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2章:いろんな人の、いろんな事情。
お祭り ――2
しおりを挟む「飛距離で違うのかな、疲労度」
ぽつりと呟くと、父さんが「そうだよ」と答えてくれた。やっぱりそうなんだ。ちなみにここは王都の中でも一番広い公園――のような場所? なのかな? 魔法陣が描いてあって、帰るときは魔導師に声を掛ければいいみたい。魔導師は交代制なのだろう。きっと。
ルトナーク領と王都ってどのくらい距離なんだろう? ちらりと振り返ると美味しそうに飴を食べている魔導師が、視線に気付いたのかひらひらと手を振っていた。手を振り返して、とりあえず歩く。
「カイル、お願いできるかな?」
「かしこまりました、旦那さま。エリスさま、シェリルさま、お手をよろしいですか?」
父さんがカイルに声を掛ける。カイルは心得たとばかりにうなずき、オレらを交互に見た。オレらは顔を見合わせて首を傾げつつ、カイルに手を出す。カイルはオレらの手にそれぞれ魔力を込めた。ぽんっと音がすると中指に指輪みたいなものが。なんだろう、これ?
カイルは父さんと母さんに向かって「終わりました」と伝え、紙を取り出すとふたりに差し出す。
ふたりともその紙を受け取り、カイルに向かって「ありがとう」と微笑んだ。
「ねえ、カイル。なにをしたの?」
「人数が多いですし、昨日の会場より広いので、はぐれたとき用の魔法です。旦那さま方にもしていますよ。そして、先程渡した紙は、はぐれたときに探すためのものです。迷子になったらその場から動いてはいけませんよ?」
なるほど、異世界版GPSか! ……まぁ、確かにこのたくさんいる人たちの仲から探すのは骨が折れそうだ。ちょっと納得。これはカイルのオリジナルなのかな? 無属性の魔法ってどういうものかさっぱりだ。
「みんな、お腹は空いてないかしら?」
母さんがオレらを見て聞いてきた。そのタイミングでぐぅ、と腹の虫が鳴いた。母さんは「空いているみたいね」と微笑ましそうにオレの頭を撫で、みんなもそれぞれお腹を擦ったりしていたので、空いているのかも?
「それじゃあ、屋台でなにか買って食べましょうね。なにがいいかしら?」
「いい匂いがここまで来てるわね」
「本当に。どんなものがあるんだろう」
ワクワクしながらいい匂いに誘われるまま歩こうとすると、父さんたちがくすくすと笑いながら付いて来てくれた。
ああー、こういう雰囲気大好きだ。懐かしい。総菜パンや菓子パン、クレープ、たこ焼き、お好み焼き、イカ焼き……なかなか世界観がわからなくなる感じがするけれど、こういうところで食べるのってなぜか美味しく感じるんだよなぁ。
祭りの雰囲気にのまれているだけかもしれないけどさ。
「食べたいものはあるかい?」
「いっぱいありすぎて困るくらい!」
「あたくしも! なんだか香ばしくてお腹空いちゃう!」
キャッキャッとはしゃぐオレたち。日本の食べ物! 嬉しい! どれも美味しそうに見えて迷ってしまう。いっぱい買って、ちょっとずつみんなで食べるのも美味しそう。あ、りんご飴まである! その横には小さめのいちご飴も。りんご飴って毎度どうやって食べようか悩むよなぁ。
「あたくし、こういうの食べるの初めてかも……!」
シェリルが目をキラキラと輝かせながら言った。そうなの? って思ったけど、確かにルトナーク家で出てくる料理にこういうのはない。結局たこ焼き、お好み焼き、焼きそばを買ってもらい、みんなで少しずつ食べることにした。
ちゃんと食べられる場所もあるから安心だなぁ。全部ソース味だけど、めちゃくちゃ懐かしい匂いと味! 他にも食べてみたいのがたくさんある。……無限大の胃袋が欲しい……!
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