていたのは緊張していたからかな。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

名前のない脇役で異世界召喚~頼む、脇役の僕を巻き込まないでくれ~

沖田さくら
BL
仕事帰り、ラノベでよく見る異世界召喚に遭遇。 巻き込まれない様、召喚される予定?らしき青年とそんな青年の救出を試みる高校生を傍観していた八乙女昌斗だが。 予想だにしない事態が起きてしまう 巻き込まれ召喚に巻き込まれ、ラノベでも登場しないポジションで異世界転移。 ”召喚された美青年リーマン”  ”人助けをしようとして召喚に巻き込まれた高校生”  じゃあ、何もせず巻き込まれた僕は”なに”? 名前のない脇役にも居場所はあるのか。 捻くれ主人公が異世界転移をきっかけに様々な”経験”と”感情”を知っていく物語。 「頼むから脇役の僕を巻き込まないでくれ!」 ーーーーーー・ーーーーーー 小説家になろう!でも更新中! 早めにお話を読みたい方は、是非其方に見に来て下さい!

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

目覚めたそこはBLゲームの中だった。

BL
ーーパッパー!! キキーッ! …ドンッ!! 鳴り響くトラックのクラクションと闇夜を一点だけ照らすヘッドライト‥ 身体が曲線を描いて宙に浮く… 全ての景色がスローモーションで… 全身を襲う痛みと共に訪れた闇は変に心地よくて、目を開けたらそこは――‥ 『ぇ゙ッ・・・ ここ、どこ!?』 異世界だった。 否、 腐女子だった姉ちゃんが愛用していた『ファンタジア王国と精霊の愛し子』とかいう… なんとも最悪なことに乙女ゲームは乙女ゲームでも… BLゲームの世界だった。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)

藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!? 手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!

キスから始まる主従契約

毒島らいおん
BL
異世界に召喚された挙げ句に、間違いだったと言われて見捨てられた葵。そんな葵を助けてくれたのは、美貌の公爵ローレルだった。 ローレルの優しげな雰囲気に葵は惹かれる。しかも向こうからキスをしてきて葵は有頂天になるが、それは魔法で主従契約を結ぶためだった。 しかも週に1回キスをしないと死んでしまう、とんでもないもので――。 ◯ それでもなんとか彼に好かれようとがんばる葵と、実は腹黒いうえに秘密を抱えているローレルが、過去やら危機やらを乗り越えて、最後には最高の伴侶なるお話。 (全48話・毎日12時に更新)

【完結】だから俺は主人公じゃない!

美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。 しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!? でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。 そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。 主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱! だから、…俺は主人公じゃないんだってば!

処理中です...